昨日も「Wiki見て書きやがって」というコメントがあった。いまどきWikipediaを見ずに文章を書いているライターはいないと思う。要は活用の仕方だ。
Wikipediaの良いところは「原典主義」であることだ。いわゆる「独自研究」は否定する。本や新聞、メディアに書かれた記事などに基づいて書くのが基本だ。例えば取材対象に書き手が直接会って話を聞いたとしても、それだけではWikipediaには書けない。必ず原典がいるのだ。Wikipediaは誰でも参加することができるが、間違った文章があがると「編集合戦」といって他の書き手がそれを訂正して上書きする。だから、ある程度の信頼性がある。

プロ野球選手のキャリアについて書くときは、自分が長いことつけてきたデータで表を作るが、NPBのキャリアSTATSもみる。これに加えて提携している日本プロ野球記録さんのサイトも確認する。特にタイトルや打率、防御率の順位などは重宝する。そのうえでWikipediaの選手ページも見る。キャリアについて簡潔にまとめて記述されているからだ。また選手のオールスター出場記録はWikipediaにしか載っていない。最近は、baseball-referenceが、NPB選手のファームの記録も記載している。これも見るようにしている。これだけ書くと大変な手間のように思うかもしれないが、ほぼ毎日この作業をしているので30分もかからない。

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Wikipediaのいいところは、常にアップデートされるところだ。阪神の「JFK」については長いこと「第一次JFK、第二次JFK」などと書かれていたが、根拠のない独自研究だった。また「ミスタータイガース」も「初代、二代目」などと根拠もなく代々を決めていたが、最近両方とも改正されている。
ジャイアント馬場の巨人選手時代の成績については、長く「二軍でタイトルを取った」と書かれていた。これは馬場の自伝や二宮清純の記事によるが、私は本を書くにあたって当時の二軍記録をプロ野球ファーム研究の第一人者である松井正さんから提供され、それに基づいて書いた。Number Webでも同様の記事を書いたが、最近、Wikipediaもこちらのデータに改められている。また馬場の脳外科手術の時期についても、改正されている。

事程左様に、Wikipediaは常に動いているのだ。だから参照しないわけにはいかない。ただWikipediaを見て、それを利用したとしても、引き写しはしない。そこに私の独自の解釈を入れる。それがなければ自分の文章にはならない。

その点は、他の資料を見て書くのと全く同じだ。どんな情報をもとに書いても、最終的にはいかに自分の文章にするのかが大事なのだ。

料理人にとって大事なのは、食材をコンビニで買うか、スーパーで買うか、産直で買うか、自分で採るかではなく、その食材をいかに料理するかだろう。
ライターの場合も基本的に同じだと思っている。

Wikipediaで書きやがって、というのは発表するような文章を書いたことがない人の言い草だ。

ちなみにWikipediaには、私の項目まであるが、無断で作成されたものであり、不愉快なだけでなく怖いなと思っている。分不相応だし、削除依頼を出そうと思っている。



NOWAR


1960~62年柿本実、全登板成績

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