昨年11月に勃発した「清武の乱」以来、さまざまな事件がいっしょくたに語られてきた。
もとは、巨人軍人事に渡邉恒雄氏が口出しをしたことが原因で、清武英利氏が「コンプライアンス」に反する、と記者会見したのが発端だった。

今年3月に朝日新聞が、球界で申し合わせた新人契約金の最高標準額(1億円プラス出来高払い5千万円)を超える契約を多数の選手と結んでいたと報道。

このタイミングで、清武英利氏の著書『巨魁』が出版された。



その後、清武氏が読売新聞時代に書いた本の再版、販売を読売側が差し止める訴訟を起こしている。
そして6月になると、原辰徳氏が、関係のあった女性について恐喝されて、1億円を支払ったことが「週刊文春」によって報じられた。

こうして並べてみると、話題が企業経営の話から金、女とどんどん品下がっていくのがよくわかる。

これらの事件は、もともと関連性はなかったはずだが、巨人軍が「清武がリークした」と決めつけたことで、いっしょくたになってしまった。

また、読売、巨人は、これらの事件について「事実関係」ではほとんど争っていない。大方の事実は認めたが、違法性がないとか、適正に処理したとか、社会的に問題がないとか弁明に明け暮れているのである。

しかし、そうして犯人探しをし、強弁をし、居直っているうちに、読売、巨人軍の印象は目に見えて悪くなっている。

野球では、交流戦に優勝するなど強大な戦力がようやく機能しはじめたが、企業としての巨人軍の評判はガタ落ちになっていると思われる。

こうした評判の下落は、巨人という球団の業績を足元からじわじわと浸食するだろう。「野球は強いが、会社としてはなってない」という評判は、観客動員や新人獲得の上でも影響があるのではないか。

企業にとって、一番怖いのは「世間の評判」である。それは巨大メディアが背後に控える巨人軍であっても同様だ。危機管理の考え方からいえば、「俺は何も悪くないんだ」と居直るのではなく、管理体制の不備や、コンプライアンス精神の欠如、情報開示の努力不足などを世間にきっちりと詫びて、出直しをする必要があるだろう。いつまでも「犯人捜し」をしていると、世間が愛想づかしをすると思う。

私は、11月の「清武の乱」の意義はただ一点。旧態依然とした体質のまま、ゆるやかに下降し続けるNPBの問題点を明らかにし、改革への道筋が立てばよいと考えてきた。

戦力均衡がなぜ進まないのか、新人獲得に非常識な金がかかるのはなぜなのか、なぜNPBが一丸となってマーケティングや海外戦略が展開できないのか。
巨人軍が、古いNPBを象徴するような存在だっただけに、その組織やマネジメント、ビジネス手法が変わることは大いに意義があると思ってきたのだ。

その意味では、清武氏のリーク問題や、本の再販差し止め問題、さらには原監督の女性問題は、まったく興味の対象外だった。むしろ、争点がわけのわからない方向に“漂流”するのが邪魔くさいだけだった。原監督がこの手の事件で辞任することは、ことの本質上よいこととは思えなかった。

一連の、派手派手しいが、野球界とは何の関係もない事件は、さっさと収束してほしいと思っている。

ただし、コミッショナーがこの事件で何も発言していないのは大いに問題だと思う。例によって「事態の推移を見守っている」のだろうが、焼けている家の前でそれを「見守っている」人間には、不作為の罪がある。

わが組織に属する人間が、反社会的な勢力に金銭を供与していたこと。そしてそれを球団が隠ぺいしていたことに対して、独自調査をしないコミッショナーは何なのだろう。

「清武の乱」以来7か月、コミッショナーは全く何もしなかった。一本のステートメントも、プレスリリースも出さなかった。

球界を統べる組織の長として、加藤コミッショナーは著しく資質に欠けているのは明白だ。即刻退任するのが、プロ野球のためになると思う。

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