朝のブログで言いたかったのは「日本のファンはアメリカに比べてレベルが低い」ということではない。より正確に言うならば日本の野球ファン情勢は「悪貨が良貨を駆逐する」ような事態になっていて、このことを憂慮している。
MLBの球場をそれほど良く知っているわけではないが、あちらの観戦風景は、よく言えば「完全に自由」悪く言えば「好き勝手」だ。ときどきチャントみたいなのも起こるが、球場中が声を揃えて大応援をすることはあまりない。ファインプレーやホームランには、大きな拍手が起こるけれども。試合がだれて来ればウェーブも起こるし、酒に酔いつぶれるおじさんもいる。

ちなみに、MLBの球場の周辺は大駐車場が拡がっている。多くのお客は車でやってくるが、ビールも飲んでいる。アメリカでも飲酒運転は違法だが、血中アルコール濃度が0.8mg/mlと日本の0.3㎎/mlよりも緩いこともあり、ビールを飲んでも酔いを醒ましてそのまま車で帰る客もいるようだ。ただし21歳以下の飲酒は厳禁だ。

球場でも観客の観戦スタイルは多様だが、それ以上に野球ファンの「嗜好」も多様だ。野球から派生した様々なジャンルの楽しみがある。例えばセイバーメトリクスで言えばFangraphsやBaseball-Referenceのような専門サイトがあって、どちらも大きなアクセスを稼ぎ、ビジネスとして成立している。野球の文学やアートの世界も盛んだ。こういう派生したジャンルが、実際に野球を見る観客とクロスオーバーして「多様性」を作っている。アメリカで野球が「文化だ」と言えるのは、思い思いの楽しみ方を野球ファンが享受しているからだ。

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これに対し、日本では「応援団」と「セイバーなど記録ファン」「野球文化愛好家」はバラバラに存在している。私は「東京野球ブックフェア」に10年以上通っていて、出店もしているが、ここで「応援団」みたいな人に合うことはない。「野球文化學會」も毛色の似た集まりだが、ここに集まる人たちの多くは「球場はうるさいからもう行くのをやめました」と言っている。
またセイバー系のデータを実戦で活用するアナリスト系の人たちは「野球科学研究会」に集まっているが、この人たちの多くはお金を払って野球観戦することはない。
そして日本ではセイバーメトリクス系でビジネスになっているサイトはない。Baseball Geeksは専門性の高いサイトだが、一般のファンのためとは言えない。

結局、ここ30年の間に起こった「野球周辺」の様々な進化、変化は、球場で野球を見る人にはほとんど影響を与えていない。そしてその30年の間に球場は「試合時間中、多くの人々が大声を出して騒ぐ巷」へと変貌したのだ。「悪貨が良貨を駆逐した」とはこのことだ。

セイバーメトリクスが専門家以外にほとんど広がっていないこと、「野球文化」を愛する人と「応援団」にほとんど接点がないこと、そして応援団が猖獗を極めていることなどを見ると、むしろ日本の野球ファンは「退化している」のではないかと思っている次第。



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