この本のこだわりはすごい。

年によって多寡があるが私は毎年、少なくとも20回は野球場に通ってきた。今はメディアパスを貰って入るのを別にしても、60試合前後はプロ野球の試合に足を運ぶ。
どの球場も、乗るべき公共交通や経路が頭に入っている。コロナ禍であれば、入り口でどういうチェックがあるかもわかっている。客席も自分で取るから、どのあたりに座るかも知っている。どのタイミングでビールを飲もうか、とか、遅くなったらどの電車で帰ろうか、とかも頭に入っている。

昭和の時代であれば、私が勤めていた会社から大阪球場までは御堂筋線で一本、日生球場は淀屋橋から御堂筋線で本町乗り換え中央線で森ノ宮、西宮球場であれば梅田から阪急で西宮北口、などなど、特に関西の球場の行き方は全部頭に入っていた。

いわば、野球観戦は「生活の一部」であり、明らかに「日常」だった。だから、少々のアクセス難も「通勤」「通学」と同様「どうってことない」と自分を言いくるめることができた。

しかし新しい球場へ行くのはそうではない。福岡にホークスの新球場ができたときは、百道まで行くのははるかに遠いように思った。ナゴヤドームも、昔は大曾根から歩いたから、ナゴヤ球場(中日球場)よりも遠いと思った。ナゴヤ球場は今も昔も10分以上歩くけども。千葉マリンスタジアムに至っては、この道を歩かせる気か?と思ったものだ。

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エスコンフィールドを「遠い」というのは、まだ「日常」になっていないからと言う側面は確かにあるのだ。通いなれない道を「あと何分、あと何百メートル」と思いながら歩くのは、結構骨が折れる。特に「どこへ行くにも車」の生活圏では。
しかし、リピーターになってしまえば、そういう道中は苦ではなくなる。むしろ、その行程はこれから見る「野球」の期待感、わくわく感を高める「貴重な時間」になっていく。

球団やスタジアム側に必要なのは、その道を「球場に至る花道」のようにする「演出力」だろう。何度も言うが、JR仙台駅から楽天のスタジアムまでの道のりは、少々遠くても歩きたくなる。街路にイーグルスのバナーが掲げられているからだ。少し歩いて、小高い丘を越えて赤い球場のゲートが見えたときは胸が躍る。
神宮球場は、外苑前の地下駅を上がると、あちこちにスワローズ選手の大きな写真があって、これもわくわくする。距離は短いが、関内駅からハマスタの道中も同様だ。

少し残念なのは、ペイペイドームだ。住宅街を通るだけに、ドームが見えるまでに、期待感を盛り上げる演出のようなものはほとんどない。

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エスコンフィールドに大事なことは、2㎞の道を「長い」と思わせないための演出だろう。大層なものはいらない。バナーとか小さなモニュメントでもいい。ここから少し歩くと、何か楽しいものがありそうな、そういう期待感をもりあげていくべきだ。
率直に言って、北海道はこうした「気の利いた演出」がうまい街ではないと思う。札幌や函館、旭川など、町は割と殺風景で、観光名所がゴロっと投げ出してある感じがする。

新駅をつくるのはずいぶん先の話になるだろうし、ファイターズは、北広島市と協議をして、長い道のりを短く感じさせる演出を、考えるべきだろうと思う。


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