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坂本、柳田、森…侍ジャパンで出場辞退者が続出「サッカー日本代表では考えられない」の驚き
いわゆる「あおり記事」ではある。朝日新聞ともあろうものが、サッカー界と野球界の仕組みの違いを知らないはずがない。
ワールドカップは、FIFA(国際サッカー連盟)が主催している。FIFAには211もの国内サッカー連盟が加盟し、世界のサッカーの統括機関だ。FIFAが認めなければ、その国、そのチームは国際試合をすることはできないし、そもそも公式戦をすることができない。
FIFAはIOCと肩を並べる権力を有するスポーツ統括団体だ。FIFAの主催する国際大会は、圧倒的な権威と権限を有している。また、サッカー選手にとってFIFAの国際大会に出ることは最高の栄誉だ。
ワールドカップは1930年に始まり、90年以上の歴史を有している。

WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は、アメリカのプロ野球統括機構であるMLBとMLB選手会が主催している。それ以前にはIBAF(国際野球連盟)が主催するワールドカップがあったが、MLBは参画していなかったので、実質的にはアマチュア野球の大会だった。2013年にIBAFと国際ソフトボール連盟(ISF)は統合されてWBSCとなった。WBSCの運営はMLBが支援している。
これによってワールドカップはなくなり、トップクラスの国際大会はWBCに一本化されたが、WBSCはWBCの運営には参加していない。WBCの間の年に開かれてきたプレミア12はWBSCの主催だが、MLBは参加していないため現役メジャーリーガーは出場していない。

ワールドカップとWBCは、ことほどさように主催者の権力が違う。ワールドカップの開催が決まれば、開催国はスタジアムを新設するなど国を挙げた大事業が起こるが、WBCは日本、台湾、アメリカの既存の球場を使って行われる。特別な準備は行わない。

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ワールドカップの試合は、予選の段階からリーグ戦など他の試合よりも優先される。しかしWBCは国内のペナントレースが始まる前、春季キャンプ後の短期間に集中的に行われる。
ワールドカップに選手を出すことにネガティブなプロサッカーチームはないが、WBCはつい最近までひざ元のMLB球団のオーナーが選手を出すことを渋っていた。大事な資産である選手を、関係のない試合で故障で失うことを恐れていたのだ。今も、そういう意識はあるはずだ。

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ワールドカップに出場してキャップを得ることは、サッカー選手にとって最高の栄誉だ。WBCに出場することをプロ野球選手も名誉だとは思っているが、それが究極の目標と思う選手は少ない。

野球の世界では、怪我明けの選手、移籍したばかりの選手はWBCの栄誉よりも、そのシーズンを無事乗り切ることを優先する。それはワールドカップとWBCの「バリューの差」を考えれば、当然のことだ。

朝日新聞ともあろうものが「サッカー日本代表では考えられない」とカマトトぶるのは、およしなさいと言いたくなる。



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1960~62年柿本実、全登板成績

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