野球の記録で話したい

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2009WBC

MLB日本人選手消息0316|MLB

2009316日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】 

WBCに夢中になりつつも、今年のMLB日本人選手たちの消息が気になるところである。日曜日までの集計表を作ってみた。

まずは投手から。

SPRING0317-P

オープン戦が始まって2週間だが、マイナー契約の招待選手はあらかた行き先が決まってしまっている。昨日限りで大家と高橋が落ちた。薮田の情報は確認できていないが、まだ残っているのか。

井川の好調が光るが、よほど抜群の成績を残さないと、ギリギリの線までいくとしても落ちるだろう。今、各チームの陣容を見ているのだが、ヤンキースの投手順には井川の入る余地はそんなにないと思う。

MLBですでに実績を残している選手はまずます。上原は一度打ちこまれたが、次でそこそこの数字を残せば大丈夫だろう。BOSの田澤は学生相手の試合も含まれるので割り引くべきだ。BOSの投手陣は、タレントがそろっているので、常識的には、AAからのスタートとなろう。

野手の多くはWBCに参加しているが、

SPRING0317-B

松井稼のスランプがやや長引いている。松井秀は何とも言えない数字だ。A-ROD故障を受けた4番争いは、ポサダがリードしている状況だ。

田口が頑張っている。マイナーの招待選手ですでに40歳。これで開幕に残れたら本当にすごい。

こうしてみると、今WBCに出ている選手は、揺るがぬ地位がある一部の選手だということがわかる。他国には、WBCから帰ってきたらポジションがなかった、などという選手もいると思う。WBCは、まさに今年のメンバーを決定する最も大事な時にやっていることがわかる。

機構側としても、何らかの整合性のあるシステムを設けないと、WBCとMLBは両立しないだろう。

■後日談:スプリングキャンプとレギュラーシーズンの関係については2010年も追いかけていきたい。

日韓のWBC 野手編|WBC2009

【2009年3月24日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

日本は負傷で村田を失ったが、すぐに栗原を補強した。結果的に栗原は活躍しなかったが、もう数試合あれば実績を残したはずである。日本には、このメンバー以外にほとんど力の落ちない選手が、もう1チーム分以上いる。その層の厚さはMLBに匹敵する。

対照的に韓国は、一握りの選手は日本を上回る実力を有しているが、残りはかなり落ちることを露呈した。

野手の比較である。

B

日本の打線は、レギュラーと控えの差がほとんどない。これはSTATSを見ても明白だ。それに対し、韓国ではレギュラークラスでさえも全く不振のままに終わった選手が散見される。これは、通用しなかったと見るべきではないか。特に捕手である。韓国の捕手すべての打撃は、27打数2安打.074の1打点。城島を中心とする日本は.305の4打点である。韓国の捕手朴勍完(パク・キョンアン)や姜珉鎬(カンミンホ)は、自国では屈指の強打者だが、全く振るわなかった。

韓国は上位こそ強力だったが、打線にいくつか穴が開いていたのだ。日本の投手は、ここで一息つくことができた。日本の下位打線は、韓国にとって息抜きどころではなかっただろう。

日本は、数人の打者に絞り込んで対策を練り、強力打線を封じ込めることができたのだと思う。

特に、金泰均(キム・テギュン)への対策は、きわめて周到だったと思う。

   日韓5戦での金泰均の打撃成績

    3/8  3打数1安打2打点 1本塁打

    3/10 4打数2安打1打点 1二塁打

    3/18 2打数1安打 2四球

    3/20 3打数無安打 1四球

    3/24 3打数無安打 1四球

 金泰均が空を見上げるシーンが増えていったのである。

韓国の野球は、日本を手本として進化してきた(認めたがらないだろうが)。素材的には日本を上回る選手も多く出て、ある部分では日本を上回っている。しかし、総合力のぶつかり合いになれば、まだ日本に一日の長があったということだ。この関係は、NPBとMLBでも言えるのかもしれない。

STATS的にも興味深いWBCだった。

■後日談:金泰均は、すごく楽しみだが苦労するかもしれない。韓国流の野球エリートの彼は日本でいうところの高等教育を全く受けていない。日本の複雑な戦略についていけるだろうか?

日韓のWBC 投手編|WBC2009

【2009年3月24日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

確かに、WBCには二つのストーリーが並行して進行していた。一つはWBCの複雑なブラケットをよじ登って、頂点に達すること。そしてもう一つは、日韓という野球だけにとどまらない骨肉の関係に黒白をつける争い。今回のWBCのレギュレーションが決まり、3回以上の対戦することが、ほぼ間違いなくなってから、日韓両軍はそれを意識してきたはずである。

意外なほどに他の敵がもろかったために、日韓は眼前の敵と戦いながら、常に互いを意識するようになる。結果として日韓は、5回制の世界タイトルマッチを戦うことになったのだ。

これはまさに総力戦だった。そして、総合力で日本は韓国に勝った。これはSTATSを見れば明白である。

興奮冷めやらぬ今日、この事実を押さえておきたい。

まずは投手陣の比較。

P

すでにこの決勝戦前に、韓国は日本に通用する投手の数が、絶対的に不足していた。最大の誤算は、言うまでもなく金広鉉(キム・ガンヒョン)である。去年夏の日本キラーが全く通用しないことがわかって、韓国は窮地に陥った。それを救ったのが奉重根(ボン・ジョングン)だった。しかし、それに次ぐ先発投手だった柳賢振(リュ・ヒュンジン)を信頼しきれなかったために、韓国の「投」の戦略は単純になった。日本は奉の攻略に的を絞れば良くなったのである。3度目の戦いとなる今日の日本は、奉に球数を投げさせることに徹していた。

