リンスカムのノーヒットノーランには日本のファンの間からもお祝いの声があふれた。この投手が好きな人、多いのだ。
何年か前に「見ていて面白い投手は誰か」というテーマでコメントを求めたところ、リンスカムの名前がトップに上がった。面白くない方はロイ・ハラデーだった。

小さな体で打者に対して向かっていく。ただ打ち取るのではなく、三振を取ろうとする。タイプは違うが、ペドロ・マルチネスと同様、極めて攻撃的な投手なのだ。その派手な容姿も相まって、MLBでも屈指の人気者だった。

しかし、昨年からリンスカムは出れば打たれる連続だった。BABIPが.318と落ちているのを見れば、多少の不運もあっただろうが、主因は球速の低下。95マイル前後のキレのある2シーム、4シームを見せつけて、フォークのようなチェンジアップやスライダーで打ち取るというストーリーの前提が崩れたのだ。しかし奪三振のペースは落ちていない。

皮肉なことに、ノーヒットノーランは、盛りを過ぎてから達成された。

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立ち上がりはとてもそういう投球をするとは思えなかった。2人をアウトにするのに15球を要し、3番ヘッドリーを歩かせる。クェンティンはチェンジアップで仕留めたが1回だけで24球。

2回にはギョルコにぶつけてしまう。大荒れのマウンドだった。
しかしここからリンスカムは6連続三振。1回の最終打者クェンテインの初球に素晴らしいカーブが決まったのだが、これで感覚をつかんだのではないか。75マイル前後のカーブに各打者のバットは次々と空を切った。

4回、5回、アロンソには10球も粘られるが他はカーブ、スライダーで打ち取る。

しかし6回、ピンチが訪れる。1死からエバース・カブレラを歩かせ、暴投。しかもヘッドリーも歩かせて2死一三塁。ここはアロンソにチェンジアップを振らせた。ほとんどフォークのような変化。

8回にも走者を出すが、9回に。最後は左飛でアロンソを切って取った。

何と148球、今季MLBでも断トツの1位。2位はクレイトン・カーショウの132球、3位はダルビッシュとアニバル・サンチェスの130球。
もともと球数の多い投手で2011年には133球を投げたことがあるが、本人にしても最多。2010年にエドウィン・ジャクソンが149球を投げて以来の球数だ。



オールスター前だと言う意識もあっただろうが、リンスカムには意地の投球だったのだろう。
変化球の切れで三振を奪う投手として再生するのか。注目したい。


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