7月にソフトバンクから退団の発表があった。長くNPB最強の打者だったアレックス・カブレラは人知れず消えていった。現役引退の会見もせず、日本のファンに見送られることもなく。

刺青だらけの丸太のような太い腕。ぐいっと背中をそらして打席で構える。今の時代としては決して大きな体ではなかったが、バットに当たれば打球ははるか向こうに飛んで行った。ただのホームランではないすさまじい飛距離。その上、選球眼も抜群でミートもうまい。
NPB史上でも屈指のスラッガーだったのは間違いない。MLBからやってくる選手はどこか欠点を持っているものだが、守備も含めてほぼ完ぺきな選手だった。
西武にやってきて最初の3年で154本塁打341打点。巨大な数字をたたき出せる打者だった。
キャリアSTATSはまことに不思議だ。入団当初粗っぽい打者だったようだが、長打の片りんを見せており、なぜA+から上に上がれなかったのかわからない。
業を煮やしたかカブレラはメキシカンリーグに移籍する。MLB傘下の組織ではあるが都落ちの感はまぬかれない(この期間の数字は不明)。
その後台湾野球に移籍して実績を残し、アリゾナ・ダイアモンドバックス=ARIに拾われる。ここでようやくMLBに昇格。一塁のグレッグ・コルブランの控えとしてそれなりの数字を残した。それ以上に試合前の打撃練習では特大の当たりを連発して大いに目立っていたらしいが、なぜか次のシーズンに契約はつながらず。30歳でNPBにやってきたのだ。
右打者で体格も平凡、指導者にアピールする部分が少なかったのかもしれない。
しかし、NPBにあってはカブレラは巨人のようなものだった。2年目には王貞治の本塁打記録に並ぶ。敬遠攻めが話題になったものだ。
2007年にはミッチェルレポートで名前が出た。ARIがカブレラと契約継続しなかったのは、薬物疑惑によるとされるが本当にそうなのだろうか。ただ、日本でも薬物を使用し続けていた疑惑は残る。
オリックスに移籍したときには、36歳になっており故障が多くなっていたが、試合出場可能なコンディションの時は、相変わらず恐ろしい打者だった。ただ、体の動きは鈍くなっていたように思う、
39歳でソフトバンクに移籍後は数字を残せなかった。解雇はやむなしとは思うが、MVPまでとった大選手に、我々は「ありがとう」を言うことができなかった。
また、今年も、歴史的な大選手を、いらなくなったものでも捨てるようにお払い箱にしてしまった。マスコミはカブレラの功績を取り上げるべきだと思う。
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コメント
コメント一覧
シーズン長打率7割2回。2000年代は2004年松中の715だけですかね。
近年ですと、タフィー・ローズなどもそうでしたが、素晴らしい実績がありながら、外国人選手であるというだけで、大抵は哀れな末路をたどっているように思います。
引退ではなく退団なら致し方無いですが、引退すると言っていてもそういうことが催されないのは謎です(近年の阪神タイガースですとシーツ先生がそうでした)
高津の引退試合は独立リーグでした。
ただ、広尾さんのおっしゃるようなケースがあるのも確かで、それは非常に残念なことです。
阪神はバースのせいか特にそういうイメージがあります。哲さんのコメントのシーツだけでなくウィリアムスもそうでしょう。
ラミレスは日本で戦力外になったら引退してくれるでしょうから、その時には盛大な引退試合を開催してやりたいものです。
ジェフの場合は一応本人は現役続行を希望していたんですよね。引退発表は退団から約一年後でした
ただ、引退を決意した後からでも引退試合はできますし、すべき功労者かと思います。阪神タイガース史上で二度の優勝に貢献した助っ人は彼しかいないのですから・・・
ジェフもシーツ先生も海外スカウトとして引退後もこき使っているわけですしw
これだけ打ってもリーグ内RC順位は、5位→1位→3位で常にトップというわけでは無かったというのも、この時期のリーグ全体の長打攻勢の激しさを物語るようです。
2005年からは飛びすぎるボールに対して規制と抑制を実施。それ以降の打撃成績は、さすがに常識的な強打者の範疇に収まっていますね。本塁打数よりも、毎年安定した高打率をマークしている点がむしろ目立ち、パワーだけの打者では無いことを証明しています。
2011年以降は、40代になった年齢や体調面に加えて、統一球の導入が追い打ちをかけたのか、打力の低下と衰えが急激でしたね。圧倒的な打力で00年代を席巻したカブレラの静かな退場は、一つの時代の終わりを感じさせます。
高めの速球を投げられればボールだろうがストライクだろうが、必ずと言っていいほど空振り。
昔からローボール・ヒッターだったのは有名でしたが、2011年はそれしか打てない状態でした。
打率の高いカブレラが、こんなに弱点丸出しになるとは思ってもみませんでした。
確かに外国人に対する扱いがひどいですね。親日家であることに加えてユーモアがあってパフォーマンスも面白い、くらいのレベルにならないといくらものすごい記録を残してもこんような幕引きになってしまうのですね。日本人の鈍感さを思い知りました。
そして、あの丸太のような腕とは対照的に打撃はバットに乗せて運ぶタイプな為、統一球にはからっきしだったのも悪印象だったのかもしれません。
球団史上最高の助っ人はデストラーデという意見が根強いのも、黄金時代の貢献だけでは無さそうです。
届かにゃいさんも書かれていますが、個人的にもトラブルメーカーという印象は強いですね。
ただピンポン玉のように軽々とスタンド上段に運ぶ全盛期の打棒は本当に凄かったし
打った後に筋骨隆々をアピールする茶目っ気のあるキャラクターも好きでした。
藤川球児のオールスター全球予告ストレートで空振り三振の相手でもありましたね。
あの勝負もカブレラだからこそ、より映えたんだと思います。