さらに、韓国は対戦の前から、日本との真剣勝負では使えない投手がほぼ決まっていた。WHIPが2.00を超す4投手は、接戦となる日本戦では使えない。さらに、対戦が煮詰まってくるとともに「冒険はとてもできない」というムードが高まりSTATS上は良くても、右の技巧派の尹錫珉(ユン・ソクミン)は出せない。そんな風に首脳陣の頭が凝り固まってきたのだと思う。結果的に、抑えの林昌勇(イム・チャンヨン)までつなぐストーリーが極めて窮屈になっていった。

日本の投手陣で破たんした投手は一人もいない。すべての投手が防御率3点台より上、WHIPも1.50以上である。原監督は、この優秀な投手陣の中でも、さらに絞り込みをかけて、結局先発の3人+杉内に信を託すことにした。同じように投手陣を絞り込んではいたが、日本の方がレベルが一段上だったといってよい。

そしてその4人の投手が期待にこたえた。藤川には気の毒だが、これが正解だったと思う。

特に岩隈は、長いイニングを破たんすることなく投げることで、日本の投手のソロバン勘定を飛躍的に向上させた。MVPは間違いなく彼だと思う。

■後日談:MVPを受賞したことと、松坂の今季の不調、無関係ではないと思う。

 

イチローが帰ってきた、遅ればせながら|WBC2009

【2009年3月24日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

そういえば、の話ではあるが、イチローは昨日あたりから空振りをしなくなった。ようやくあったまってきたというか、中身が詰まってきたのだろう。今日の最初の打席は結局点にはつながらなかったが、イチローは〝帰ってきた〟のだ。

日本は何度もチャンスを潰した。しかしそれは拙攻というより、韓国の必死の守りに抑え込まれた印象がある。岩隈の出来は素晴らしかったが、韓国は食らいついてくる。意志の力で攻め上げてくる。金泰均は徹底的にマークされたが、あとに続く秋信守、李机浩で追いついた。しかし、岩隈は明らかに力が劣る韓国の下位打線で一息つくことができる。韓国は一度も逆転できず、追いつくのがいっぱいだった。

気負いすぎのダルビッシュによって延長戦にもたれ込んだが、最後は本当に打ってほしい選手が打って、勝利にたどりついた。快勝というべきだ。10回の韓国には、もう反撃する力はなかった。

韓国は明らかにONだった。日本は実力でその韓国を下した。日韓はこれから「普通のライバル関係」にもどってほしい。

こんな試合、平日の昼間から何回もやられては体が持たない。まるで甲子園である。

グランドでは、まるで下手な観光ガイドみたいなアナウンスが、日本語で表彰式を進めている。さあ、日常生活に戻ろう!おめでとう、日本!

■後日談:消耗戦、持久戦を制したという印象、何よりイチローに花を持たせる結果に終わったことがめでたかった。

救いはスピーディな試合だったこと|WBC2009

【2009年3月23日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

USAの弱点は、一向に調子の上がらない先発投手陣だが、日本の打線は二巡目を過ぎた5回にオズワルトをとらえ、決定的な5点を奪った。米は3番ロリンズと7番デロ―サが当たっていたが、ここまで好調だったアダム・ダンとライトが戦意喪失したような打席を重ね、二人で6三振を喫した。ダンの守備は、今日も深刻だった。ライトへ少し速い打球が飛ぶとヒットである。

USAは、強力なセットアッパー陣を擁しているので、追加点は難しいかと思ったが、最終回にエラーがらみで決定的な3点を挙げた。

松坂は、よくMLB中継で見るような「普通の松坂」だった。(ゴロアウトがいつもより多かったが)悪いなりにゲームメイクをし、味方の援護を待つパターンである。イチローも、よくSEAで見るイチローのように、試合の流れとは無関係な存在だった。明日こそ主役になってほしい。

馬原とマッキャン、イチローとシールズなど、名勝負もあって、凡戦ではなかったが、アメリカベンチには「とてもかなわない」というあきらめムードが早々にただよっていた気がする。MLBプレーヤーは、この時期に全力でプレーすることはできないのではないか。

これで、明日、韓国が奉重根、柳賢振という左の2本柱を立てるのに対し、日本は岩隈、ダルビッシュと右の2本柱を対抗させることができる。ことに岩隈は、積極打法の韓国からゴロの山を築くことが期待できよう。

アメリカはプライドを傷つけられたと思う。セリグは次回のWBCを24カ国でやると発表したようだが、足元のMLBの球団、選手との利害調整をきっちりしないと、次回開催も危ういだろう。

■後日談:アメリカの選手の気持ちが切れた瞬間が分かった感じがした。アメリカの選手にとっても、口惜しいことではあったろう。

語り草になる試合を見せてくれ!|WBC2009

【2009年3月22日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

日本の野球は、MLBへのあこがれを原動力として成長してきたと言ってよい。ほぼ100年前、日本にやってきた「世界周遊野球チーム」を皮切りとして、MLB選手は来日の度に格の違いをみせつけたものだ。日本人は自らの体格、野球技術が大きく劣ることを痛感させられ、努力を重ねてきたのだ。

