日本ハムの栗山英樹監督が、花巻東高の大谷翔平を獲得するにあたり「投打二刀流」を約束した。気持ちが大きくなったようで、栗山監督は中田翔の二刀流にも言及した。
野球というスポーツには一定の進化の道筋がある。初期の野球では、いちばん能力のある選手が投手で4番を務める。しかし、徐々に分業がはじまり、中心打者と投手は別個の選手が担うのが普通になる。そして指名打者制によって、投手は打席に立たなくなる。
「個体進化は系統進化を模倣する」というが、中学、高校では当たり前だった「エースで4番」は、プロでは見られなくなる。
栗山監督が言う「二刀流」はそれほど簡単ではない。
NPBで通算10勝以上し、かつ100安打以上した選手について調べてみた。
安打数順で並べてみる。グレーは現役。



野球進化の話を裏付けるように、機能分化が進んでいなかった昭和戦前、1リーグ時代に活躍した選手が上位に並ぶ。
川上哲治、西沢道夫、田宮謙次郎のように、投手から野手に転向した例も多い。
昔の投手は打撃が良くて、好きだったから成績を残しているが、あくまで「余技」である。
捕手と投手を掛け持ちした選手には野口明、服部受弘、多田文久三などがいる。呉昌征、野口正明は外野手と掛け持ちをしている。しかし、それらは選手数が不足していた1リーグ時代の話だ。
下位には最近の選手も並んでいるが、指名打者がないセリーグでは長くやっていれば、安打数も重なる。
現役でも、山本昌、三浦大輔がランクインしているが、二刀流とは無縁である。
MLBでは、ベーブ・ルースが94勝を挙げている。1918年には13勝を挙げながら11本塁打で本塁打王を取っているが、これは、二刀流というより、投手から打者への過渡期の記録だ。
登録選手数がNPBよりも少ないMLBでは、野手がマウンドに上がるケースがしばしばある。ニック・スイッシャーなどは嬉々としてマウンドに上がったのが印象的だったが、NPBでもこういう例があっても良いとは思う。
1971年、ヤクルトの三原脩監督は、左腕外山義明を1番投手で起用したことがある。この年外山は5勝11敗ERA3.25、打者としては95打数20安打3本塁打11打点.211を記録している。これなど「二刀流」と言えなくはないが、どちらも「二流以下」だったと言えよう。
外山のように短期的に二刀流をした選手は散見されるが、大成した選手はいない。
DH制のあるパリーグで投手が打線に並ぶのは、予想以上に困難が伴う。ルール上、二刀流選手が降板しても試合途中からDHを復活させることはできないから、以後も投手が打線に並ぶことになる。交替期などの問題が生じる。
遊撃手として先発し、救援投手としてマウンドにあがることは考えられよう。そこまでするだけの選手になっていれば、という話だが。
今の野球は、野手、投手ともにサインやフォーメーション、対戦相手のデータなど覚えなければならないことは多い。大谷は2倍の情報を頭に入れなければならないことになる。
チームとしては打者転向を奨めたいようだが、本人は投手にこだわりがある。「二刀流」は、そうした大谷の状況に配慮した栗山監督の「方便」なのだろう。
ただ、NPBの投手はもっと打撃に力を入れても良いとは思う。投手が決勝打を打つような面白い試合がもっと増えるべきだ。
まるで違う「職種」のように無関心で、やる気がないのは、「進化」というより「退化」だと思う。
クラシックSTATS鑑賞もご覧ください。今日は1952年、巨人別所毅彦、33勝の記録

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!
↓
「個体進化は系統進化を模倣する」というが、中学、高校では当たり前だった「エースで4番」は、プロでは見られなくなる。
栗山監督が言う「二刀流」はそれほど簡単ではない。
NPBで通算10勝以上し、かつ100安打以上した選手について調べてみた。
安打数順で並べてみる。グレーは現役。

野球進化の話を裏付けるように、機能分化が進んでいなかった昭和戦前、1リーグ時代に活躍した選手が上位に並ぶ。
川上哲治、西沢道夫、田宮謙次郎のように、投手から野手に転向した例も多い。
昔の投手は打撃が良くて、好きだったから成績を残しているが、あくまで「余技」である。
捕手と投手を掛け持ちした選手には野口明、服部受弘、多田文久三などがいる。呉昌征、野口正明は外野手と掛け持ちをしている。しかし、それらは選手数が不足していた1リーグ時代の話だ。
下位には最近の選手も並んでいるが、指名打者がないセリーグでは長くやっていれば、安打数も重なる。
現役でも、山本昌、三浦大輔がランクインしているが、二刀流とは無縁である。
MLBでは、ベーブ・ルースが94勝を挙げている。1918年には13勝を挙げながら11本塁打で本塁打王を取っているが、これは、二刀流というより、投手から打者への過渡期の記録だ。
登録選手数がNPBよりも少ないMLBでは、野手がマウンドに上がるケースがしばしばある。ニック・スイッシャーなどは嬉々としてマウンドに上がったのが印象的だったが、NPBでもこういう例があっても良いとは思う。
1971年、ヤクルトの三原脩監督は、左腕外山義明を1番投手で起用したことがある。この年外山は5勝11敗ERA3.25、打者としては95打数20安打3本塁打11打点.211を記録している。これなど「二刀流」と言えなくはないが、どちらも「二流以下」だったと言えよう。
外山のように短期的に二刀流をした選手は散見されるが、大成した選手はいない。
DH制のあるパリーグで投手が打線に並ぶのは、予想以上に困難が伴う。ルール上、二刀流選手が降板しても試合途中からDHを復活させることはできないから、以後も投手が打線に並ぶことになる。交替期などの問題が生じる。
遊撃手として先発し、救援投手としてマウンドにあがることは考えられよう。そこまでするだけの選手になっていれば、という話だが。
今の野球は、野手、投手ともにサインやフォーメーション、対戦相手のデータなど覚えなければならないことは多い。大谷は2倍の情報を頭に入れなければならないことになる。
チームとしては打者転向を奨めたいようだが、本人は投手にこだわりがある。「二刀流」は、そうした大谷の状況に配慮した栗山監督の「方便」なのだろう。
ただ、NPBの投手はもっと打撃に力を入れても良いとは思う。投手が決勝打を打つような面白い試合がもっと増えるべきだ。
まるで違う「職種」のように無関心で、やる気がないのは、「進化」というより「退化」だと思う。
クラシックSTATS鑑賞もご覧ください。今日は1952年、巨人別所毅彦、33勝の記録

