矢野耀大『考える虎』

新書と文庫、同じような袖珍本(ポケット本)でありながら大きく違うことがある。
新書には『バカの壁』『国家の品格』など歴史に残るようなベストセラーが何冊も出ているが、文庫本ではほとんど見当たらない。なぜなら新書本は書き下ろしだが、文庫本は単行本(ハードカバー)の普及版として出版されるからだ(最近は書き下ろし文庫もあるにはあるが)。
さて、ベースボールマガジン社からも新書が出ている。プロの作家やジャーナリストの本も出ているが、プロ野球選手など競技者が書いた本も多い。そのほとんどがゴーストライターだろうから、内容的には見るべきものはないと思っていたのだが。
たとえライターが入ったにしても、競技者がなまなましく語る言葉は迫力がある。また、当事者でしか語れない、スポーツ紙には絶対に載らない事実がたくさん含まれている。一般の新書と違って「ビジネスに役立つ」みたいな小賢しさがあまりないのもいい。文学的な価値は低いかもしれないが、野球という競技を深く理解するうえでは貴重だ。今後、順次紹介していく。
第一回は 矢野耀大『考える虎』
阪神捕手、矢野耀大が引退直後に書いた(語った)言葉である。文字の級数も大きく、ボリュームは少ないが、実に率直。
矢野は苦労人である。高校でも大学でもそれなりの評価を得たが、常に一番手ではなかった。それだけに「試合に出たい」という思いを抱いていた。
「試合に出たい」この本を通じて切実に伝わってくるのはその思いだ。
30歳で阪神に移籍し、レギュラーの座を得てからも「出場機会が減らないか」汲々とする。激しいのどの渇きのような危機感が矢野をして一流捕手たらしめたのだと思う。35歳を超えてキャリアハイの成績を残し、40歳近くまで一線で活躍できたのも、こうしたひたむきな思いの賜物だ。
圧巻は藤川球児との試合でのやりとり。藤川は、矢野がミットを構えるだけで、求めているボール、攻め方を瞬時に理解したという。まさにトップクラスの選手同士でなければ達することができない、凄い境地だ。読み応えがあった。
今、野球中継で耳にする矢野のやわらかな関西弁の肉声が聞こえてきそうな、素直で分かりやすい文章も好感が持てる。1日あったら読める本だが、価値は高い。
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!
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新書と文庫、同じような袖珍本(ポケット本)でありながら大きく違うことがある。
新書には『バカの壁』『国家の品格』など歴史に残るようなベストセラーが何冊も出ているが、文庫本ではほとんど見当たらない。なぜなら新書本は書き下ろしだが、文庫本は単行本(ハードカバー)の普及版として出版されるからだ(最近は書き下ろし文庫もあるにはあるが)。
さて、ベースボールマガジン社からも新書が出ている。プロの作家やジャーナリストの本も出ているが、プロ野球選手など競技者が書いた本も多い。そのほとんどがゴーストライターだろうから、内容的には見るべきものはないと思っていたのだが。
たとえライターが入ったにしても、競技者がなまなましく語る言葉は迫力がある。また、当事者でしか語れない、スポーツ紙には絶対に載らない事実がたくさん含まれている。一般の新書と違って「ビジネスに役立つ」みたいな小賢しさがあまりないのもいい。文学的な価値は低いかもしれないが、野球という競技を深く理解するうえでは貴重だ。今後、順次紹介していく。
第一回は 矢野耀大『考える虎』
阪神捕手、矢野耀大が引退直後に書いた(語った)言葉である。文字の級数も大きく、ボリュームは少ないが、実に率直。
矢野は苦労人である。高校でも大学でもそれなりの評価を得たが、常に一番手ではなかった。それだけに「試合に出たい」という思いを抱いていた。
「試合に出たい」この本を通じて切実に伝わってくるのはその思いだ。
30歳で阪神に移籍し、レギュラーの座を得てからも「出場機会が減らないか」汲々とする。激しいのどの渇きのような危機感が矢野をして一流捕手たらしめたのだと思う。35歳を超えてキャリアハイの成績を残し、40歳近くまで一線で活躍できたのも、こうしたひたむきな思いの賜物だ。
圧巻は藤川球児との試合でのやりとり。藤川は、矢野がミットを構えるだけで、求めているボール、攻め方を瞬時に理解したという。まさにトップクラスの選手同士でなければ達することができない、凄い境地だ。読み応えがあった。
今、野球中継で耳にする矢野のやわらかな関西弁の肉声が聞こえてきそうな、素直で分かりやすい文章も好感が持てる。1日あったら読める本だが、価値は高い。
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コメント
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その矢野が、一昨日のオープン戦の解説では痛さ爆発でした。
もちろん、その対象は、同い年(向こうは浪人なので一学年下)のあの人ですが。