戦後になって、MLBの一線級の選手が定期的に試合に来るようになったが、それはあくまでオープン戦であって、真剣勝負は一度もなかった。それでも日本側が勝ち越すことは、ほとんどなかった。

2006年、第一回のWBC、第二ラウンドの日米戦は,初めて実現した両国代表の真剣勝負だった。NPBの憲法ともいうべき日本プロフェッショナル野球協約には、NPBの目的の一つを「(2)わが国におけるプロフェッショナル野球を飛躍的に発展させ、もって世界選手権を争う。」と定めている。その意味では、野球の本家であり、最高峰でもあるUSA代表との真剣勝負は、日本野球が求めてきた究極の舞台だった。この試合はタッチアップをめぐる誤審で後味の悪いものになったが、イチローの先頭打者ホームランあり、A-RODのサヨナラ安打ありで白熱した試合だった。

明日の試合は、2年前のリベンジでもあると共に、100年の歳月を経て日本がアメリカに挑む2試合目であり、NPBにとって最も重要な試合であるといってもよい。

お叱りを受けるかもしれないが、そのあとの決勝戦は、仮に日本が勝ったとしても今大会5試合目であり、日韓二か国の意地のぶつかりあいである。それはそれで有意義かもしれないが、野球史上では明日の試合こそが重たいと思う。願わくば、USAが今日のベネズエラのように、試合開始30分ほどで戦意を失ったりしないように。極端に言えば、アメリカが格の違いを見せつけて快勝してもそれはそれで納得がいく。お互いが持てる力を出し切った、良い試合を見せてほしい。

思えばWBCは、特にPool-B、C、Dであまりにもレベルの低い試合が多すぎた。録画を見るのが苦痛だった。

せめてその集大成である残り2試合が、心に残る名勝負であってほしい。100年前に大学生相手に放ったトリス・スピーカーの本塁打や、70年前の澤村榮治の快投のように、永く語り草となるような試合が見たい。

■後日談:我々は「歴史の証人」になるために試合を見ているのだ。それにつきる。

ベネズエラ、ソーホ監督はあくびをかみ殺していた|WBC2009

【2009年3月22日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

1回表。韓国2番鄭根宇のライトフライをアブレイユがポロリとやって、慌てて2塁へ送球したのを2塁でポロリとやって、それで試合は決まったようなものになった。これまでシルヴァは無失点だったが相手はオランダとイタリア、韓国戦の参考になるものではなかった。

何というだらだらした試合か。試合中にソーホ監督があくびをかみ殺すシーンが何度も出たが、彼らのメンタリティはアジア人とよほど違うのだろう。もう2回の時点であきらめてしまったのだろう。

韓国は7回途中まで尹錫珉が投げたことで、主要な投手をほぼ温存できた。柳賢振は1人に2球だけ投げさせたが、これは実戦感覚をつけさせるためだろう。決勝戦の相手は、奉重根、柳賢振というタイプの違う2枚の左腕エースと対戦しなければならなくなった。

Pool.Aとその他のPoolでは次元の違う試合をしてきたのだ、と痛感させられる。MLBの選手たちは162試合で実力を出すのであって、わずか数試合の真剣勝負では本気になれないのか、とも思えた。

■後日談:呆然とするほどのあっけない試合だった。自国にトップリーグを持たない国は、チーム編成が不可能なのかとも思った。

USA、日本戦力比較|WBC2009

【2009年3月21日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

USAとベネズエラの試合を見ていると、USAの選手の泣き言が聞こえてきそうだ。「寒くて、雨で、仲間はどんどん故障で消えていくし、非難は浴びるし、おまけにこのがらがらのスタンドだ。早くチームに帰りたいよ」。デーブ・ジョンソンはそんなチームを引っ張って、何とかここまで来た。STATSを見ても満身創痍の感がある。

U-P

U-B

投手陣は、STATSの通り、本調子とは思えない先発投手は早々に引っ込んで、あとは多彩な中継ぎ陣でつないでいく戦法である。途中から呼ばれたハンラハンとグラボウがいい働きをしている。球速もある。何回か対戦しないと投手を打ち崩せない日本の打者には、手ごわい相手だろう。クローザーのプッツまでに勝敗が決まってしまう可能性があるだろう。

野手は1次ラウンドのスタート時点とは様変わりした。配置に苦しんで、マッキャンが外野を守ったり、アダム・ダンが1塁に入ったり。ダンの1塁は本当に下手だった。チッパーの代わりにロンゴリアが呼ばれたが、彼が3塁だけを守るとは限らないだろう。ただし、打線は決して悪くはない。ロバーツ、ジーター、ロリンズ、ダン、マッキャンと非常にクレバーなメンバーがそろっている。韓国のような積極性は見られないが、MLBの本当の力を見せてくるだろう。

