MLBの新制度「クオリファイング・オファー」を提示された9人の選手がそろってこれを拒否した。この制度の目的が明白になってきた。
要するに、クオリファイング・オファーは、「出て行かれては困る」が「年俸が高騰するのも困る」選手に対して、最低ラインの提示額を示し(今季の場合一律単年1333万ドル)、「ここから交渉を始めよう」と、アプローチするとともに、該当する選手を失った時の人的補償(ドラフト指名権)を担保するものだ。
代理人から高額長期年俸を吹っかけられる前に、選手のプライドを傷つけることなく低額の年俸提示ができることに意味があるのだろう。

QO-2012


ニック・スイッシャーのようにまだ若くて複数年契約を希望する選手は蹴るだろうと予想されたが、37歳のデイビッド・オルティーズ、黒田博樹らもこの提示を蹴った。この条件以上の待遇が見込めることが分かった以上、もう少し粘ってみようというところか。
すでにオルティーズは、クオリファイング・オファーが提示された直後にボストン・レッドソックス=BOSと2年2500万ドルで契約した。

黒田は単年契約を望んでおり、ニューヨーク・ヤンキース=NYYの提示は妥当性があると思われた。おそらくは代理人スティーブン・ヒラードのアドバイスもあったのだろう。金額にこだわるというよりは、正当な評価を得るために、クオリファイング・オファーを蹴ったのではないかと思われる。

しかしながら、黒田がNYYに残留する可能性は依然として高いと思う。古巣のロサンゼルス・ドジャーズ=LADと比べても、援護する打線は素晴らしいし、何と言ってもMLB一の名門球団である。そして、ポストシーズン進出がほぼ確実なことも魅力の一つだろう。
黒田にとって、残る目標は、オールスターゲームに出ることと、チャンピオンリングを得ることだけだろう。

日本のジャーナリズムは、毎年のように「黒田、今年こそ広島に復帰か」という記事を書くが、上り調子が続くうえに達成すべき目標が残っている黒田が広島に復帰することは考えられないと思う。



黒田はNPBに復帰するなら広島しか考えられないといっている。広島は12球団一の低コスト予算球団であり、チームの年俸総額は19億円である。一人で12~3億の年俸を手にしようとしている黒田を獲得できるはずがない。

「いや、黒田は金にこだわる男ではない、奴なら(NPB時代の)年俸2億円でも帰ってくるはずだ」という見方もあるようだが、それはあくまで希望的観測であり、黒田がそう考えている証拠はない。ファンが言うのならともかく、球団関係者がそれを言うのは、厚かましすぎると思う。
こうした一部の見方が、黒田の出処進退におかしな影響を与えることがないように願いたい。
黒田は、MLBでも屈指の高評価を与えられようとしている選手だ。臆することなく最高金額で、彼を必要としている球団と契約してほしいと思う。

黒田が広島に帰ってくるのは ①成績が下降線を描くか ②チャンピオンリングを手にするか、 いずれかの時期だと思われる。
そのときまで、黒田の活躍を静かに見守るのが、ファンの在り方ではないだろうか。

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