今、読んでいる『読む野球』で、鈴木啓示は「ある程度投げ込まんとコントロールはつかんぞ」と語っている。
江夏豊も、同書で、「(キャンプで)主力と言われているピッチャーは少なくても2500球以上、自分の目標だった村山実さんは3000球、オレもそれに近い球数で投げるという計算でやっていたよね」と語っている。
先週の「野球好きニュース」で私はシーズン3000球を超した投手は、翌年球数が減る可能性が高いと説明した。
これに対して、清川栄治さんは「それはそうかもしれないが、若い投手はどんどん投げ込んで、フォームを固め、制球力をつけないといけない」と言った。コーチ歴の長い清川さんにしてみれば、常識なのだと思う。

一方で「肩は消耗品」という考え方も根強くある。
MLBでは試合だけでなく、練習でも厳格に投球数を制限し、試合中のキャッチボールさえ禁じている。投げ込んで肩を作るNPBの投手は、このスタイルに慣れるのに苦労する。
松坂大輔などは、このために力を発揮できなかったとも言えよう。
和田毅などは、NPB時代の酷使がたたって、MLBでトミー・ジョン手術をせざるを得なくなったと報じられた。
しかし、ダルビッシュ有、黒田博樹、岩隈久志のようにこのスタイルに順応し、NPB時代以上の成績を上げている投手もいる。

「投球数」にまつわる話は、本当にわからない。NPBとMLBの考え方は相反しているのか、それともひとつの真実の両面なのか。
また、「投球数」には一般論はなく、個別の投手の事情があるだけなのか。

MLB両リーグの昨日時点までの先発投手の投球数のランキング。30位まで。

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早くも2500球以上投げている投手がアリーグに8人、ナリーグに4人。今、MLBは120試合前後消化しているから、この投手たちは3400球前後投げることになる。
ダルビッシュは昨年、3166球を投げているが、今季はそれを上回ることが確実だ。黒田、岩隈も3200球くらいは行きそうだ。

同様にNPBの両リーグの昨日時点までの先発投手の投球数のランキング。規定投球回数以上。

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2500球以上投げている投手は皆無。1試合当たりの投球数(NP/G)も、1回あたりの投球数(NP/IP)も、一人あたりの投球数(NP/BF)も日米で大差はない。

最終の数字は、最多の金子でも3250球程度になりそうだ。それでも翌年、調子を落とす可能性は高い。
投球数で見ればNPBはMLBに比べて「楽な環境」だと言えよう。

MLBは162試合を5人の先発投手で回す。シーズン先発数は32前後。中4~5日で回す。
だからMLBは厳しい投球制限をし、肩の消耗を食い止めようとする。

NPBは144試合を6人の先発投手で回す。シーズン先発数は24前後。中6日以上で回す。
NPBは、余裕があるから、それほど厳しい球数制限をせず、練習などでもどんどん投げさせる。

と考えることもできそうだ。



今日、愛媛済美の安楽智大は、最速155km/h、137球を投げて完投した。今大会も600、700球と投げるのだろう。
アメリカでは、高校野球のこういうやり方を「肩の酷使」だという。そういう報道がたくさんなされるだろうが、それも一面の真実に過ぎない。
プロの世界での事情は大きく異なるのだ。

NPBとMLB、投手にとってどちらが過酷な環境かということを考えるときに、「投球制限」の話は、一面的に見てはいけないと実感する。

MLBに挑戦する投手は、日米の大きな落差を十分に認識しなければならない。圧倒的な「体力」がなければ、MLBでは通用しないのだ。

もう少し「投球数」について考えたい。


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