日本のSTATS

J-P

J-B

ここは松坂に託すのだろうが、USAには松坂を最も得意とするBロバーツ(12打数6安打)がいる。またジーター(12打数4安打)、グランダーソン(9打数4安打)、ロンゴリア(2打数1安打)なども松坂を苦手としていない。大いに不安である。立ち上がりが不安定なら、すぐにつなぐ用意が必要だろう。中継ぎ陣は非常に優秀だから、期待できると思う。ただ、藤川はSTATS上は抑えているが、明らかに球速が落ちている。終盤の逆転劇を経験したUSAにぶつけるには不安がある。

打線のカギはやはりイチローだろう。USAの先発はナの投手が多く、対戦成績は多くないが、特に第一打席でどんなパフォーマンスをするかが、チーム全体に影響するだろう。絶好調の青木に活躍の場を与えたいところだ。

USAは、松坂をじっくり見ていくはずである。特にアダム・ダンは荒い選手のように見えるが、MLB屈指の出塁率を誇る。松坂は四球を重ねて試合を台無しにする可能性もないではない。日本は、先発に決まったオズワルトを3回までに打ちこんで得点をあげ、逃げ切る戦法だろう。回が深まれば、USAが地力を発揮してくる。韓国戦とは頭を切り替える必要があるだろう。

 ■後日談:一番残念だったのは、USAが日本といい試合ができなかったこと。戦意の問題もあるが、調整の遅れが響いていた。

韓国はOFFのままだった|WBC2009

【2009年3月20日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

アジア野球ウォッチャーの佐々木さんが、韓国にはONとOFFのときがあると言っていた。日本戦はON=鬼となって、恐ろしい迫力で攻めるのが常だが、今日はついにスィッチは入らなかったのではないか。

スタメンも相当変えてきて、選手の虫干しをした感があるが、先頭の鄭根宇の速攻など、個々にはがんばりを示したものの、つながりは見られなかった。金泰均の打棒は下り坂のようだ。そして韓国投手陣は、層が薄いことが露呈された。張洹三、李在雨、呉昇桓、林泰勲という投手陣で日本打線に脅威を与えた投手はいなかった。金広鉉も打たれた。韓国打線は次回ステージを今日以外の投手を軸に戦っていくことになる。

日本の打線はここへきて、青木が絶好調となり、稲葉、小笠原、岩村と左がすべて目覚めた。これに城島、イチローが加わって流れができつつあったのだが、痛恨は村田の負傷だ。このシリーズだけでなく、シーズンまで影響するのではないか。栗原が急きょ呼ばれたが、この試合の位置づけを考えれば、痛すぎる。

この試合は韓国の実力を反映するものではない。韓国はベネズエラ戦で再びONとなって戦うだろう。問題は日本がUSAに勝てるかどうかだ。

■後日談:WBCって、こういう戦い方になるんだ、ということが理解できた。構造的には問題のある大会だった。両チームともに全力とは言い難い印象。

1回、1番の差で決まった|WBC2009

2009318日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

両軍首脳も、見る者も、日韓戦は前回同様の重苦しい投手戦になるものと予想していた。両者の戦いは、すぐに膠着してしまうのだ。だから、戦端を開いた直後に点を取った方が心理的に有利になる。先に仕掛けることができる。その思惑も一致していた筈だ。

韓国は、やや不振だった「韓国のイチロー」と呼ばれる李鍾旭を引っ込め、ほぼ同タイプの李容圭を1番に起用した。日本は本家イチロー。極論すればこの二人の1回表の打席の差で決まったと言ってもよい。鉄壁の日本の守備は、三遊間にやや不安があったが、そこも突かれた。立ち上がりのダルビッシュの不安にも付け込んで、決定的な3点を奪われたのだ。韓国のチャンスは、この1回限りだったのだが、それを貪欲にものにした。

感心したのは、金泰均が、ライト前に抜けそうな当たりを3度もゴロにしたこと。データ野球のたまものでもあろう。また、7回に日本戦で火だるまになった金広鉉をメキシコ戦に続き登板させた采配は、敬服に値する。大きなリスクを冒してでも、有力な投手を戦列にひきもどしたのだ。

日本は、投手交代のタイミングを間違えて無駄な1点をやったが、それ以上に、毎回走者を出しながら攻めきれなかった淡白さが情けない。思い切ってバットを振っていないという不満が残った。

キューバには優秀な投手はいない。打者はセぺダが怖いが、あとは恐れるに足りない。早い回に点を取れば、難しい試合にはならない。怖いのは、打者が意気阻喪して攻めきれずに自滅することだ。はじめての背水の陣。好調の選手を右左の別なく出すべき時が来たと思う。

■後日談:原ジャパンの最大のピンチだったが、個人的にはキューバは見切っている感があったので、負けることはないと思っていた。

岩隈の完勝、日本は浄化された|WBC2009

【2009年3月19日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

韓国戦でかけられた呪縛をキューバ戦で解く、日本は再びこのパターンで、瓜二つの勝利を得た。キューバは、前の日本戦で目立たないが最も良い投球をしたマヤが先発、日本は岩隈。岩隈は全く危なげがなかったが、日本も最初は体が固く、マヤを攻めあぐねた。しかし、4回、青木、稲葉の連打を受けた小笠原の一打で呪縛が解けた。センターのセスペデスのエラーではあるが、ある意味で日本の執念が落球させたような当たりだった。昨日の試合では、左打者が3安打を打ったものの封じこまれた印象があったが、今日の8安打はすべて左打者だった。

