昭和のプロ野球は午後6時半に始まった。大阪の淀屋橋に勤めていた私は、6時の終業きっかりにタクシーに飛び乗って、試合開始直前に大阪球場に入ったものだ。
そこから試合を見たのだが、昭和の終わりころ、平均試合時間は3時間を切っていた。午後9時半か遅くとも10時には家路につくことができた。

今のプロ野球のペナントレースが午後6時始まりなのは、人々の仕事のスタイルが多様化し、サラリーマンの終業時間をそれほど配慮しなくなったこともあるが、それ以上に試合時間が長くなったことが大きい。NPBの公式戦の試合時間が3時間を超えたのは1995年、以後、どんどん時間が伸びて、2021年は3時間20分に迫っていた。6時始まりでも9時半を超えることが珍しくなくなった。

今年前半は投高打低が極端で平均試合時間は3時間5分まで縮まっていたが、後半になると伸びていき、3時間9分に収まった(試合時間はいずれも9回)。

ポストシーズンに入って試合時間はますます伸びる傾向にある。とりわけ日本シリーズである。

Game-Time


9イニング終了時点での平均試合時間は3時間28分、公式戦よりも19分も長い。投手交代が多く、大試合で攻守に慎重になるためではある。しかし予め長くなることが分かっていながら、第2戦を除いてなぜ試合開始時間が18:30になったのか?

それは中継テレビ局の意向が優先されたからだ。日本シリーズは地上波キー局が中継する。プロ野球は今やオワコンで、普通にやっても視聴率がとれないから、試合開始時間をテレビの前に視聴者が座りやすい時間帯に始めたい。そこで18時半に設定されたのだ。

それだけではない。日本シリーズではCMをしっかり入れるためにイニング間ではCM放映が終わるまで、プレーボールの声はかからない。本塁横に、スタッフが待機してCMの残り時間を審判や選手に伝えている。これは日本シリーズ第7戦。あと30秒の札を掲げている。これが15秒になり、プレーボールがかかる。

TV


選手がグラウンドに出てとっくに試合をする準備ができているのに、CM終了までの数十秒間、待たされているのだ。

これは番組を取り仕切っている広告代理店(恐らく電通)の差配による。スポンサーのCM時間をしっかり確保することが、試合をよりも優先されているのだ。

国際試合はほとんどが電通が取り仕切っているが、テレビ中継がある際には、必ずこういう措置がとられる。WBC関連の試合もすべてそうだ。

電通が放送からスポンサー獲得までを全て取り仕切っているから、そうせざるを得ないのだ。

地上波テレビの試合中継は、作る側が「野球なんて面白くない」と思っているから、芸能人を出演させたり、どうでもよいエピソードを混ぜたりしてますます試合を面白くなくしている。
BS、CSなど専門のチャンネルに比べても「放送の質の低下」は深刻だが、それに加えて「CM」でも、野球ファンに嫌な思いをさせているわけだ。

自身が制作するコンテンツを大事にすることができないのなら、放送などしなければよい。こんな試合中継をすることで、テレビ局自身も信用、評判を落としていることを認識すべきだろう。


NOWAR


1982・83年松沼博久、全登板成績

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