【2009年3月10日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】
大阪の下町の高校に通った私は、コリアンの香りの中で十代を過ごした。総連系、民団系、そしてパンチョッパリ(悪い言葉だ!)と呼ばれたハーフの子。そんな友人の家に招かれて食事をよばれたことがあるが、オモニは限りなく親切で、プルコギだの、チャプチェだの、オイキムチだの、目の前にずらっと並べて「あれ食え」「これ食え」、高校生だがビールも注がれて目が回りそうだった。韓国の人は、好意を物量で表すのである。
韓国チームの主軸、金泰均、李大悟、そして主戦級の左腕、柳賢振などの体つきを見ていると、そういう濃密な人間関係の中で、腹いっぱいに食って育ったのだろうと思ってしまう。彼らのような体形は、NPBではほとんどいない。西武の中村やWBC代表の村田などは、肥満とはいってももっと柔らかそうだ。
韓国の巨人たちは固太りで、下半身がどしっと重たそうで。いずれも公式発表は、100kg前後となっているが、120kgはあるんじゃないかと思う。特に李大悟はスポーツマンとは思えない。顔だけはほっそりして身体はずんぐり。中田翔が着ぐるみを着たような感じだ。日本なら思いきり搾られるのではないか。
そういう連中が、試合ではよく動くのだ。柳賢振は台湾を寄せ付けなかった。力感あふれるフォームから切れ味の良い球を投げ込んだ。李大悟は柔らかいバッティングを随所に見せた。そして金泰均の勝負強さ。ここぞというときに、恐ろしい形相でバットを振る。あんな顔は、日本では奈良の古寺の神将像くらいでしか見かけない。
それだけではない。この大男たちは塁上でもじっとしていない。ことに金泰均である。彼は昨日の日本戦の4回、レフト前に先制タイムリーを放ったが、離塁が大きく捕手城島と遊撃中島の連携プレーに刺された。それに懲りることなく7回、2塁打で出て続く李大悟のショートゴロで金賢洙が本塁突入をしてアウトになる間に3塁を陥れようとして刺された。何という無鉄砲な走塁。コーチの指示はよく見えなかったが、次の塁に進みたい、という火のような思いが生んだ暴走の様に思えた。
日本の野球人は、この暴走を嗤うだろう。しかし、韓国の強さはここに端的に表れている。結果を恐れない、責任を問われることを恐れない激しさ、強さ。攻める姿勢。(そういえば金泰均は、交代した投手の初球をフルスイングしていた)よく韓国、朝鮮の人々の情念は、「恨」という恐ろしい言葉で表わされるが、その激しさが大舞台になればなるほど奇跡を呼び込むような気がする。たとえ手が届かないように見えても、思いの限り跳躍しなければ、果実に触れる可能性は皆無なのだ。
私は、昨日の金泰均、中国戦の途中から出てきて快打を飛ばした李大悟、台湾戦で気迫を見せた柳賢振などに、日本人にはない激しさ、ひたむきさを感じて心を揺さぶられた。ファンになってしまった。
日本の「つなぐ野球」とは、つまるところ誰も責任を取らない、責められるような場面を作らない野球ではないか。昨日の8回、安打で出たイチローを、チームで一番当たっている中島に送らせたジャパンの野球は、何を目指していたのか。あれで「説明責任」を果たしたつもりなのか。「やるべきことはやった」という言葉の裏には、「それ以上はしなかった」というレトリックが隠されてはいないか。
韓国料理に欠かせない唐辛子は、実は日本からもたらされたものだ。日本ではほどほどの辛さだった唐辛子だが、朝鮮半島に渡って激しい辛さになったという。日本と韓国の気性の差は、土壌や風土に根ざすものなのかもしれない。
■後日談:金泰均が日本に来ることになった。ぜひ、ナマで見てみたいと切に思っている。
大阪の下町の高校に通った私は、コリアンの香りの中で十代を過ごした。総連系、民団系、そしてパンチョッパリ(悪い言葉だ!)と呼ばれたハーフの子。そんな友人の家に招かれて食事をよばれたことがあるが、オモニは限りなく親切で、プルコギだの、チャプチェだの、オイキムチだの、目の前にずらっと並べて「あれ食え」「これ食え」、高校生だがビールも注がれて目が回りそうだった。韓国の人は、好意を物量で表すのである。
韓国チームの主軸、金泰均、李大悟、そして主戦級の左腕、柳賢振などの体つきを見ていると、そういう濃密な人間関係の中で、腹いっぱいに食って育ったのだろうと思ってしまう。彼らのような体形は、NPBではほとんどいない。西武の中村やWBC代表の村田などは、肥満とはいってももっと柔らかそうだ。
韓国の巨人たちは固太りで、下半身がどしっと重たそうで。いずれも公式発表は、100kg前後となっているが、120kgはあるんじゃないかと思う。特に李大悟はスポーツマンとは思えない。顔だけはほっそりして身体はずんぐり。中田翔が着ぐるみを着たような感じだ。日本なら思いきり搾られるのではないか。
そういう連中が、試合ではよく動くのだ。柳賢振は台湾を寄せ付けなかった。力感あふれるフォームから切れ味の良い球を投げ込んだ。李大悟は柔らかいバッティングを随所に見せた。そして金泰均の勝負強さ。ここぞというときに、恐ろしい形相でバットを振る。あんな顔は、日本では奈良の古寺の神将像くらいでしか見かけない。
それだけではない。この大男たちは塁上でもじっとしていない。ことに金泰均である。彼は昨日の日本戦の4回、レフト前に先制タイムリーを放ったが、離塁が大きく捕手城島と遊撃中島の連携プレーに刺された。それに懲りることなく7回、2塁打で出て続く李大悟のショートゴロで金賢洙が本塁突入をしてアウトになる間に3塁を陥れようとして刺された。何という無鉄砲な走塁。コーチの指示はよく見えなかったが、次の塁に進みたい、という火のような思いが生んだ暴走の様に思えた。
日本の野球人は、この暴走を嗤うだろう。しかし、韓国の強さはここに端的に表れている。結果を恐れない、責任を問われることを恐れない激しさ、強さ。攻める姿勢。(そういえば金泰均は、交代した投手の初球をフルスイングしていた)よく韓国、朝鮮の人々の情念は、「恨」という恐ろしい言葉で表わされるが、その激しさが大舞台になればなるほど奇跡を呼び込むような気がする。たとえ手が届かないように見えても、思いの限り跳躍しなければ、果実に触れる可能性は皆無なのだ。
私は、昨日の金泰均、中国戦の途中から出てきて快打を飛ばした李大悟、台湾戦で気迫を見せた柳賢振などに、日本人にはない激しさ、ひたむきさを感じて心を揺さぶられた。ファンになってしまった。
日本の「つなぐ野球」とは、つまるところ誰も責任を取らない、責められるような場面を作らない野球ではないか。昨日の8回、安打で出たイチローを、チームで一番当たっている中島に送らせたジャパンの野球は、何を目指していたのか。あれで「説明責任」を果たしたつもりなのか。「やるべきことはやった」という言葉の裏には、「それ以上はしなかった」というレトリックが隠されてはいないか。
韓国料理に欠かせない唐辛子は、実は日本からもたらされたものだ。日本ではほどほどの辛さだった唐辛子だが、朝鮮半島に渡って激しい辛さになったという。日本と韓国の気性の差は、土壌や風土に根ざすものなのかもしれない。
■後日談:金泰均が日本に来ることになった。ぜひ、ナマで見てみたいと切に思っている。