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日本人MLBプレイヤーの2009

松井秀喜、コストパフォーマンス|日本人MLBプレイヤーの2009-04

松井秀喜は、今、FA状態にある。12/3ニューヨーク・ヤンキースは松井との年俸調停を申請しなかった。平たく言えば、NYYにとって、松井秀喜はどうしても戦力として確保したい選手ではないということだ。

この前3回で紹介したように、松井はトータルで見れば、A-RODとそん色のない実績を上げてきた。しかも、まだ年間100打点を挙げる実力がある。チャンスで後続につなぐ能力も高い。さらに、イチローに次ぐ人気選手として、日本からのマネーや視聴者を引っ張ってくる力もある。にもかかわらず、NYYでの松井の優先順位は低い。

何が問題なのか。一言でいえば、コストパフォーマンスが悪いのである。

以下は、MLB打者のRC1ポイント当たりのサラリーを比べたものである。打者を評価する数字には、本塁打、打点、打率、安打数、盗塁数など様々なものがあるが、それをすべて含んだ数値としては、セイバーメトリクスの1つ、RC(RunCreate)がある。複雑な数式だが、要するにすべての打者、走者が目指している「得点を生み出す」という能力を、積み上げ型の数字にしたものだ。

 20091010-01

RC1ポイントあたりのサラリーで見れば、A-RODはダントツの存在である。2009年は出場試合が少ないうえにかなり不調の年だったが、仮にA-RODのRCが、プホルズと同じくらいあったとしても、首位の座は変わらない。A-RODは、NYYという業界トップ企業の威信を象徴している。(もっとも、それは同時にボラスという敏腕=強欲代理人の凱旋記念碑でもあるかもしれないが。もう1、2年不振が続けば、A-RODはゲレーロやオルティーズのように、象徴的な存在ではなくなるのだが)

さて、松井はベスト10に入っている。イチローよりもコストパフォーマンスが悪い。ヤンキースには松井の上にA-RODを筆頭に、ジーター、タシェアラと単価の高い選手がいるが、その3人と比べても見劣りのするRCだ。

さらに言えば、守備面での貢献を考えるならコストパフォーマンスは大きく変わるはずだ。(ベスト10に入って、松井よりもRCの悪いトーリィ・ハンターは外野守備の名手だ。)

仮に守備での貢献ポイントを捕手50、内野手30、外野手20として、RCに加点すると以下のようになる。

20091010-02
守備面での貢献度0の野手=DHが、さらに上位にくる。松井秀喜とデービッド・オルティーズである。この二人がおかれている境遇がくっきりと浮かび上がってくる。

このコストで、守れない松井は、非常に高い買い物なのだ。

言いかえれば、最も高給のDH。確かに成績の良いDHの一人でもあろうが、MLBでのDHは、守れる打者よりも評価が低いのだ。そもそもNYYのように、DHをベテラン打者の「半休」のために空けておくという発想もMLBでは、ありなのだ。RC上位80人の中に入っているDHは、わずか4人である。

 20091010-03

松井秀喜がMLBで生き残るためには、①サラリーを下げる とともに、②守備面で貢献できる ③打撃成績を向上させることができる ことを証明して、コストパフォーマンスを向上させなければならないのだ。

松井秀喜、データで見る打撃特性|日本人MLBプレイヤーの2009-03

松井秀喜はクラッチヒッター=勝負強い打者なのか?打点稼ぎ=RBIイーターなのか。数字で追いかけてみることにしよう。

以下は、松井秀喜の得点圏、2死得点圏での打撃STATSである。

20091209-01
今年、ナリーグで首位打者に輝いたハンリー・ラミレスは得点圏打率.373、2死得点圏は.453。イチローは得点圏打率.328、2死得点圏は.327。

今年の得点圏での松井の数字は芳しくない。とてもクラッチヒッターだとはいえない。おとなしい数字である。しかし、子細に見ていくと、松井の特質があらわれているのだ。

それは、四球が極めて多いこと。いずれも打席数の20%に迫る高率である。

得点圏、2死得点圏のいずれのSTATSでも、2009年の松井秀喜は、三振よりも四球が多い。

確かに2009年は、チャンスで松井に打席が回って、さあ頑張れ!とみているうちに、さっさと四球を選んで1塁に歩くシーンをよく目にした。

ファンにとっては、物足らなさが残るのだが、首脳陣にとっては得難い人材なのだと思う。多くの打者が打ち気にはやって、一瞬のうちにチャンスをつぶしてしまう中で、松井は少なくとも後ろへはつないでくれる。そのクレバーさを感じているのではないか。

松井の四球をシチュエーション別で見ると、以下の通りになる。A-RODと比較した。

20091209-02
敬遠ではなく、自らの選球眼で選び取った四球で見れば、スコアリングポジションで、松井はA-RODよりもより忍耐強く打席に立っていることが分かる。値打ちのある四球を選んでいるのだ。

NYY監督のジラルディは、この12月3日「マツイが1週間のうち5日間プレーしても、ほかの主力を休ませることはできた。このやり方が非常に重要だと分かった」と語っている。そうしてでも使っていきたい打者だというのだ。なかなかそんな打者はいない。

