WBCへのNPB側の参加が急転直下、決定した。NPBがMLB側に交渉をして譲歩を勝ち取ったのではなく、選手会を説得した結果だと思われる。
譲歩したのは、MLBではなく讀賣新聞社だったようだ。
前回までのWBCの日本ラウンドは、讀賣新聞社が興行権をもっていた。同時に日本選手側のスポンサー権、ライセンス権も讀賣側が握っていた。

つまり、ビジネス面で見れば、WBCを主催するWBCI(MLB、MLB選手会が共同出資)との交渉相手はNPBや選手会ではなく、讀賣新聞社だったのだ。日本企業のスポンサーフィー、ライセンスフィーは、讀賣側を通じてWBCに支払われていた。

今回、讀賣新聞社はWBCI側と協議をして、自分たちが持つスポンサー権、ライセンス権の一部をNPB,選手会側に譲渡することを認めさせたようだ。

WBCI側としては、取り分は変わらない。全く譲歩していない。もともと讀賣側が得ていたマージンの一部が、NPB側に譲られるということだ。

具体的には、代表選手のユニフォームにつけるスポンサー権などがNPB、選手会側に譲渡されたという。

「侍ジャパン」の商標登録、スポンサー権、ライセンス権の話は、この件とどうかかわっているのかはわからない。ただ「侍ジャパン」の常設化についても、WBCIは承認したようだ。

今回の報道で、「資金が確保できた」と言っているのは、実質的には「侍ジャパン」の創設ではなく、讀賣新聞が握っていたWBCのライセンスフィーの一部がNPB、選手会側に入ることが確認されたからだろう。



■NPBの課題

1)結局、NPBはMLBとまともな交渉はできなかった。讀賣新聞にお願いして、譲歩してもらっただけである。相変わらず子供の使いのような無能さだ。NPBは、このままMLBには全く歯が立たない状態でいいのか。MLBの世界戦略は、NPBの思惑をよそに、どんどん進行するだろう。そんなときに、まともなパートナーとはみなされていない現状のNPBは、唯々諾々と従う以外に手がない。

今回は、讀賣側の譲歩もあって、NPB選手会を説得することができたとしても、MLB側がさらに新しい手を打ってきた時に、NPBはまた言いたいことも言わずに従うのか。NPBはMLBのパートナーとなるために、まともな交渉能力を身につける必要があろう。

2)「侍ジャパン」は、見方によれば、「ただの口実」のような気もするが、ひとたび世間にここまで大きく打ち上げたからには、しっかり運営しなければならない。

サッカーの「日本代表」は、ワールドカップ以外の大会でも有力企業が常時スポンサードしている。その代表がキリンだ。「キリンカップ」という名前で強豪国の代表チームを招いて親善試合を行い、多くの観客を集めている。選手たちもワールドカップに向けてアピールする好機ととらえているし、キャップが増える(国際大会に代表として出場する)ことを極めて名誉だと考えている。欧州組などが参加できないこともあるが、概ねトップクラスの選手をそろえることができている。

NPBは「侍ジャパン」を組織して、どこと戦おうと言うのか。どんなイベントをやろうと言うのか。これまでNPBはアジアシリーズを2005年から運営したが、観客動員もできず、ろくなスポンサーを集めることもできず、ついには投げだしてしまっている。

仮に「侍ジャパン」のイベントを挙行し、アメリカ代表、韓国代表などを招聘することができるとしても、花相撲ではなく、大スポンサーが金を出しても良いというような試合、イベントを創出する手腕があるだろうか。そのために、選手を供出することを、各球団に認めさせることができるのか。

あのオールスターゲームでさえも視聴率は低迷し、毎年、スポンサー獲得に四苦八苦しているのだ。

NPBは事業担当の専門部局設置を決めたというが、その程度のことで、「侍ジャパン」を成功させることができるのか。

もし「侍ジャパン」がオープン戦に毛が生えたようなちんけなものだったとして、スポンサーはつくのだろうか。世間に言い訳はできるのか。

3)選手会の新井貴浩会長は、加藤コミッショナーがWBCへの参加を呼び掛ける中で「震災もあったのだし」と言ったことに強く反発した。

NPBは自身の責務であるWBCIへの交渉、説得をろくにしないで、あたかも選手会が震災復興に非協力的であるかのような発言をした。

実際には昨年、NPB側が讀賣の専横に負けてセリーグ開幕を見切り発車的に進めようとしたときに、選手会は震災復興のためにも球界は一致団結しようとアピールし、セパ同時開幕を実現させた。震災復興に対して選手会側が尽力したのは、日本中が認めていることだ。

加藤コミッショナーの発言で、NPB側に対する選手会の不信感は、さらに強まったと思われる。

4)また、NPBは、今回、讀賣新聞社に大きな借りができた。今後のNPB運営で、讀賣側の発言権が大きくなるのは必至だと思われる。

■選手会

1)選手会側は、単に「金がほしかったのか」という結論になりかねない。どういう形であれ、オールジャパンに見返りが得られるなら、それでいいのかと言うことになる。
選手会は、MLBの選手たちの多くがWBCに出場しないか、出場してもフルでプレーしないことに不満を抱いていたはずだが、そのことへの申し入れはしなくていいのか(したのか?)。金さえもらえればそれで良かったのか。

2)「侍ジャパン」の創設に賛成したのなら、選手会は「侍ジャパン」の試合を真剣勝負にすることに、協力しなければならない。試合間際になって故障で選手が交代したり、怪我をしないように手抜きのプレーをしたり、意識の低い状態では、ファンもスポンサーも愛想づかしをするだろう。スポンサーがしっかり付くのは、日本国中が注目するような真剣勝負の試合をするのが大前提だ。

●結論
NPBは、「侍ジャパン」の創設に伴って、大幅に機構を改革すべきである。また、加藤コミッショナーは、全く機能しなかった責任を取って退陣すべきだ。

選手会は「侍ジャパン」を成功させる責任をNPBとともに有している。「侍ジャパン」の試合が、公式戦と同格だという認識を全選手に植え付ける必要がある。

日本のすべての野球ファンの前で、「侍ジャパン」の誕生が宣言された。WBCは一時的なイベントだが、「侍ジャパン」は常設だ。
いい加減な運営は、NPB、選手会の未来を限りなく暗くする。両者ともに、重い責任があることを認識すべきだ。


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