わずかな期間で、これほど評価が下がった選手も珍しい。マット・マートンは今、ファームで無聊をかこっている。昨日は3打数1安打だった。

この選手はMLBでは、1軍半という扱いで、一時期は将来を嘱望されたが、MLBに定着することが出来ず、日本へやってきた。
ミートのうまい中距離打者。NPBで成功しそうなタイプではあった。1年目はフル出場して.349、イチローを抜く214安打のNPB最多記録をマークした。
ベンチで、NPB投手についてのメモをするマートンの姿が何度もテレビで紹介されたが、阪神は本当に良い外国人選手を獲得したと評判になったものだ。
2年目は、コーチに打撃フォームをいじられたために、春先は低迷したが、統一球で多くの打者が軒並み成績を下げる中で、後半戦には完全に調子を取り戻し、2年連続3割、最多安打をマークした。
しかし、この年5月26日、マートンは守備でひどいボーンヘッドをした。千葉ロッテ戦で、アウトカウントを間違えて、捕球した右飛をスタンドに投げ込んだのだ。
このときは沼沢正二球団本部長が、マートンを「事情聴取」。南球団社長からは「本人は大反省していた」というコメントが出された。
このころから、集中力に欠けるプレーがしばしばみられるようになり、新聞にはマートンに対する否定的な記事が載るようになった。
そして今年、打率は春先から低迷、凡打して一塁に全力で走らなかったり、緩慢な守備でピンチを招いたりするケースが多くみられるようになった。
そして、8月17日のヤクルト戦、緩慢な左翼守備で二つの飛球を安打にしたマートンを和田監督は試合途中にベンチに下げた。そして試合後のミーティングで、マートンを叱責した関川外野守備走塁コーチと口論になり、マートンは選手登録を外され、二軍落ちしたわけだ。
MLBで将来を嘱望されながら、肝心な時に結果を残さなかったことを見てもわかるように、神経は太い方ではなかったのだろう。まじめで熱心だが、思い込みが強く、柔軟な思考ができなかったのは事実だろう。
日本に来た当初、大活躍をしてファンに受け入れられたときは良かったが、打てなくなったりボーンヘッドをして非難されたりすると、気持ちが萎縮して、負のスパイラルに陥るようなところがあったのだと思う。
しかし、同時に「日米の文化の差」「責任の取り方の違い」が、マートンをかたくなにしたことも考えられると思う。
今年の5月21日、4回5失点で降板したテキサス・レンジャーズ=TEXのダルビッシュは、ベンチに戻るとロン・ワシントン監督に「Sorry」と誤った。すると指揮官はダルに「野球ではこういうときもある。絶対に謝るな」といったという。
アメリカでは、MLB選手は一個の野球人として尊敬を受ける。ダルがわざと打たれるような投球をしたのならともかく、頑張ったうえで失敗したのなら、それを謝罪する必要はない。ダルは教育課程の若者ではなくMLB選手だ。反省は自分自身ですればよいのだ。また逆に言えば、謝罪したところでダルの責任は軽くなるわけではない。指揮官は、その選手を使うことが不適切だと思えば、黙ってレギュラーやローテーションから外せばよいのだ。
自己責任が徹底された社会ならではの考え方だ。見方を変えれば、非常にシビアでもある。
日本では、失敗をした選手を監督やコーチが叱責することはふつうである。コーチなどはそれが仕事のような面もある。また、失敗した選手がチームや指揮官に謝るのも普通だ。
しかし、それは一個の完成された野球人であるMLBプレイヤーにとっては、屈辱と映っているかもしれない。済んだことであり、わざとではない過失について謝罪するのは、理解できないことかもしれない。
日本という国は、基本的に同質社会であり、同じ顔ぶれが角を立てることなくずっと仕事をするのがベースだ。失敗をして謝るのは、円満に仕事をするためのマナーだろう。
しかし、諸事実力の世界であるMLBでは、失敗はした時点で「謝って済む問題ではない」し、結果責任が軽くなるわけではない。
昨年春先から、マートンはコーチにフォームをいじられた。また、ミスをすると指導者やフロントから叱責を受けた。これは、完成された野球人としては屈辱だったかもしれない。そういうことが積み重なって、「ここは俺のいる場所ではない」と思うようになったのかもしれない。
阪神という球団は、負けが込むと犯人捜しをし始める悪癖がある。マートンなどはスポーツ紙に「A級戦犯」の名前が躍る日が近いだろう。つまらないことである。
マートンの数字の下落、失策は、間違いなく本人の責任だ。日米の文化の差を乗り越えられなかったことも、自身の線の細さゆえだ。
しかしながら、NPBの各球団も、もう少し外国人選手の使い方が上手になっても良いと思う。
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コメント
コメント一覧
この部分が気になるんですが、マートンのフォーム改造はマートン本人自分が(MLB復帰を視野に)大きいのを打ちたくて始めたと認識していましたが…。
それにしても、もう阪神はダメですわぁ
ある球団の近年ドラフト
2009 1位 岩本貴裕 2位 中田廉
2010 1位 今村猛 2位 堂林翔太
2011 1位 福井優也
2012 1位 野村祐輔 2位 菊池涼介
かたや阪神は…。
今の阪神を立て直せるのはノムさんしか居ないと思います。
勝敗は度外視して「当たり前の野球」が出来るチームにして欲しいです。
しかし結果が出なくて、和田片岡両打撃コーチは一年目のフォームに戻すように何度も説得した。その際に口論というか激しい議論になることがあった。
新聞で得た情報ではこういう風に認識していましたが…。
メンタルだって「故障」です。身体の故障と同じなんですけどね…。MLBではしっかりとその考えがあるのでsすが…
走力がない
守備力がない
MLBではここを指摘されて、戻れなくなってしまい、メンタル面に緩みが出たんでしょう。
なにより、お笑い守備を繰り返しながら、レフトに居座る老害がヤル気を削いでいったのは言うまでもありません。
マスコミはA級戦犯として上げるのは、まず新井兄でしょう。その次には上げるかもしれません。真の戦犯は第二次大戦の時同様、名前は上がりませんが。
本人は一軍復帰に必死になっているようです。
この件よりも、阪神タイガースに巣食う暗部を指摘したほうが興味深いと思いますが。
が事ここに至ってはどうでもええ話ですね・・・
二年連続最多安打の選手を簡単に解雇するなんてあり得るんでしょうか?もしマートンが日本人選手ならまず無いですよね(だったらもっと先に解雇されるべき選手がいる)
トレードには腰が重いのに助っ人は使い捨て。変な文化です
できれば他球団に拾われることなくアメリカに帰ってもらった方が素直に応援できるのですが(MLBに上がれるかどうか分かりませんが・・・)、オマリーやメイの時みたいに他球団で優勝に貢献してタイガース首脳陣及びフロントの無能ぶりをアピールしてほしいとも思います
ただここまでネガティブ報道されると他球団も食指を伸ばしにくいですかね・・・メイに手を出した勇気あるジャイアンツならやってくれる!?
