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結局、イチローもWBC出場辞退。ダルビッシュ、青木、岩隈、イチロー、川崎宗則、そして黒田博樹も次のWBCには出ない。
すでに述べたことだが、これらの選手にとってはWBCに出る意義が薄れている。彼らがWBCに出るとすれば、NPBよりも大きなステージを求めてのことであったはずだ。

これらの選手は、「NPBではやることがない」レベルに達し、さらにモチベーションを掻き立てる機会を求めていたのだから。

MLBでレギュラーとして活躍することは、WBCよりもさらに大きなステージに登ったことを意味していた。
イチローのみは、第一回のWBCの時点で、MLBでのステイタスを得ていたが、低迷するチームで孤立し、さらなるモチベーションを求めてWBCに出場した。しかし今季、ニューヨーク・ヤンキースに移籍し、優勝、ポストシーズン進出が現実のものとなって、その“代替物”だったWBCに出る意義は薄れたのだろう。



また、春先のWBCで死力を尽くして戦うことは、ペナントレースに大きな影響を与える。イチローは第2回大会の後、胃潰瘍で開幕から10試合を欠場した。他の選手も故障したり、調子を落としたりした。
WBCは「ちょっと出場する」では済まされない、深刻な影響を与えるのだ。

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見方を変えれば、NPBもMLBと同様、大物選手は出場を辞退する時代になったということだ。お隣の韓国でも、MLBで活躍する秋信守がWBCを辞退した。またポスティングでロサンゼルス・ドジャースに移籍する予定の柳賢振も出場しないのではないかと言われている。




これは、WBCが、MLBの肝いりで始めたにもかかわらず、ステイタスが確立されていないことが大きい。WBCで活躍しても、MLBでの評価が上がるわけではない。故障でもすれば、丸損である。
WBCはサッカーのワールドカップのように、「有望ローカル選手の国際見本市」になっていないのだ。
MLB球団側も、本音でいえば元手がかかっている選手には「出ないでほしい」と考えている。
MLBのバド・セリグコミッショナーは、MLBの世界戦略を、各球団の経営者に説得し切れていない。

長期的に考えれば、WBCを橋頭保とする世界戦略は、必然ではあろう。アメリカ国内の市場は、NBA、NFLなどとの競合が激化し、レッドオーシャンとなっているのだから。
ただし、今のような中途半端な状態では、先細りだ。MLBはNPBやKBOなど有力な機構、組織とともに新しいWBCの枠組みを作っていく必要はあるだろう。

私は福岡で「侍ジャパン」の試合を観戦した。また札幌の試合もテレビ観戦したが、少し救われた気がした。
球場は両方とも満員ではなかったが、日本代表も、キューバ代表も、非常な緊張感を持って試合をしていた。「花相撲」の気楽さは全くなかったのだ。札幌で三塁打を打った堂林が「足が震えた」といっていたが、本当の真剣勝負を見せてくれたのだ。また、キューバも最後まで勝利の執念を捨てなかった。

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彼らは先輩たちが好勝負を演じたWBCのステイタスを尊重し、その意志を守り伝えようとしている。アメリカではしっかり受け止められていないWBCの意義が、日本やキューバでは確実に理解されているのだ。

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NPBにおいても、WBCの位置づけは確立されるべきだと思う。単なる名誉ではなく、FA権の短縮などの選手への待遇面の補償をすべきだ。いつまでも選手の「善意」「壮気」に頼るわけにはいかないだろう。

ただ、日本ではWBCは「伝統」となりつつある。日本代表として「真剣勝負」をすることが、選手の誇りになりつつある。とかく拝金主義と言われるMLB選手とは対照的な、日本人選手の真面目さ、誠実さを見る思いがする。
すでにWBCに出場する意義を失った選手たちには、ご退場いただいて、「もっと上を目指したい」と思う若手、中堅のために、これからのWBCは存在してよいのではないか。
優勝はもちろん、大命題ではあろうが、それとともに「選手の心身の成長」を目標に掲げて頑張ればよいと思う。

田澤純一など、MLBで伸び盛りの選手は参加してほしいと思うが、オールNPBとなっても、私は応援する。新たな伝統を作ってほしいと思う。

クラシックSTATS鑑賞 本日は杉浦忠
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