育成選手が、支配下選手に比べても厳しい境遇であることは、すでに紹介した。
昨年まで479人が育成で指名されたが、127人しか支配下登録されていない。26.5％しか1軍の試合に出られなかったのだ。

しかしそんな中からでも、素晴らしい成績を挙げる選手もいる。巨人で言えば山口鉄也。最多ホールド2回の信頼感あるセットアッパーになった。

西武で言えば水上由伸。2022年は60試合に登板し、新人王にも輝いた。

ソフトバンクは枚挙にいとまがない。育成から支配下になった選手は24人いる。大関友久は今季の開幕投手になった。牧原大成はユーティリティながら昨年規定打席未達ながら3割を打った。
そしてソフトバンクの2023年WBC代表3人の内、甲斐拓也、周東佑京と2人が育成上がりなのだ。
さらに今季、100億近い大型契約でニューヨーク・メッツに入団した千賀滉大も育成上がりだ。

育成選手は全く無名の高校、大学のアマチュア選手か独立リーガーだ。彼らの目標は「このままずっと野球をしていたい」であって、プロ入りは「高望みだけど」と多少はにかみながらいう程度の「大きな夢」だったはずだ。
彼らにとって「世界を目指す」は、あまりにも遠い「夢のまた夢」で、口に出すのもはばかられたのではないか。

しかし、彼に本当のポテンシャルがあれば「プロ野球」という実力の世界では、チャンスはすぐにめぐってくるし、ステージはあれよあれよという間に上がっていくのだ。

今、宮崎で「26」をつけて投球練習をしている宇田川優希は夢見心地で日々を送っているだろう。
仙台大学から2021年育成でオリックスに入った当初は怪我でリハビリをしていた。昨年の夏の段階でも育成選手だった。フレッシュオールスターに代替選手で出て注目された程度。
支配下昇格3日前、フレッシュオールスターの宇田川。

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7月後半に一軍に引き上げられ、セットアッパーとして活躍し、日本シリーズにも出場。

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そして今年になって、宇田川は侍ジャパンにも選ばれた。去年の今頃はウェスタンリーグでさえ登板「1」。契約継続もおぼつかない超マイナー選手だったのが、今は、MLBも注目する選手たちに混じってマウンドに上がっている。

気後れするのは当然だが、その宇田川をダルビッシュ有がアテンドし、仲間の真ん中に押しやった。家族ならずとも胸が熱くなるような気配りをして見せたのだ。

アメリカ人だけでなく日本人だって、みんな「サクセスストーリー」が大好きなのだ。無名の若者がスターダムに載る「夢のまた夢」を見たいのだ。

宇田川優希はWBCでは脇役だろうが、与えられた仕事をきっちり果たしてほしい。そして近い将来、ステップアップしてMLBに挑戦してほしい。


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1960～62年柿本実、全登板成績