NHKは今年12月からBS1・BSプレミアムを1つのチャンネルに統合し、12月1日から「NHK BSプレミアム4K」として再スタートすると発表している。今BSは再放送の嵐になっている。見覚えのある番組がうんざりするほど流れている。
4K化、8K化によって通信の情報量は飛躍的に多くなり、リッチ化はさらに進むのだろうが、コンテンツの本数は確実に減少する。
政権はNHKと民放の格差を是正したいという意向があって、こうしているのだろう。また受信料に対する国民の批判にもある程度答える意味もある。NHKは、番組制作本数も、予算も削減されるのだろう。

私は、これは日本の国の「反知性主義」の進展の一環だと見ている。広告収入に頼り、企業の意向を反映せざるを得ない民放は、マーケティング主導で「視聴者が見たい番組」だけを作るようになっている。
テレビの広告収入はネットに押されて頭打ちだから「安くて視聴者が食いつく」コンテンツに主役されつつある。
その結果としてどこの局も「芸人、芸能人がだらだら話をするだけ」の番組を大量に垂れ流すようになった。芸人、芸能人のトーク術は大したものだとは思うが、同じような芸人が、どうでもいいテーマでだらだらと喋るだけの番組が延々と並んでいる。話のレベルは小学生でもわかる程度だ。

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そういうのが人気があるからだろうが、4K8Kとものすごい映像技術がありながら、こんなくだらない番組しか作れないのかと思う。

野球中継の目を覆わんばかりのレベルの低下を見るにつけ、民放には何も期待できないと思う。

NHKはいろいろな番組を作っている。民放の真似をして視聴者に媚びるような番組は、ろくでもないと思うが、一方で、野球で言えばNHKはデータをきちんと用意し、まともな解説者を揃えて安定感のある放送をしている。MLB中継も日本人選手だけでなく、活躍しているメジャーリーガーも紹介するなど「まとも」である。

そもそも古典芸能や文化財、クラシック音楽や現代芸術など、広範な文化について、今、テレビで情報発信しているのは、NHKだけだ。それができるのは、各分野に大学で教員が務まるようなスタッフを擁しているからだ。
民放は歌舞伎俳優がスキャンダルを起こせば大騒ぎするが、歌舞伎そのものはここ数十年、1度も放送したことはない。
日本文化の分厚いコンテンツに、民放は見向きもしない。そもそもそれを扱えるような人材がいないのだが。

平たく言えば、今の民放は「視聴者は馬鹿ばっかりだから、こいつらが喜ぶものを適当に作って流して、視聴率を稼げればいい」というところだ。まともなコンテンツはNHKしか作っていない。

レベルの低いテレビを忌避して、視聴者の多くはBSCSやネット動画などに走っている。しかしこうしたメディアの多くは、予算が少ないためにリッチな番組は制作できない。

そんな中でNHKの力を削ぐのは、視聴者の「情報格差」を拡大させるとともに、低次元の民放番組のシェアを拡げるだけだ。

「俺はNHKなんか見ないから、受信料は払わない」というのは「情報弱者」の理屈だ。そこにレベルを合わせてNHKの力を殺ぐのは、文化的な自殺行為だ。

NHKという組織、そして経営陣に問題があるのは間違いないところだが、だからと言ってNHKを弱体化するのは角を矯めて牛を殺す所業だと言えよう。


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