韓国野球委員会(KBO)の情報も定期的にみるようにしているのだが、今朝、公式サイトをのぞいてみて驚いた。
去年千葉ロッテを退団した金泰均とオリックスを退団した李承燁が、打撃ベスト10の1,2位を占めているのだ。

KBO-20120520




金泰均はNPB1年目はまずまずの成績を残したが、2年目の昨年、シーズン半ばに退団して帰国した。

「傭兵扱いに耐えられなかった」「日本の選手がホームランを打つとコーチたちがハイタッチを求めてくるが、自分が打つと“傭兵だから当然”とでもいうように手も出さなかった」と語っている。
そんなことはなかったと思う。千葉ロッテの熱い応援団は、ものすごい声援を送っていたと思うが。要するに里心がついたのだろう。

韓国へはKBO史上最高の10億ウォンの単年契約で復帰。開幕から打ちまくり、35試合時点で.451.KBOでの4割打者は、創設年度(1982)に、近鉄から移籍した白仁天がマークしたのみ(250打数103安打.412)。30年以上前の神代の時代の記録に並ぼうとしている。

また李承燁も.364。この選手はアジア記録(とKBO側は言っている)の56本塁打をひっさげてMLB移籍を模索したがオファーがなくて千葉ロッテに移籍、巨人を経てオリックスとNPBで8年もプレーをし、最後はすっかり衰えた感があったが、KBOへ帰ったとたん大活躍をし始めた。

「それだけKBOのレベルが低いのだ」という見方は当然できよう。WBCを見ていても、KBOは奉重根など一部の投手を除いて、NPBの打線を抑えることはできなかった。層の薄さは明らかだ。

しかしながら、それだけではないと思う。李承燁は、NPBで40本100打点を打ったこともある。その打撃は一級品だったと思う。金泰均も、一昨年の夏までは球をじっくり見る手ごわい打者だった。

個々の素材、能力は決してNPBの選手に劣らないと思う。NPBの一流投手を打ちぬく力もあると思う。恐らく彼らが苦しんだのは「まともに勝負してくれない」ことだろう。内角を鋭くえぐる2シームやシュート、激しく落ちるスライダー。そしてタイミングを外すチェンジアップ。こうした配球の妙に苦しんだのだと思う。

また、生活面、管理面での統制も彼らを苦しめたかもしれない。有名選手として特別待遇に慣れてきた彼らにとって、厳しいトレーニングや節制も苦しいものだったに違いない。金泰均は「空港から降りた途端、息がつまりそうになった」と言っている。

今、二人が大活躍しているのは、KBOでは投手がまともに勝負をしてくれるからだろう。また、管理面でも厳しくないからだろう。水を得た魚とはこういうことだ。

オリックスで4番を打っている李大浩も、内角攻めと配球に苦しんでいる。遅ればせながら「これまで来た球を打つだけだったが、配球について考えるようになった」と言っている。

日本の野球の精妙さ、決め細かさを改めて感じる。

しかしながら、同時に「まともに勝負をせず、相手をうまく打ち取ることを考える」ことが基本になっている野球に、どこか不健全なものを感じもする。NPBからMLBに挑戦した野手たちがそろって非力で、MLBの投手に太刀打ちできないことを考えると、NPBの野球は正しい進化をしてきたのか、とも思う。

産業界ではガラパゴス化という言葉が生まれている。日本でしか通用しないような、必要以上にハイテクになった技術、特殊化したテクノロジーのことだが、NPBもガラパゴス化していないか、とも思えるのだ。

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