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深圳という町は若いころに一度、香港からジェット船で行ったことがある。広州の南にある町で、まだ町全体が開発途上だった。埃ぽい街で、なんか不思議な柑橘系を食べた記憶がある。鄧小平が主導する「改革開放」路線で、街そのものができようとしていた。
それからわずか40年ほどで、世界の金融の中心街になった。歴史も何もない新しい街で、住民はみんな新しい。
習近平独裁が続く、中国では「愛国」と「排外」を基本とした教育を続けている。自国を高めるのはいいが、独裁国家ならではの様々な矛盾をすべて「外国のせい」だとする教えが徹底されている。
とりわけ日本は、中国に侵略したというネガティブな歴史をもっている。しかも経済的にははるかに先を言っていたから、叩き放題ができたわけだ。

そういう教育を受ける中で、日本に対し根拠のない反感を抱く人は当然出てくる。中国という国がそういう人間を作っているのだから。
9月18日は満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた日であり、日本に対する中国の風当たりが強くなる日ではあった。
そんな中で、日本人学校に通う10歳の子供が40代の中国人に殺害される痛ましい事件が起こったのだ。

事件そのものは悲惨であり、その根底に、何でもかんでも日本を叩く中国社会の風潮と教育の存在があるのは間違いないところだ。

しかし無謬を標榜する中国は、自国の教育や政策の間違いを認めるわけにはいかない。だから、子供の死を悼みつつも「どこの国でも起こること」という弁解をしている。他国の人間がどんな風に受け止めてもいい、自国内さえ納得させることができればいい、という中国の基本姿勢が見て取れる。

さすがに中国国内でも子供を悼む声が上がっている。犯人を称える声は上がっていない。何の罪もない人間を日本人だからというだけで殺害する行為はさすがに「愛国有理」とはなっていないのだ。

中国のひどい教育を受けても、まともな判断ができる人がたくさんいるということだ。これは救われる話だ。

しかしながら日本では、感情的な非難の声が上がっている。「強く中国に当たるべきだ」「国交断絶せよ」という声も上がっている。

しかし、この事件をきっかけに中国との関係を悪化させて、被害を被るのは日本の方だ。日本は中国に経済的に依存している。おかしな国ではあるが、中国は日本に倍する経済国であり、関係を悪化させることはできない。

感情的に中国を非難し、国交断絶を叫ぶ人間は、深圳で反日感情を募らせる中国人と同種の人間だといえる。冷静な判断ができない危ない人たちだ。「国の誇り」みたいな無内容の言葉を振り回す人間にろくなのがいないのは、日本も中国も同じだ。

総裁選を戦う候補の中にも「激しく怒って見せる」人が何人かいたが、ポピュリストとしては当然そういう振る舞いになるのだろう。しかし実際には冷静でまともな対応をする人間を首班にすべきだ。

中国は今日になって「日本産水産物の禁輸を解除へ」と日本に伝えてきた。独裁国家では一見何の関係もないような事柄も交渉の材料にすることがある。もともとこの禁輸も政治的案件であって、実態はなかったが、引け目を感じた中国は、こういうカードを切ってきたわけだ。なくなった子供には、何の関係もないが、中国はこういう形で譲歩した見えなくもないのだ。

日本は中国よりも冷静に、そして確実に中国の譲歩を引き出すようなアプローチをしなければならない。
習近平もいずれ死ぬのだ。それまでに、中国が日本や台湾に戦争を仕掛けてこないように、冷徹な駆け引きがいる。子供の命が報われないのはやりきれないが、個人的な感情と外交を一緒くたにするのは最悪だということを知るべきだろう。

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