4/25デイリースポーツより

日本プロ野球選手会と12球団側との事務折衝が24日、甲子園室内練習場の会議室で行われ、選手会長の新井貴浩内野手(35)=阪神=が、昨季から導入された統一球の検証を申し入れた。
「去年から統一球になって、数字も出ているし、このままでいいのかと。各球団の選手に聞いても野手だけじゃなく、投手の方からも声が上がっている」と明かした新井。発端は阪神、巨人の両球団が3月末に行ったメジャーとのプレシーズンマッチ。実際にメジャー球を打ち、統一球よりも飛ぶ感覚があったという。

東京ドームのMLBのプレシーズンマッチは、私も2試合見た。

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試合前の打撃練習で、シアトル・マリナーズ=SEA、オークランド・アスレチックス=OAKの選手たちは、スタンドにぽんぽん放り込んでいた。各打者は5球くらい打つと交替するのだが、イチローは5球に1~2球はスタンドインさせていたし、OAKのレディックも大きな当たりを連発していた。どんな打者でも1~2本はさく越えを打っていた。川崎宗則は届かなかったが。

NPB側の打撃練習は見なかったが、昨年のNPBの試合前の打撃練習と比べても、柵越えの数は大きく違っていた。試合では、MLB側はMLBの使用球、NPB側はNPBの統一球を使っていた。練習でも同様だったようで、日米の力の差を実感したと思ったのだが。



仮に、ミズノが作った統一球が、MLBの使用球よりも反発係数が有意に低かったとすれば、早急に是正されなければならない。これは明白なことだ。ミズノはメーカーの責任として、すぐに行動してほしいし、その結果を詳細に発表してほしい。

しかしながら、これも仮定の話だが、統一球とMLBの使用球で、反発係数の数値差がなかったときはどうするのか?

スポニチによると

選手関係委員長を務める広島・鈴木清明球団本部長は「選手会から面白みがないという話が出たが、それは12球団でも話している。反発係数でMLB球より飛ばないということはない。12球団に(選手会の要望を)持ち帰る」とした上で、「シーズン途中に変えるのではなく、来年以降の検討課題になる」と語った。 

話はおかしな方向に漂流しようとしている。新井会長は、統一球が飛ばないから代えてくれ、といっているのではない。「必要以上に飛ばない」からチェックしてくれ、といっているのだ。

マスコミも「統一球NO!新井選手会長、徹底抗戦や」と煽り立てているが、今回の選手会の申し入れはそういう話ではない。
単に興行的な面から判断して、統一球を廃止してしまうのでは、この2シーズンは何だったのだ、ということになってしまう。

そもそも統一球が導入されたのは、

1) 球団ごとに使用球が異なることで公平性が損なわれる
2) WBCなど国際的な使用球と日本の使用球に差異があることは、選手やNPBが世界進出するうえで不利に働く

との判断があったからだ。つまり「統一球」の「統一」とは、「12球団での統一」と「世界基準との統一」という二つの目的を有していたのだ。

この目的を忘れて、「ホームランが出ないから」「試合が面白くないから」という理由で元に戻すことがあってはならないと思う。NPBでは何度も「飛ぶボール」を導入した時期があったが、“安いホームラン”が大量に出て、試合が大味になったために、数年後には必ず是正の動きがあったものだ。

国際化が進む中で、NPBは好むと好まざるとにかかわらず、MLBや世界の野球と地続きになろうとしている。安易に「飛ぶボール」にもどしたところで、その動きは止まらない。

NPBは、日本の家電や携帯電話が、日本の市場だけを相手にして特異な進化をしたために=ガラパゴス化、世界市場から取り残されつつあることを教訓にすべきだ。

仮に統一球の反発係数が、MLBの使用球と変わらなかったとすれば、NPBの選手会は、安っぽい本塁打を求めるのではなく、「統一球を遠くに飛ばすには、どうすればよいのか」を全体で考えるべきだ。それが「野球の進化」というものだと思う。

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