昨日、コメントでイチローの野球教室について聞かれた。そう言えば「違和感」もあったので、書いておこうと思う。
イチローは、2019年3月21日に現役を引退した。

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この年12月には学生野球資格回復研修制度の研修を受講、川村卓先生などの講義を受講し、翌年2月に学生野球資格を回復した。引退直後から、日本の学生、生徒世代の野球に関与したいと言う意思を持っていたようだ。

この年12月には智辯和歌山で高校生を指導、以後、毎年オフに高校生を指導している。
2021年11月から12月には國學院大學久我山、千葉明徳高、高松商で野球教室を行った。また11月には女子高校野球選抜チームと自チームであるKOBE CHIBENの試合を行った。
2022年は11月に東京ドームで女子選抜と松坂大輔を含むKOBE CHIBENの試合を有料で行う。そして東京の新宿高と静岡県の富士高で野球指導を行った。

イチローはマリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターなので、シーズン中はアメリカにいて、マリナーズ選手の指導やアドバイスを行っている。日本で活動できるのはオフの間だけだ。この間に高校を回って野球指導を行っている。
その中身は、イチローが基本的なレクチャーを行った後に、打撃、守備の指導を行う。自らノックバットを持つこともある。また生徒の質問にも答えている。

今年の2校は公立の進学校だ。たまたま私は両校ともに取材をしている。どちらも小学生以下への野球教室を行っていて、その取材をしたのだ。富士高校は今年から前三島南監督の稲木恵介さんが監督に着任し、前任校に続いてここでも野球教室を実施。この10月にも短時間だが取材を行った。その記事。

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稲木さんはその後、電話してきて「ごめんな、イチローのこと言わなくて」と言った。イチローのこの手の野球教室は、主要メディアに声をかけるが、個別の撮影は一切なく代表撮影のみ、囲み取材もないと言う堅苦しいもので「公式発表」しかできない。これでは呼ばれて行っても意味がないとは思う。
新宿高校も富士高校も指導者は、野球普及に熱心で、新しい考え方の持ち主だ。智辯和歌山の中谷監督も同様だが、それがイチローが野球教室をする基準になっているかどうかはわからない。

端的に言って「イチローの野球教室」は「何のためにやっているのか、よくわからない」。
高校生に「正しい野球」を教えたいのなら、1日、それも数時間の「実技披露」は、ほとんど意味がない。それをするなら「座学」にして、練習の取り組み方、体の手入れの仕方などを話すべきだ。その際には、その高校の指導者との綿密な打ち合わせが必要だろう。
もし「野球普及」に貢献したいのなら、高校の野球選手に教えるのは意味がない。彼らはすでに野球を始めているのだから。

もちろん、今の高校生世代にとってもイチローはスーパースターであり、心から憧れる存在ではあろう。その憧れの人が目の前で野球をして、指導もしてくれる。天にも昇る気持ちになるだろう。それは良いと思うけど、平たく言えば、普通のプロ野球選手が全国各地でやっている「野球教室」と何ほどの差もない。
ここまで野球をしてきた高校生への「御褒美」にはなるだろうけども、悪い言い方をすれば「大人の自己満足」以外の何物でもない。

もったいないなあ、と言う気も少ししてしまうところだ。


NOWAR


1982・83年松沼博久、全登板成績

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