「ペッパーミルパフォーマンス」をめぐる対応で、日本高野連はまたダメな一面を見せてしまったが、高野連の幹部は今の状況に無頓着で、のほほんと生きているわけではない。
高校球児の減少には危機感を抱いているし、いろいろな改革も推進している。
例えば、2018年、金足農の吉田輝星が、甲子園で881球を投げたことが「投手の酷使」と大きな話題になった。そこで翌年、「投手の障害予防に関する有識者会議」を設置し、4回の会合(たった4回!)を経て「1週間500球以内」という「球数制限」を設けた。

これは実質的に現状を追認するもので「ゆるゆる」の規定だったが、それでも全国の高野連幹部が集まった会合では「伝統を壊す」「野球ができなくなる」と非難轟々だった。そのとき、ルールを決めた甲子園ドクターが立って「毎日、うちの病院に何人の高校球児が肩肘を損傷してきているか、知っているのか!」と一括し、会場は静まり返ったと言う。

日本高野連のトップは「これではいけない」とは思っている。改革しないと駄目なことは、実質的なビジネスパートナーである朝日新聞の担当者ともども認識している。

しかし同時に、今、各都道府県の高野連の幹部を退陣させたり、高校野球関係の企業などとの関係を大きく変えるような、ドラスティックな改革はできない、と思っているのだ。

金属バットが飛びすぎる問題は、20年前から存在した。この当時、アメリカの学生野球を統括するUCLAと高野連は共同で新たな金属バットの開発に乗り出した。
アメリカ側は膨大なデータをとって新たな金属バットの使用を着々と決めていったが、日本側はほとんど動かず、しびれを切らしたアメリカは10年前に反発係数に基づいた「BBCOR」という新たな金属バットを開発。今ではアメリカの金属バットはそれ以外の仕様は存在しない。

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しかし日本はその後も、問題意識はありながら全く動かなかった。アメリカが開発したBBCORのバットを導入すれば解決するはずだが、BBCORのバットは日本のメーカーではミズノしか作っていない。
これを導入すれば国内メーカーが困る。そこで「バットを細くする」という独自に仕様を慌てて作って、2024年から導入することになったのだ。しかし「反発係数」の規定がないから、本当に飛ばなくなるかはわからない。

この2つの事例で分かるように、日本高野連は「問題意識」はあるが、無能で、現状を改革する覇気もないのだ。そのためにずるずると地盤沈下を起こしている。

コメント欄には「高野連は頑張っている」「指導者にも改革志向の人はいる」という声が来ている。それはその通りだが「物事を改革する」能力、気概が決定的にかけているのが、今の高野連なのだ。

もっと野球がダメにならないと、高校野球の改革は起こらない。


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1960~62年柿本実、全登板成績