2009123日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

守備のSTATSというのは、なかなか真価が見えないものである。例えるなら、攻撃のSTATSは営業成績である。獲得したものを積み上げるから、優劣がはっきりする。守備のSTATSは、総務経理などバックオフィスの評定である。「完全にやって当たり前」の減点主義だから、極めて劣る場合を除き、レベルの高い現場では差がつかない。

イチローの守備能力を、STATSで語ろうと思うのだが、これが難しい。一応、堅実さの指標として、守備率=エラーをしない率というのがあるのだが、よく指摘されるとおり、エラーを恐れて無理な打球に挑まなければ守備率は上がる。ベテランで、足の遅い野手が守備率1.000なんてこともある。

より守備能力に迫るには、守備機会というSTATSがある。どれだけアウトにしたか、アウトにするのに協力したか、という数字である。外野手の場合、守備の多くはフライを取ることであり、これは刺殺(怖い言葉だ)という記録で表される。稀に次塁に達しようとする走者を外野からアウトにすることがあるが、これを補殺という。これとエラーを足したものを守備機会という(ご存じの方にはご退屈様だが)

本当に優れた野手は、より多くの守備に参加している。守備機会が多い。それによってエラーのリスクも高まるが、はるかに多くのアウトを取ることに貢献する。

で、私は独自に1試合平均処理数という数値を考えた。外野手として参加した守備(刺殺+補殺)からエラーを引き、この数字を出場試合数で割るのである。これで、1試合あたりのアウトに貢献した数(単独とは限らない)が出てくると思う。

この数字を加えたイチローの守備STATSと、同じ基準の2008年の外野手の守備の平均データが以下である(外野手の守備の平均データは年によって大きく変動することはないから、最新の1年のみ取り上げた)。

ichiro05

外野手というのは、守備機会が均等ではない。センターが一番多くボールにふれる。続いてライト、レフトの順。センターに足のある名手を入れる意味合いがよく分かる。

イチローは、ライトのときもセンターの時も、リーグの平均の数値よりも常に上である。驚異的なのは、2004、5年のライトの守備。リーグ平均の2.105よりも10数%も高い。差が出にくい守備のSTATSでは、普通あり得ない数字だ。下手なセンターよりも多くボールに触ってきたということだ。エリア51の伝説は、数字でも実証されている。

2008年で気になるのは、久しぶりに戻ったライトでの1試合平均処理数がひどく悪いこと。これを走力や肩の衰えとは見たくない。センターからコンバートされて、勘が戻らなかったということだろう。守備位置があちこち変わるのは、良いことではないと思う。

2009年は、エリア51にイチローがどっかと座って、飛球を根こそぎ処理してほしい。レーザービームもライトからの方が映像的に映えるのだ。胸のすくような映像をたくさん見せてほしいと思う。

 

 

■後日談:2009年もゴールドグラブを受賞したが、やや守りに陰りが見える気がする。2010年に期待である。