ただ、玄人好みのこうした持ち味が、1300万ドルという高給をどれだけ裏打ちするか、という問題はあるのだが。

松井秀喜は今年、どうだったのか?|日本人MLBプレイヤーの2009-02

毎度お出ししている表だが、松井秀喜のライフタイムSTATSを見てみよう。

20091208-01
下欄にMLBでの年平均STATSをつけた。この数字を見ると、仮に松井が162試合出ていれば、100打点は軽くクリアしていただろうと思わせる。この表を見る限りは、松井はまだ元気だ、と言えそうに思うが、さらに細かく見ていくと、新たな問題が浮かび上がってくる。

以下は、月間ベースでのSTATSである。

20091208-02 

2003年のMLB移籍以降、松井は2007年7月に月間MVPを獲得しているが、それ以外にも絶好調と言える月がしばしばあった。OPSで1.0を超える月が、1シーズンに1、2度はあったのだ。

それが、月間MVPをとった2007年7月を最後に、途絶えているのだ。2009年も7月、9月などは、好調だったとはいえるだろうが、OPS1.0は超えていない。OPSは、出塁率と長打率の和だから、長打が出ていても打率が低かったり、その反対だったりすると、数字は上がらない。

最近の松井秀喜は、好調が持続しないのである。2、3試合大活躍をしても、次の試合が無安打だったりする。その結果、月間ベースまでならしてしまうと、物足りない数字になるのである。

これは、松井秀喜という打者の年齢的な衰えを示しているのだろうか?それとも、モチベーションの問題なのか?いずれにせよ、最近の松井秀喜には「息切れ」という言葉が常に付きまとっている気がする。

松井秀喜とA-ROD|日本人MLBプレイヤーの2009 01

2009年10月4日、レギュラーシーズンの最終日、TBとの最終戦で、A-RODことアレックス・ロドリゲスは大爆発をした。3安打2本塁打、7打点。しかも打点は1イニングに稼いだもの。3ランと満塁の2本塁打。

 2009120701

これによってA-RODは、30本塁打100打点に到達した。松井秀喜とA-RODは、この試合の前までほぼ拮抗するSTATSだったのが、たった1試合でこうかわるのだ。

 2009120702

私は、ここにA-RODという打者の真骨頂を見る思いがした。何としても一流の記録を残したい。その執念が、1試合に凝集されている。この底力こそトッププレイヤーの証しだ。

それに引きかえ松井秀喜は…、といいたいわけではない。

片やMLB最高年俸の座を譲らないA-RODと、NYYでの去就が話題になる松井秀喜、その差は相当に開いているように思えるが、A-RODは松井をかなり意識しているのではないか、と思うのだ。

松井の方が1歳年長だが、二人はプロでのキャリアを同じ1994年にスタートさせている。20代前半からともに所属するリーグの最強打者になり、2004年NYYでチームメイトとなった。そしてそれから松井が大けがをするまでの2年に限れば、両者のSTATSは、本塁打こそ大差をつけられているが、打点、打率ともに拮抗しているのである。A-RODは、「少なくとも松井の上を行く」ことを意識していたのではないか、と思えてくる。

2009120703

拮抗しているのは年度別のSTATSだけではない。通算の数字も似通っている。

MLB、NPB通算で松井秀喜は、

2184試合 7920打数 2367安打 472本塁打 1486打点、.299 

マイナー、MLB通算でA-RODは、

2212試合 8505打数 2615安打 589本塁打 1735打点、.307。

連続性のない違うリーグの数字を足すのは、記録的には全くナンセンスだが、ともに多くの試合に出場して積み上げてきた数字の高さ。二人のこの見事な数字は、一種の偉観だと思うのだ。デビュー以来16年、二人はこの時代の最も恐れられる打者として、数字を積み上げてきたのである。

正直言って、MLBに移ってからの松井には、常に欲求不満を感じていたのだが、この数字を見たとき、何か誇らしいような思いがした。ワールドシリーズでの活躍以上に、松井秀喜に、「よく頑張ってきた!」と声をかけたい気がしたのである。

このブログのスタートは、松井秀喜のこれまでを振り返るところから始めたい。

 

 

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ライター稼業をして、かれこれ34年になります。

2009年1月に、SportsNaviで「MLBをだらだら愛す」というブログを開設、12月には「野球の記録で話したい」を開設。多くの皆様にご愛読いただきました。2011年11月、livedoorに引っ越し。基本的な考え方は変わりません。MLB、NPBの記録を中心に、野球界のことをあれこれ考えていきたいと思います。多くの皆様に読んでいただきたいと思いますが、記録や野球史に興味と尊敬の念を持っていただける方のサイトにしたいと思います。特定の球団のファンの方も大歓迎ですが、「ひいきの引き倒し」的な論調には与しません。

広尾晃はペンネーム。本名は手束卓です。ペンネームは、小学校時代から使っていました。手束仁という同業者がいるので、ややこしいのでこの名前で通しています。ちなみに手束仁はいとこです。顔もよく似ています。
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