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!
↓
コメント
コメント一覧
挑戦の前からあれこれ言うのもどうかとは思ったのですが、個人的な見解としては、二刀流成功の条件として、投手と外野手、それも守備の負担の少ないレフトならまだ可能性を感じると思っておりました。
しかし、日ハムは大谷にショートをやらせると聞いています。
身体能力の高さを見込んでのことでしょうが、ショートをやるとなると、あまりに守備の負担が大きく、やるべきことが多すぎるという状態です。
捕球や送球といった基本に加えて、プロならではのこまかい連係プレー、それに伴うサインも憶えねばならず、そのために投球や打撃の練習もおろそかになり、結果としてどれも中途半端になるのではないかという危惧を抱いております。
まさかメジャーでも二刀流とか言うんでしょうか
そうなったらもうパイオニアの中のパイオニアですね
現実的にメジャーに行くなら投手の方がいいと思いますが、日ハムは野手として育てたいのか
野手転向してもメジャーに挑戦するのか
今後どうなっていくのか全く想像がつきませんが、楽しみな選手なので長い目で見守っていきたいです
ぜひとも野手一本でやってほしいのですが・・・
『投手メニュー中心の基礎体力作りに専念』『2月中に本格的な投球練習はさせない』
方針だそうですね。
http://www.tokyo-sports.co.jp/sports/74416/
野手にせよ投手にせよ即戦力の評価ではなかった筈ですから
どのみち今季は鎌ヶ谷で身体作りに専念という事になるのでしょう。
1,2年ほど,投手一本でやってからでも遅くはないと思うのですが,入団の経緯からメジャー挑戦を視野に入れて育成を行わなければなりませんから.
投手が打撃の練習をする暇があるなら,本職の練習をしっかりとした方が有益でしょう.
どうせピッチャーは打てないのだから,セリーグもDH制にすればいいと思うのですが.
そんな内なる声が聞こえてきそうな二刀流構想ですが、
大谷君には是非ともそういった邪な考えを打ち崩して貰いたい物です
二兎を追うもの一兎をも得ず。
野球を楽しめという別エントリーの記事には大賛成で、それと矛盾しちゃうけど、プロ野球選手になったってことは遊びじゃないんだよね。
戦力として最大限のパフォーマンスを出さないといけない。それがプロ野球選手としての義務だと思う。
二刀流だとパフォーマンスは落ちるよ。それでも両方で最大限の評価を得られるようなレジェンドになりうるならやればいいけど、現実的に考えてそれはありえない。
そもそも中田翔は肘だか肩だか悪くってピッチャーやれないんで打者一本に絞ったんだよね。中田も二刀流とか、リップサービスにしてもなぁ...ひどすぎる。
その中田も入団後数年経ってようやく四番に使われてるけど、打率は.....まだまだひどいもんだしね。
大谷はMLB挑戦といい(これは応援したけど)、自分の思ったことは必ず実行できるって信じてる甘ちゃんなんじゃないか?って思うようになってきた。挫折を知らないのかもしれないね。プロの壁にあたって潰れないといいね。
オールスターで投げたイチローみたいなwあんな形で披露して終わりっじゃないかな。
代打高津でしたっけ?プロの世界からは「なめるな!」っていう声が聞こえそうだよ。
私はどっちか一本に絞ったほうがいいと思う。
ほかの選手なら本人の意思を尊重して投手で...ってところを、潰すわけには行かずにごまかしてるwって感じもするなw
> セットアッパーとして登板し其の後また何処か外野のポジションに戻る
ライトから大谷がマウンドに上がったら、日ハムはその試合で指名打者を使えなくなりませんかね?
ストッパーとして投げ切ればいいけど、外野に戻れば次のピッチャーが打席に。違うかな?試合展開でそのまま代打を使わない手もありますが。
オリックスの嘉勢や、阪神の遠山や、ヤクルトの雄平を思い浮かべる・・・。
どれも中途半端で終わってるな・・・。
同じ匂いがする・・・。
やばいかもw