今回のWBCで日本が久々の世界一になるかどうかは、まだ全くわからない。昨日、私はメキシコの戦力分析の記事をNumber Webに入稿したけど、2019年のプレミア12のときとは段違いにすごい顔ぶれになっている。
しかしながらたとえベスト4に終わっても、準優勝であっても、この盛り上がりは大したものだった。何せイタリア戦の世帯視聴率は48%、全盛期の巨人戦でもこんな数字はなかったし、サッカーのワールドカップの数字をもしのいだのだ。
街を歩いてもWBCの話題があちこちから聞こえてくる。小中学生の野球競技人口は、一時的にせよ増加するだろうとは思う。

でも、どれだけWBC人気が盛り上がっても、野球界にいる大人たちはそれを「野球復興」に利用することはなさそうだ。
まず、その才覚のある野球関係者がいない。高校野球が「ペッパーミルパフォーマンス」を禁じたことでわかるように、これが「野球復興の好機だ」と言う認識の大人がほとんどいない。
そもそも、今の野球の不人気の一因が「野球は古臭くて」「上の人が威張っていて」「頭が悪そうなイメージ」だと言うことに気が付いていない。野球指導者の多くは未だに「少子化で競技人口が減っている」と言っている。ここ10年の出生数は10%近く減って深刻だが、中学以下の競技人口は30%も減っているのだ。
少子化ではなく「野球が選択されていない」という現実に気が付いていない。

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その上に、高校、大学、社会人など各カテゴリーの野球関係者は「WBCの盛り上がり」を活用しようと言う気持ちがない。彼らにとっては、カテゴリーが違えば「他所の社会」であり、プロなどは関わりあってはいけない世界だ。とりわけWBCが日本ではなくアメリカでプレーする選手の活躍で盛り上がっていることを苦々しく思う人もいるはずだ。
「変なことを真似する選手が増えて困る」みたいに思うっている人も多い。また、WBC侍戦士のフランクで心優しいふるまいは「指導者をひたすら敬う」「年長者は絶対」で、相手チームは「敵」という日本野球の価値観とは相いれない。

プロアマの壁は、プロの側がアマチュア選手を露骨に引き抜いたことに端を発しているが、それはもう60年も前のことだ。その後、多少の交流は再開されたが、今こそ、プロアマが全面的に手を携えて野球復興をすべき時なのだ。
例えば、選抜の入場行進の時に、球児の代表が、アメリカに遠征した侍戦士たちに向かって「先輩選手の皆さん、頑張って世界一をとってください。僕たちも一生懸命頑張ります」と言えば、その瞬間に高校野球とWBCは地続きになり、連帯感がうまれたものを、選手が試合で演じた小さなパフォーマンスに文句をつけるありさまなのだ。

端的に言えば、今の年配のアマチュア野球指導者は「野球の未来」など「どうでもいい」のだ。自分たちが引退するまで、甲子園やアマチュア野球がそのままであってくれればいい。
何か新しい動きが起こって、自分たちの勉強不足や、能力のなさが露呈するのはかなわない。未だにパソコンができないことがバレては困る。それが本音なのだ。
東北高校の佐藤洋監督もそうだが、今、いろいろな高校で、新しい考え方の優秀な指導者が登場している。その中にはプロ野球出身者もいる。彼らは高校野球の未来に危機感を抱いているが、「今までやってきたことを1ミリも変えることなく、このままでいきたい」年寄りに阻まれて、改革できていないのだ。

こういうあほな状況は、日本社会のあらゆるシーンで見受けられるが、それをやっている限り、日本は「みんな手を携えて」ずぶずぶと沈下していくことだろう。

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NOWAR


1960~62年柿本実、全登板成績