私は2006年2009年のWBCも全試合DVDに収録している。思うところがあって、前回の決勝戦のDVDを見返してみた。
韓国と日本の5度目の対戦である。ドジャー・スタジアムは5万人を超す観客が詰めかけ、大盛況ではあった。
場内の日本語のアナウンスは日本人ではなかったようで、不思議なイントネーションだ。
しかし、「ニッポン」という歓声こそ聞こえたが、コンバットマーチは聞こえてこなかった。
場内は試合状況に一喜一憂し、韓国、日本のファンがプレーのたびに様々な声を上げていた。

やはりそうだった。
今回、AT&Tパークは外国チーム同士の対戦にしては多い3.7万人の観客が詰めかけていたが、その中にトランペットを持ち込んで、コンバットマーチを演奏したファンがいた。そしてその音に合わせて声援をしたファンがいた。稲葉の打席のときには、ジャンプさえする観客がいた。WBCのアメリカラウンドでは初めてのことだ。
当サイトでも紹介される方がいたが、これは外国人には異様に映ったらしく、ちょっとした話題になった。

どうやら今回のWBCでは、各球団の応援団が事前に話し合いをして、合同応援団を作ったようだ。侍ジャパンの全選手の応援曲がトランペットで演奏される。かなりレベルが高いように思われる。強化試合から本戦まで、まるでペナントレースのような応援が繰り広げられた。
WBCも3回目である。応援団の足並みもそろってきたのだろう。

しかし、それとともに国際試合の興趣が殺がれたことも事実だ。

好き好きの話ではあるが、私はNPBのペナントレースを見に行くとき、常に気持ちの片隅に重たいわだかまりを感じている。
それは、応援団の存在だ。彼らはどんな状況でも選手それぞれに設定した曲のラッパを吹き鳴らし、決められた声援を送る。一緒になって応援している人は実に楽しそうで、それはそれで結構だが、試合の緊張感や、1球ごとの作戦の変化や、球場の空気などを感じたいと思っている人間にとっては、甚だしく集中力を殺ぐ。

以前、この手のブログを書いて、大反撃をいただいたことがある。私も少しは学習したので、そういうお客さんがプロ野球を支えていることは認めたいと思う。

球団側もスタジアム内でジェット風船を売ったり、「応援席」というシートを設けたりして、応援を奨励している。球団経営の上では必要なことなのだと思う。

しかし、そんなことをしなければ野球の応援ができないわけではない。野球の応援とは第一に「試合を見る」ことであって、のべつまくなしに選手の名前を連呼したり、踊ったりすることは、それほど重要なことではない。

ましてや稲葉ジャンプ、角中ジャンプなどは、スタジアムの強度を考えれば自粛すべきことだろう。確かWBCの東京ドームの試合では、ジャンプを自粛するような通達がされたと思うが、守られなかった。AT&Tパークでも日本人がジャンプするシーンが見かけられたが、恐らくスタジアムの観客席は数千人もの人々が一度にジャンプすることを想定して造られてはいないと思う。

応援団各位は、「自分たちの応援こそが本流だ」と思ってはいけないと思う。そういう愉しみ方もあるだろうが、そうでない人もいるのだ。
「球団側だって公認しているじゃないか」というかもしれないが、多くのスタジアムが「応援席」を設けているのは、応援団と一般客を隔離したいという意向があるからだと思われる。



こうした派手な応援は、アジア独特のもののようだ。台湾では昔から拡声器を使って選手個々の応援フレーズをシュプレヒコールしている。

韓国も昔から鉦や太鼓で応援するのが常だったが、最近はベンチの上に特設ステージを設け、球団専属のチアガールが出て全員にパフォーマンスをするように強要している。7回にはオレンジ色のごみ袋を頭にかぶって応援するなど、こまごまとした応援スタイルが決められ、スタンドは応援一色になっている。
韓国の応援がこのようになってから、観客動員は激増したそうだ。

しかし、一方でこうした応援団の大部分がろくに野球を知らない人々なので「本当の野球振興にはつながらない」という声も上がっている。

テレビなどでお隣の国の応援風景を見て、応援団各位はどのような感想を抱かれるのだろうか。「我々も頑張らなければ」と思う人は少ないのではないか。「台湾や韓国の応援はださいな、うちの方がずっと洗練されている」と思うのではないか。

しかし、応援団以外の人から見れば、どれも一緒である。第一印象だけでいえば、「野球そっちのけで騒いでいる」ということになる。恐らくアメリカなどの人々から見れば、区別がつかないだろう。

何度も言うが、応援団は「それはそれで結構なこと」だ。選手の中には「野球に集中できない」と思っている人も多いようだが、力づけられている人も確かにいる。
しかし、応援団は「野球とは何の関係もない」ことを認識し、「好きで勝手にやっている」ことを自覚すべきだと思う。

応援スタイルを世界に広めたいと思うのも勝手だが、それを快く思わない人もいることを、心の隅にとどめるべきだと思う。

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