堤 哲『国鉄スワローズ1950-1964』





出版社がいい。「交通新聞社」である。鉄道関係者と鉄オタしか相手にしていない出版社から出た、国鉄スワローズ史。ある意味で決定版と言ってよいだろう。

国鉄は、プロ野球創生以前から野球が盛んだった。野球部の歴史は130年にも及ぶ。プロにも多くの野球人を供給しているが、2リーグ分裂に際して国鉄総裁の旗振りでプロ球団を持つにいたった。このあたりの経緯と、国鉄の高揚ぶりがなかなか面白い。しかし、国鉄出身者だけではなかなか勝てない。そこで争奪戦の果てに金田正一という不世出の大投手を獲得。国鉄は金田天皇が自由にふるまうワンマンチームになっていく。

ずいぶん前、金田正一の息子の賢一(俳優)が、「うちのおやじはまだJRの改札口を“よっ”と手を上げて通ってますよ」と言っていたのを聞いたことがある。

サンケイ、ヤクルトとチーム名は変わっても国鉄人、JR人はこのチームに親近感を抱いているようだ。

JRは今も野球人を数多く輩出している。引退した小坂誠、赤星憲広、オリックスの小松聖、西武の平野将光、ソフトバンクの摂津正など多士済々だ。JRマンはこうした選手にも熱い視線を送っているのだ。

この本には、プロ野球誕生前の名選手やプロに行かなかった選手たちのことも書かれている。
野球史という太い流れの別流に触れた感じがする。貴重な本だ。

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!