ことに、イチローの9回の3塁打に思わず快哉を叫んだ人も多かっただろう。長かったという思いだ。

岩隈の今日の投球を、3/15の松坂と比較してみよう。

同じ6回無失点だが、松坂が球数を使いながら力押しに押したのに対し、岩隈は打たせることに徹していた。AIR(フライ、ライナー)のアウトが、1つしかなかったことにそれが表れている。岩隈は5安打されているが、すべて2死から。ランナーを置いての被安打も4回だけ。全く危なげがなかった。続く杉内は、3回をパーフェクト。9つのアウトのうち4つが三振、5つがAIR(フライ、ライナー)。こうもタイプが違う投手が出てきては、キューバは手も足も出ないという感じだった。

会心の試合。開き直るようだが、明日の韓国戦の勝敗はどちらでもよい。勢いのベネズエラ、目覚めたUSA、どちらも手ごわさに変わりはない。松坂を温存して、涌井や内海などを立てても良いのではないか。打線も思い切った積極策で、韓国戦の重い空気を打ち破ってほしい。

■後日談:岩隈の圧巻のピッチングが光った。モノが違うという感じだった。それからイチローが目覚めたことでも記憶される試合だった。

WBCは救われた|WBC2009

2009318日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

9回裏、プエルトリコはUSAを2点をリードしてロメロをマウンドに送った。キャッチャーをモリーナに替え、レフトをボカチカからフェリシアーノにかえて、守備固めにも怠りはなかった。ロメロは2008年も81試合を投げているベテランだが、ビクトリーノ、ロバーツと連打されると、浮足立ち、ジーターは打ちとったもののビクトリーノが3進、ロバーツが盗塁して2、3塁。ここでロリンズを歩かせたところで投手交代。

この時点で、プエルトリコは投手が尽きかけていた。

かわったフェルナンド・カブレラは昨年BOSで22試合を投げているとはいえ、防御率は5点台、一線級とは言い難い。この投手にすべてをゆだねたのだ。次打者はユーキリス、次はライト、シュアな打者が続きに続く息の抜けない打線だ。

ユーキリスが歩いて、ライトがリオスの前に安打を落としてすべては終わった。

WBCは、2012年退任するバド・セリグが創設したが、不人気な上にここまでホスト国USAが弱いと、退任後の2013年に開かれる第三回は、中止される恐れがあったと思う。少し大袈裟にいえば、9回裏のライトの安打は、WBCを救った一打といっても良い。

USAは、追加招集された選手の活躍で首の皮一枚つながった。WBCの盛り上がりのためにも、ここから立て直してほしい。

■後日談:このWBCのハイライトのひとつ。MLBのスターたちが一瞬だけ目覚めた試合だった。一言でいえば、体を大事にしながら戦っていたのである。

韓国は考えた野球をした|WBC2009

2009316日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

柳賢振は体の切れが悪くて球数も多く、メキシコに付け込まれていた。メキシコは、1次ラウンドとは打って変わって粘り強い攻撃をした。地元に近い地の利もあってか、メキシコ勢は調子がよさそうで、特にゴンザレス弟やカントゥはシーズン中に近かったと思う。

メキシコは、MLB選手をそろえているが、投手陣の層が薄い。ペレス、カンピーヨの先発とクローザーのソリアまでの間をつなぐセットアッパーの中で、計算できるのがアヤラとレイエスしかいない。そのために打ち勝つ野球しかできなくなっている。防御率10点台、打率3割というチーム成績がそれを物語っている。

中盤以降にその差がはっきりと出てきた。韓国は、アジア野球の特色とも言うべき出塁した選手をつなぎ、送る野球をやり始めた。金泰均がいい仕事をした。

焦点となったのは7回である。カリム・ガルシアの安打で無死1塁となったところで金広鉉をマウンドにあげた。日本の初戦先発以来の登板、まだ4-2の点差で、下手をすれば前回同様試合を台無しにされる危険をはらんでいたが、韓国ベンチは金広鉉に試合を託したのである。スライダーは高めに浮き、頼りなかったが金広鉉は2人を抑えた。厳しい実戦にあえて投入することで、韓国サイドは金広鉉を戦列に復帰させたのだ。そのあと1死をとるために、同じく先発投手の尹錫珉を投げさせたのも、深い考えだ。

この裏に4点をとって、韓国は完全にペースに乗った。このあとは何も起こらなかった。メキシコは、単調な攻めになった。安打が出てもつなげるバッティングはもうしない。

韓国は試合をしながら、自チームの体制を整えていった。

また韓国とやるのか・・・という声もあるが、またやるのである。

また対戦するのだ。ほぼ互角だと思う。

■後日談:韓国と日本はプロトコルが同じという感じがする。メキシコなどラテンの国と対戦する時の攻め口が似ている。しかも、韓国はもっとアグレッシブである。人材の厚みが出れば、さらに強くなるだろう。

キューバは日本の敵ではない|WBC2009

2009316日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

レベルが違った、というのが率直な感想である。速い球を投げる、遠くへ打球を飛ばすのは野球の魅力だが、それだけでは勝てない。日本は作戦をたて、配球を考え、守り方を変える野球をしている。打つか待つかにも多くの選択肢がある。

