東京大学硬式野球部が新人戦で早稲田から勝利をあげた。連敗は15でストップ。ことしから臨時コーチを務める桑田真澄の指導の成果だと言われている。
NHK「クローズアップ現代」によれば、リーグ戦56連敗を続ける東大は、久々の勝利を挙げるべく、連日12時間もの練習をしていた。しかし桑田は長すぎる練習は成果につながらないとし、集中的な練習をすべきとした。また、投手は様々な変化球に頼るのではなく、外角低めに速球が投げられるようにすべきだと。さらに、負けても悔しがらない選手たちに穏やかながらも檄を飛ばしていた。
引退して6年になる桑田だが、ブルペンで投球を披露した。外角低めにびしびし決まる投球に、東大生たちは感嘆の声を上げていた。
桑田がこういう形で指導者として成果を上げるのは良いことだと思う。

しかし、今更ながらではあるが東大野球部と言うのは、不思議な存在だ。

2000年以降の東京六大学各チームのリーグ戦と新人戦の戦績。新人戦は3位決定戦ありのトーナメント(2005年春だけ3位決定戦なし)。

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ここ13年を見れば、早稲田が最強。この間、和田毅、青木宣親、鳥谷敬をはじめ優秀な選手を多数輩出している。これを法政、明治、慶應が追いかける形。
立教大学は1999年秋以来優勝なし。
そして東大は2010年10月2日、早稲田に4-2で勝って以来、56連敗。早稲田はこの季の優勝チームであり、投手は斉藤佑樹、大石達也だった。

新人戦では明治大学が圧倒的に強い。トーナメントであり運に左右されることも多いと思うが、この結果だけを見れば明治大は新人の育成に問題があるのかもしれない。
東大は毎年トーナメントの一回戦で負けている。先日の勝利は、2006年春に立教に勝って以来のことだった。

東大の通算勝率は16勝269敗の.056、入れ替え戦があればとっくに消え去っている。ここまで弱いチームがトップリーグの一員でいるのは、東大と関西大学野球の京大だけだろう。

本来ならば、断トツに弱いチームがリーグに存在することを問題視する声が上がってもおかしくない。また、チームからリーグ戦を辞退する声があがることも考えられるだろう。



そうはならない理由は、日本人なら誰もが承知している。
東京大学は学歴社会日本の頂点に位置し、選手は野球ではなく、偏差値70の厳しい試験をクリアして入学しているからだ。
負け続けても「外せ」という声が上がらないのはそれが「東大」だからだ。選手自身も他の大学に負けたからと言って、自分たちのステイタスが揺るがないことを知っている。
ある意味で東大は「客分」扱いでリーグに存在していると言ってよいだろう。

歴史的に見れば、東大(旧一高)は、明治のある時期、日本最強チームだった。また、野球経験のあるエリートたちが社会の指導的立場になったことで、野球の普及が進んだことも大きい。

東京六大学のいびつな勢力図は、エリート層がもたらして全国に普及した「野球」というスポーツの歩みを象徴している。

桑田真澄がどんなに力を入れて指導しても、東大が優勝することはあり得ないだろうが、素質のハンデを知力と技術力でどこまでリカバーできるのか、という実験として興味深く見守りたいと思う。

※私が取材して記事にしている滋賀県のサイト。良かったらお読みください。



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