毎日新聞
部活寮暴行、聖カタリナ学園高を賠償提訴へ 元部員「適切管理怠る」
本来「学寮」とは、通学困難な学生、生徒のために設けられるものだが、私学を中心に「生徒たちの私生活も管理する」ことを目的に設置されることが多くなった。イギリスのパブリックスクールのように「全寮制」を売りにする学校もある。当然、学費は高くなるが、集団生活によって、思春期の子供たちに「道を誤らせない」教育ができる。

野球部寮はその中でも特殊で「24時間野球漬け」にするために設けられた。日本には「練習が多ければ多いほど、野球は上達する」という頑なな信仰があって、野球部寮を持つ私学が増えた。
そのきっかけは、間違いなく「PL学園」だろう。全寮制で24時間管理された環境で育成された選手が、空前の実績を挙げた。PLの例に倣って多くの私学が野球部寮を設けるようになった。

しかし日本において「野球」と言うスポーツは「上下関係」が異常に厳しい。戦後、軍隊から復帰した元野球選手が、軍隊式の指導を普及させたからだとされるが、PL学園なども時代錯誤な寮生活を生徒に強いていた。
多くの寮は2人部屋で、先輩後輩が1部屋で生活する。後輩は先輩の「部屋子」となり、生活面すべての世話をする。先輩が食事をしているときは、後輩は蹲踞の姿勢で給仕をするとか、先輩の衣服は後輩が洗濯するとか。

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しかし野球の実力は「先輩、後輩」の序列と比例するとは限らない。後輩が先輩を押しのけてレギュラーの座を獲得することも普通にある。「いじめ」「寮内暴力」は、こうしたねじれた環境から生まれる。

PL学園では桑田清原の時代に野球部寮で死亡事故が起こっている。真相は明らかではないが、先輩が学校内の池に後輩の上履きを投げ捨て、それを取りに行った後輩が溺死した。その先輩は控えに甘んじ、後輩はレギュラーになろうとしていたと言われている。

PL学園の事件をきっかけに私学の野球部寮は改善されたと言われているが「24時間野球漬け」という異様な環境では、様々なトラブルが今も起こっている。
聖カタリナの場合、1年生部員が9人の1,2年生にリンチされたと言うことだが、プライバシーも満足になく「勝つこと」ばかりを強いられる異様な環境では、まともな生活は送れない。

そもそも高校3年間「野球しかしない」ような指導は、もはや「教育」をは言えない。主体性、自主性を失うし、教養や豊かな情操も身につかない。
「野球しか知らない」ような「野球馬鹿」が一流の野球選手になる可能性はどんどん下がっている。

野球部寮は、私学が高額の学費を獲得するための手段になっている。生徒の人権や教育よりも、学校の経済利得、そして「甲子園で勝つ」ことを目的に維持存続していると言ってもよい。

高校生くらいの子供は、基本的に「馬鹿」でこれから良識を身に着けて大人に成長していくわけだから、どんなに管理をしても「野球部寮のトラブル」は根絶できない。

野球部寮だけでなく、スポーツ部活の寮全てにいえることだが「部活のために全寮制を敷く」ような制度は、今後廃絶すべきだと思う。


NOWAR


1982・83年松沼博久、全登板成績

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