1回の表の攻撃、日本はチャプマンを全く恐れていなかった。ごく普通にバットでとらえ、球を見切っていた。1,2回にたくさんチャンスを逸したが、それでも負ける気がしなかったはずである。キューバの投手でまともな球を投げていたのはよくボールが動いていたマヤだけだ。あとは棒球。ボールとストライクがはっきりしていた。

キューバの打線で怖かったのは、セぺダだけ。4番のぺラーザはオーストラリア戦の殊勲者だが、最晩年の竹之内を見るようで、ボールが当たる気がしなかった。

松坂は立ち上がりは決してよくなかったし、あたり損ねがヒットになっていたが、良い時の彼の常でどんどん調子を上げていった。5回、6回と相手の早打ちにも助けられた。無四球は何よりの収穫だ。

イチローは、待球ができない。1回先頭打者の2-3からのボール打ちは、一つ間違えば試合の流れを左右しかねなかった。彼だけが無安打に終わった。

よもや韓国がメキシコに負けることはないだろう。少なくとも国別対抗レベルでいえば、日韓は世界で一番高い水準の試合をしているのではないかと思えた。

■後日談:怖い打者は結構いたのだが、キューバはチーム全体での作戦がなかった。誰かが突破口を開いて攻めることが前提だった。野球思想の違いと言えるのではないか。

USAは失礼である|WBC2009

2009315日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

嫁「あんた、3/14の予定どないなってるのん?」

デーブ「その日はWBCの試合あるがな」

嫁「え?あれほどのその日はうちの子の結婚式やいうてるのに!」

デーブ「そやかて、国の代表やで」

嫁「何いうてるの!たった1.3%の視聴率しかないやないの。私の連れ子やからいうて、差別する気?」

デーブ「いや、そんな気はないけど」

嫁「それやったら、式だけでも出てよ!それからどこへでも行ったらええねん!」

デーブ「そしたら、モーニングの下にストッキングはいていくわ」

という次第で、USAの監督デーブ・ジョンソンは、今日の試合を遅刻したわけだ。(関西弁ではなかったとは思うが)

で、試合はピービーが火だるまになるのを見殺しにして、あとは無策のままに11-1コールド負けである。

USAは、ホスト国である。盛り上げるために努力をする必要があるのだ。わざわざ来てくれた国のために、最大限のやる気を見せる必要がある。観客動員も悪いし、PRも中途半端だし。選手がわがままなのは、もう諦めているが、ホスト国の監督がこの体たらく。

MLBの権威の問題でもある。主催国がここまでやる気がないのなら、世界戦略などやめるべきである。

■後日談:ずいぶんたくさんのコメントをいただいた。プレッシャーがかかり始めたのはこのころからである。

WBCの中間決算 その3|WBC2009

2009315日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

WBCがはじまってからスターダムにのし上がりつつある投手がいる。キューバのアロルディス・チャプマンである。MLBの公式ロースターには生年月日もない。実際は21歳で、キューバリーグのオルギンの先発左腕である。キューバがもっと苦戦をしたオーストラリア戦で、160km/hの速球を連発して騒がれている。

しかし、STATSを見る限り二線級だ。昨期は16試合に先発して6勝7敗、防御率3.89、74回で被安打55、三振79、四球は34、被本塁打3。コントロールもそこそこで、球威もあるのだろうが、それほどすごい投手とは思えない。

オーストラリア戦の内容を見てみよう。

CUBA-1-3

オーストラリアは1回はフリーで打たせたが、2回以降はじっくりボールを見る作戦に出ている。もちろん球威に押されての凡打や三振もあるが、ボールを見ていくうちに徐々にチャプマンをとらえていく様子がよく分かる。1、2回は6-0だが、3、4回は9-3、特にオエルティン以下の上位打線はじっくりと見てじわじわと打ちこんでいる。チャプマン自身も、途中から各打者にはボールから入るなど、考えてはいるが、ボークも記録するなど、精神的な動揺も見て取れる。4回で投球数が67球に達したので降板したが、もう一度上位打線にまわるまで投げていたら、完全にとらえられたのではないか。

おそるるに足らず、というのが印象である。早打ちのイチローよりは、2番以降の打者がじっくり攻めることで活路が開けるのではないか。基本は待球。待っているうちに良い球が必ず来るだろう。このタイプは乗せると怖いので、早い回に攻め込むことが必要だ。キューバで怖いのは、ベテランの投手陣の方だ。この投手からどれだけ得点できるかだといってよいだろう。

■後日談:チャプマンを見て思ったのは、いい投手と速い球を投げる投手はイコールではないということだ。2010年、MLBでチャプマンは通用するだろうか。

WBCの中間決算 その2|WBC2009

2009315日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】 

キューバの打線は、打率1位、本塁打2位。録画を見ていても、とにかくよくヒットが出ている印象だ。前回でもふれたとおり、これはフォロソルと言うやたらとボールが飛ぶ球場のことを割引して考える必要があるが、もう少し、その中身に踏み込んで打線を見てみたい。

 CUBA-1-1

特徴的なのは、ほとんどが右打者であること。左はマジェタとスイッチヒッターのセぺダ、控えのマルティンだけ。日本の先発投手は右が3枚だからこれは少し有利かもしれない。キューバリーグで20本以上の本塁打を打っている、ペラサ、グリエル、セスぺデス、デスパイネは好調だ。そして、このチームは捕手の打撃が絶好調なのだ。ペラサも含め、捕手は3人ともベテランだが、打棒も凄まじい。これが、投手のリードに好影響を与えていることだろう。