先日のオリンピックで柔道の選手がメダルを取れなくて、申し訳ない。と謝っていましたが、何か違和感がありました。それって謝罪が必要なのかな?全力を尽くした結果なら、悔しくはあっても、謝罪は必要ないのではないでしょうか。相手の選手にも若干失礼な気がします。
打者の子がボール球を空振り→監督「なんでボール振るんだよ!!」
打者の子がストライクを見送り→監督「なんでストライク見逃すんだよ!!」
何故そうなるのか、追及することは改善のために大事ですが、正直このケースは「単に選球眼が悪いだけ」だと思いますし、選球眼向上のためにできることを教えてあげるとか「今はとりあえずなんでもかんでも振っていい」と言ってあげるとかした方がまだええ結果に繋がるのでは、と思いました
おそらくマートンも「なんであんなミスをするんだ」と言われたのだと思いますが、そうではなくて「今後そういうミスをしないようにするためにこうしよう」と言ってあげた方が良いのでは、と思いました
これは自分が仕事で人に指示する立場になって学んだことですw
マートンのパフォーマンスの問題もありますが、やはり外国人選手に対してイニング途中での懲罰交代はまずかったかな、と。MLBでは考えられないやり方ですから、カッとなってコーチといざこざをおこしてしまったのだと思います。
しかし、くっち~様ご指摘の通り、阪神には、内部からも外部からもほとんど批判されることのない「聖域」が存在しています。
その「聖域」の存在を考えた時、自らが公平に扱われていないと感じることもあったのではないでしょうか。
それを観ると「日本の野球をリスペクトし、愛してくれているんだなぁ」と思い嬉しくなります。
例えば、宮本が2000本安打を達成したときにミレッジとバレンティンがそろって宮本にお辞儀してたのを見てやはり嬉しく思いました。
しかし球界では成績の落ちた助っ人はすぐつかいすてにします。
ラミレスの引退時に日本球界がどういう扱いをするのか注目したいと思っています。
来年、強引に獲得に行ったらどうでしょうか。
ジョージア工科大学の未修得単位を取りに行ったほうがいいような気がしますが。
気持ちさえ立て直すことが出来れば、まだまだ頑張れると思うのですが。
復活して欲しいですね。
解雇となると,違約金を払う必要があるのでは?
ひょっとして,違約金狙いの怠慢プレー・・?まあ,再就職にも支障がでるしそれはないか.
阪神の外国人選手に対する扱いは,バースが去った頃から変わってないように思います.
マートンも去年,それを思い知っているだけに,契約を延長した自身の責任でもあるでしょう.
あと,「聖域」さんは戦力になっていると思いますよ!年俸に明らかに見合っていないだけで.
マートンの二年契約、二年目は球団に選択権があったかと思います
残念ですが・・・
本当ですか!マートンも良くそんな条件呑みましたね.
もうMLBには戻れないと覚悟してたのでしょうか.
投手ではMLBに戻って成功した例はルイスを筆頭にそこそこありますが,野手ではあまり思いつきません.
ぱっと思いつく範囲だとソリアーノ,その前はフィルダーやステアーズあたりまで遡ってしまいます.
ソリアーノもステアーズも向こうに行ってから開花した印象ですし、日本で実績残してMLB返り咲きは実質フィルダーくらいなんですかね・・・
レロン・リーがヤクルトで34ホーマー、97打点をマークしたのに当時の広岡さんは「リーはチャンスに打てない」で解雇ですからね。
理不尽この上なしです。
岡田、角中、サブロー、大松、荻野、伊志嶺とマリーンズの外野は粒が揃いすぎています。
今更不要でしょう。
故障者だらけのスワローズ、故障の多い牧田がいるイーグルス(ただし、ここは内野手の使い回しをする)、和田が衰えた時のドラゴンズ、谷と高橋が衰えた時のジャイアンツ、行けるとすればこれぐらいでしょうが、同一リーグ、特に行かせてはならないチームが多いです。
マートンは一塁で使えませんか?福浦と併用,あるいはDHでホワイトセルと併用とか.
スワローズはバレンティン,ミレッジ,バーネット,ロマンと外国人枠をきっちり埋めてますから,来年はないんじゃないかな,と.
ドラゴンズも平田,堂上,野本あたりを使っていきたいところ.
となると,やっぱりあのチームですかね・・・