「杉谷が来てるんだってよ」「中嶋監督のところへ行ったら、邪魔だ！って言われたんだって」オリックスのブルペンでカメラマンが話しているのを聞いた。
今季から評論家、あるいはタレントになった杉谷拳士にとっては「キャンプデビュー」というところか。
翌日、沖縄に向かう便に乗ると、杉谷も一緒だった。面識はないのでそのまま見ていただけだが、そのまた翌日にはロッテで杉谷の姿を見た。
この日は、ロッテの投手陣がずらっとブルペンに顔を並べた。WBCのこともあるのか、ロッテも早い仕上がりだ。

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ブルペンの後ろで投手を見つめる吉井理人監督に、杉谷がにじり寄っていく。オリの中嶋監督もロッテの吉井監督も日本ハムでコーチをしていた時期があるから、杉谷とは親しい間柄だ。
優しい吉井監督は、杉谷と何事か話し込んでいる。ちょうど佐々木朗希がブルペンに上がって、吉井監督としてはそちらに集中したいのではないかと思うが、杉谷は朗希が上がってからもしばらく話をしていた。

「引退したときは、僕クラスの選手にはどこのテレビ局も、新聞社も声をかけてくれへんかった。だから僕は自腹でキャンプ地を回って、監督やコーチ、それにマスコミの人に顔を売ったんです。数年くらいそれをして、仕事が来るようになった。キャンプ周りは僕の原点やね」

もう十数年前に、金村義明からこう聞いた。今年はまだ顔を見ていないが、金村も春季キャンプでよく見る顔だ。
同じく、春季キャンプでよく見るのは、里崎智也だ。彼も、各キャンプ地をまめに回っている。スポーツ紙の記者がついているから、コラムを書いているのだろうが、メイングラウンドやブルペンの練習を実に丁寧に見ている。
また、岩村明憲もよく見る顔だ。彼は独立リーグ福島の社長兼監督だが、評論家としても活躍している。
和田一浩も良く見た。彼はNHKの解説者だったからディレクターが一緒にいた。

こういう野球人を「キャンプ放浪族」と言っては失礼かなとは思うが、キャンプは顔を売りこんだり、メディアと接点を持つには有効なのだろう。

しかし、和田一浩はこの度中日のコーチになったが、金村も里崎もついぞNPB球団への仕官はかなっていない。おそらくはその気がないのだろうが、毎年、各地のキャンプ地を回っている。岩村は独立リーグに別の立場があるから、これは副業なのかもしれないが。

杉谷の場合、どうなのだろう。現役時代の実績からして、そのままでは指導者の口はかからないかもしれない。MLBで学ぶとか、大学院でコーチングを勉強しなおすとかしないと、指導者の口はかからないかもしれない。
「いや、彼はタレントでしょう」と言う声もあるが、プロ野球選手として「ちょっと面白い」くらいの才能で、恐ろしくレベルが上がっているテレビタレントとして通用するのか？
タレントとしては、せいぜい育成枠ではないかと思う。

彼が来年以降もキャンプ地を回るのか。それとも来年はテレビ出演が忙しくてそれどころではなくなっているのか、興味深く見届けたい。

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NOWAR


1960～62年柿本実、全登板成績

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