キューバが3試合で打った本塁打は11本。これを録画を見ながらチェックした。

CUBA-1-2

ほとんどの本塁打が両翼100mのフォロソルのフェンスぎりぎりの当たり。特に投手陣が弱体の南アフリカ戦は、相当割り引いて考えるべきだろう。しかし、次の2戦で打った5本塁打は実に有効に機能している。特徴としては、ほとんどがバッターカウントで打っていること。2ストライク以降の本塁打は1本しかない。要するに早打ち、好球必打でどんどん振ってくるのだ。その上、11本中8本が流し打ちかセンター返し。ライナーが多いのだ。ほとんどテークバックをとらずに最短距離で素早くバットを振っている。右打者が多いことを考えれば、ライトイチローは相当忙しいのではないか。

この3試合でMLBの一線級の投手とはほとんど当たっていないことを考えても、キューバ打線を過大評価するのは禁物だが、早打ちで引っ張らずに当ててくるという特徴に、松坂がどのように対応するか。できれば球数をあまり使わずにばったばったと切ってもらいたいと思う。

■後日談:このWBCの日本キューバ戦は、名勝負の一つだと思う。日本の準備がキューバを上回っていた。

WBCの中間決算 その1|WBC2009

2009314日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】 

昨日まででWBCのラウンド1が終わった。J-SPORTSの録画を今朝まで見とおした。正直言って凡戦も多くて、苦痛に近かった。何でこんなに守備が下手なんだ、コントロールが悪いんだと叫びたい試合もあった。また、ラウンド2進出が決まったチーム同士の試合は、明らかに調子を落としているケースもあった。

ともあれ、STATSが出そろった。以下は各チームの投打の成績。

WBC-1-1

衝劇的な数字だと思う。野球は投手によってきまるというが、防御率1位は敗退したドミニカなのだ。もちろん、オランダに連敗したから敗退したのだが、オランダの打率は出場16国のうちで最下位。実力は数字に如実に表れているのだが、勝敗は別だったということなのだ。

ドミニカの投手陣は、抑えても抑えても見方が点を取ってくれない中で投げ続けた。ペドロだけでなく、みんな頭に来ていただろう。オランダの投手陣は好投していたが、チャンスはなかったわけではない。16球団最多の30もの四球を提供しているのだから。ドミニカ打線は湿ってはいたが、それ以上に拙攻だったということだ。

日本は防御率でも打率でも良い位置につけている。堅実そのものだ。

キューバは打率で断トツの1位、本塁打2位、防御率も良いし、これは強そうだ、と思いがちだが、この数字は相当割り引く必要がある。

Pool別、つまり球場別のSTATSを見ると如実に分かる。

WBC-1-2

TV中継でも感じたことだが、4つの会場で行われていた野球は全く別物なのだ。Pool-Bのメキシコ、フォロソルは海抜2000mの高地にあり、空気が薄いために両翼100mのスタジアムをボールはどんどん超えていく。1試合平均4.7本の本塁打、平均のOPSが1点を超える超バッターズスタジアムだったのだ。キューバの打撃はこの球場の特性を生かして、素早いスイングでライナーを飛ばした結果だ。確かに投手陣は侮れないが。

反対に、ドミニカが悪夢を見たPool-Dのヒラムビソーンは、ピッチャーズスタジアムだったことが分かる。

こうしてみると、プエルトリコのバランスの良さが目に付く。わずか数試合ずつのSTATSだから、決定的なことは何も見えないが、これまでと異なった球場で、各チームがどんな戦術を取るかが大きなポイントになるだろう。

■後日談:キューバの成績が実力を反映していなかったのは後に証明された。

ペドロとバーニーのWBC|WBC2009

【2009年3月12日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

ドミニカはいったいどうなってしまったのだろう。オランダとのリターンマッチの延長11回、オランダ、デカスターの強いゴロはファーストのアイバーのミットに収まったように見えたが、まるで“素人さん”のように弾いてしまい、その瞬間にドミニカは「油断」と「迂闊」の団体さんであることを、世界中に知らしめた。

ベンチはさぞ呆然としていただろうが、その中にあって一人憮然としている男がいたはずだ。ペドロ・マルチネス。契約更改年にだけしゃかりきで働くと陰口をたたかれながらも、数字を残してきたこの男が、2008年はNYMで5勝6敗ERA5.61に終わり、折からの経済危機もあって、FAのまま年を越してしまったのだ。彼はおそらく1次ラウンドなどは軽く勝ち上がって、二次、そしてファイナルラウンドで居並ぶ強打者をばったばった倒して、どこかの球団のオファーをもらい、開幕に間に合わせるつもりだったのだろう。

