2019年、法政大学での日本野球科学研究会第6回大会に、ゲストシンポジストとして登場したが、その翌年が彼にとって絶頂期となった。
2020年、ナ・リーグのサイヤング賞争いでダルビッシュ有に勝ったのだ。野球科学研究会では、その投球が彼自身が「デザイン」したものだと言った。彼の頭脳と肉体が融合していると思わせた。

キャリアSTATS
T.Bauer


彼は2014年からインディアンスのローテーション投手ではあったが、四球が多く奪三振もさほどではない平凡な投手だったのだ。

しかし2017年の後半から成績が急上昇し、2018年にはERA2位、しかしチーム内でトラブルを起こして翌2019年トレードされるも10試合の登板にとどまり、不振だった。我々はこの年のバウアーを見たことになる。185㎝とメジャーリーガーとしては平凡な体格だった。

Bauer


2020年に復活して、サイヤング賞。ショートシーズンだったのが惜しまれる。オフにFAになり、3年9000万ドルでドジャースに移籍、まだ30才であり、ここから全盛期かと思われた。

しかし2021年7月、バウアーがある女性への暴行容疑で訴訟を起こされる。MLBはバウアーをRL(制限リスト)に入れた。2022年4月には丸2年に当たる324試合の出場停止処分が課され、昨年末に194試合に短縮された。

バウアーは今季前半にRLからの復帰が可能になっていたが、ドジャースはツイッターで
「性的暴行やDV疑惑に対して徹底的に調査すべきだと信じている。初めの段階から、我々はMLBの調査に対して全面的に協力しており、MLBが定めるDV、性的暴行、幼児虐待の規約を遵守してきた。処分が決定し、慎重に考慮した結果、我々はバウアーを放出することを決定した」とバウアーをDFAにすることを発表した。

バウアー自身は件の女性との関係を「合意」だと主張している。トラップにかかった可能性もあるのだろうが、MLB、MLB球団は人権、とりわけ女性の権利を棄損するような行為に極めて厳しい姿勢で臨んでいる。アメリカのスポーツの世界では、そういう選手は生きていけないのだ。

日本的に言えばあほな男から「合意の上ならいいだろ」「バウアーはハメられたんだ」みたいな馬鹿な擁護論が起こるようなネタだ。坂本勇人や中村奨成のように球団に守られて「ノーコメント」で逃げることもできるだろうが、まともな人権意識が健在で、メディアが取材対象と癒着していないアメリカでは、これはアウトなのだ。

まだ31歳のバウアーには、やり直す権利はある。前非を悔いるコメントを出したが、やり直してほしいと思う。



NOWAR


1960~62年柿本実、全登板成績

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