ビールの銘柄にうるさい人というのは世の中に一定数いる。確かにエビスビールとアサヒスーパードライは味が違う。キリンのラガーと一番搾りも違うように思う。
しかし「俺はラガーでないと嫌だ」と本気で思っている人ってどれくらいいるのだろう。
昭和の終わりころ「アサヒスーパードライ」が発売されて一大ブームになった。このとき「美味しんぼ」が「あんなのはビールじゃない」みたいな漫画を描いた。私は「けっ」と思っていた。
ビールの味がどんなだか、味わって飲んでいるうちは、楽しくもなんともないのだ。ビールはジョッキで何杯も飲みまくって、しまいに井戸にはまったみたいな心持になるのがだいご味だ。少なくとも30代くらいまではそう思っていた。

結局のところ、ビールは味ではなく「雰囲気」で味わうお酒ではないか?それもバーのカウンターで気取って飲んでうまいのではなく、ざっかけない店や屋台、野外で飲むとよろしいのだ。

ビールを飲んで「うまい」と感じるシチュエーション、私に言わせるとこの3つだ。

1.世間の人が働いている時に、のうのうと飲むとうまい
2.屋外で風に当たって飲むとうまい
3.つまらないアテをつまみながら飲むとうまい

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野球場でのビールはこの3つにすべてほぼ該当する。
デーゲームはもちろんのこと、ナイターでも6時の試合開始前に飲むビールは非常にうまい。特に昔の大阪球場や日生球場、今の神宮球場、横浜スタジアムのように周囲にビルがあってその窓の奥で、サラリーマン各位が「まだ仕事をしている」のを横目で見ながら飲むビールは「優越の味」がする。「サラリーマン諸君、日本経済のために頑張ってくれたまえ」などと寅さんのようなことを言いたくなる。

屋外の風を感じながらのビールがうまいのは言うまでもない。最近、ビアガーデンに行かないけど、あそこで飲むビールは味が違った。

そしてアテ。「ムール貝の地中海風なんたらかんたら」とか「若狭ぐじのこぶ〆なんたらかんたら」みたいなのはいらない。ポテトチップス、鶏皮、オイキムチみたいな、単純で分かりやすいツマミが1つあって、それでビールを飲むのがいい。

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球場では売り子のお姉さんからビールを買うとなおうまい。お姉さんがきれいとかそういうのではなくて「臨場感」がビールをうまくする。私は5年ほど前に東京ドームのビールの売り子を取材したが、なかなか面白く、それからビールの味がさらにうまくなった。
そのときに「西武ドームではオリオンビール売っているんですか?」と聞いたら「山川選手の登場音楽になってから売るようになりました」と言われてさすがと思った。

お姉さんから買うと1杯800円くらいする。WBCではMLBの取り分も入っていたからか900円もしたが、それが嫌だと言って缶ビールをこそっと忍ばせて球場で飲んでも「盗み酒」の味しかしない。

今の私は球場では1杯しかビールを飲まないが、それだけにかけがえのない「味」がする。
その一杯を求めてスタジアムに行く、という部分もなくはないのだ。

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