そういう具体的な目的があったから、オランダ相手に委縮するはずなどなかった。

 3/7 オランダ第一戦 

5回から登板

   9番ステイシア   遊ゴロ  1死

   1番キングサーレ  バント安打 

   2番スクープ    3ゴロ併殺 3死

  6回

   3番サイモン    3小飛 1死

   4番ハルマン    三振  2死 

   5番デカスター   三振  3死 

  7回

   6番アドリアーナ  中飛  1死

   7番エンゲルハルト 三振  2死

   8番ジャンセン   三振  3死

  3/10 オランダ再戦

    5回から登板

     5番エンゲルハルト 中直  1死

     6番アドリアーナ  中飛  2死

     7番バンクルースター三振  3死

    6回

     8番ジャンセン   3小飛 1死

     9番デュールスマ  捕ゴロ 2死

     1番キングサーレ  死球

     2番スクープ    三振 3死

    7回

     3番サイモン    左飛 1死

     4番デカスター   2ゴロ 2死

     5番エンゲルハルト 3小飛 3死

 

まるで、料理屋の親方が賄いメシでも作るような無造作さで、オランダの打者をなで斬りにしていった。(オランダでトリックスターのような役割をしたキングサーレを2回とも取り逃がしているのは興味深いが)。

飯の種を探すために野球をしているペドロにとって、オランダのような半端な連中は眼中になかった。「顔」で抑えていた。

オルティーズをはじめとする他の連中が次々と、オランダに打ち取られ、ドミニカのWBCがあっけなく終わったとき、ペドロは叫んだのではないか?

「俺の商売をどうしてくれる!」

 一方で、2006年、打率.281、11本、61打点をあげながら、NYYから契約を解除され、そのまま引退状態になったバーニーウィリアムスも、プエルトリコ代表として、再起を目指していた。足を故障したとの情報もあったが、練習試合から打席に立ち、元気さをアピールしていた。

しかし、WBC一次リーグが始まると、彼はもはや現役の選手ではないことを露呈した。オランダ戦の3回、ベルトランのシングルで二塁から長駆ホームインを狙ったバーニーは、キングサーレの返球に易々とアウトになった。まるでスローモーションのような走り。1番打者としてはあまりにも悲しかった。次の打席でポップフライを上げると、その試合はお役御免になった。そして、再びのオランダ戦では、イバン・ロドリゲスの代打として登場するも、安打は出なかった。

3試合で4打数ヒットなし。チームはこの41歳の大選手に気を使っているが、心なしか体は緩んでいるし、目に覇気はない。

バーニーもWBCを踏み台にして復帰を図ったのだろう。しかし、現実の厳しさを身をもって感じたのは彼自身ではないだろうか。

彼にはアメリカラウンドがある。華やかな舞台で、もう一度「51番」の輝きをとりもどしてほしいと切に願う。

■後日談:バーニーは結局WBCでの不甲斐なさであきらめがついたのではないか。ペドロはこの活躍で再び職を得て、ワールドシリーズまで行く。松井秀喜の大活躍の序章は、WBCでのペドロの孤軍奮闘だったと言えなくもない。

ドミニカ正気を失い勝機を失う!|WBC2009

【2009年3月11日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

11回表、ライトのキングサーレにエラーが出て、レイエスが長駆ホームインした時は、その1点が10点くらいに思えた。昨日のプエルトリコ戦に続いて、オランダは惜敗するか。順当な結果だが。

で、その裏、ドミニカが投じた投手はその名も「マーモル」。1回を守る切るに違いないと思ったが、代打デヨングに2塁打を食らう。スミスのゴロの間にランナー三進、で、次打者、痛恨のエラーをしたキングサーレの打球がホセ・ギ―エンの前で弾んで同点。そして、シャリオンの打席でマーモルが牽制球エラー、キングサーレは3塁へ、シャリオン三振で2死、強打者サイモンを敬遠、1、3塁となって運命の打者は前回大会でも活躍したデカスター、ボール、ファウル、ボール、ボール、空振りのあとの強い打球が1塁アイバーのエラーを誘ってさよなら。

何でこんなとこで甲子園やってるんだ!と叫びたくなるような試合。ドミニカは、完全に正気を失っていた。

打撃も投手もドミニカの方が完全に勝っていたが、守備の面ではオランダが上だったのだ。もしペナントレースで両チームが10回戦えば、おそらく9回はドミニカの勝ちだろう。しかし、一発勝負の総力戦では、その常識は通用しないのだ。最後まで、ドミニカはこの現実を把握できないうちに敗れ去った。

見えてきた、WBCは、インターナショナル甲子園だ!山彦打線も、11人野球も、ハンカチ王子も何でもありなのだ。

■後日談:オルティーズの暗さが目立っていた。結局、作戦なき素材集団が、必死で頭を使った素人集団に完敗したのだ。必然の負けである。
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広尾晃と申します。

ライター稼業をして、かれこれ35年になります。

2009年1月に、SportsNaviで「MLBをだらだら愛す」というブログを開設、12月には「野球の記録で話したい」を開設。多くの皆様にご愛読いただきました。2011年11月、livedoorに引っ越し。基本的な考え方は変わりません。MLB、NPBの記録を中心に、野球界のことをあれこれ考えていきたいと思います。多くの皆様に読んでいただきたいと思いますが、記録や野球史に興味と尊敬の念を持っていただける方のサイトにしたいと思います。特定の球団のファンの方も大歓迎ですが、「ひいきの引き倒し」的な論調には与しません。

広尾晃はペンネーム。本名は手束卓です。ペンネームは、小学校時代から使っていました。手束仁という同業者がいるので、ややこしいのでこの名前で通しています。ちなみに手束仁はいとこです。顔もよく似ています。
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