昨日は、ジャパンウィンターリーグに根鈴雄次さんが来て、選手を前に自分の野球人生や技術論を語った。起伏の多い人生を歩んだ人だが、若者に接する態度は真摯で、優しかった。
話の後半で「何か質問は?」と聞くと、選手からいろんな質問が出た。ちょっと感心した。

野球選手は保守的な人間が多く、偉い人の講演などを聞い「質問は?」と言われても高校野球の選手はだれも手を上げない。仕方なく3年生のキャプテンなどがおずおずと手を上げるが、「好きな言葉は?」とか「尊敬する人は?」とかくだらない質問になることが多い。

しかしこの日は「自分は海外で野球をしたことがあるのですが?」とか「このステップはどうするのか?」とか、極めて具体的な質問がたくさん飛んだ。

彼らはいろんなレベルで野球をして自分自身で判断を迫られることが多くなり、自分で考えるようになったのだ。「問題意識」を持つようになったと言える。

日本野球は「上意下達」で、指導者は「俺の言うことを聞けばいいんだ」と言う指導をする人が多かった。「俺の言うことを聞いていれば試合に勝てるんだ」「うまくなれるんだ」。こうして育った野球選手は、返事だけは「はい」と元気がいいが、指示待ち族で頭は空っぽという選手が多かった、
以前にも言ったが、自動車教習所の教官が「一番苦手」なのは高校の野球部だと言う。
「この子らは、はい、とすごく返事はいいんだけども、話を聞くと何にもわかっていないんだ」
ということなのだ。

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今では「自分で考える」指導をする指導者も増えているが、それでも「俺についてこい」という指導者もまだいる。

そういう指導者に育てられた選手は、上のレベルでも「指導者に従順」な選手になるし、社会に出ても大きな声で「はい」と言って言われたことを遂行する社会人になる。
これまではそういう人材が「優秀」とされ、年功序列の会社社会で出世の階段を上ったのだが、今は終身雇用も年功序列も崩れている。
会社の仕事も「自分で判断しろ」「自分で考えろ」というミッションが増えている。それができない指示待ち族は、ミーティングでもろくなことが言えないから、出世も覚束ない。

ジャパンウィンターリーグに出ている選手の中には、企業から派遣された人もいたが、後期まで野球をしているのはほとんどが、自腹で参加している選手たちだ。すでに独立リーグを始めいろんなところで野球をしている。彼らはその道を自分で「選択」し、厳しい道ながら歩み始めている。
親世代の私などは「大丈夫か?」と思ってしまうが、それでも彼らは「自分の道」を歩み始めているのだ。

野球で成功するかどうかは別として、彼らは人に依存せず「自分で生きる」人になりつつある。どんな世界に進むとしても、彼らは「自分で判断して」運命を切り拓いていくだろう。

その道に進めただけでもジャパンウィンターリーグは意義があったのかもしれない。

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NOWAR


1982・83年松沼博久、全登板成績

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