【2009年1月27日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】
盗塁というSTATSは、人間くさい。単に次塁を冒すだけのプレーなのだが、多くの注釈が入る。まず、ランナーが次塁に進んでもバッテリーが何ら行動を起こさなければ、公式記録員の判断で盗塁がつかないことがある。また、大量得点差では、不必要な盗塁はマナー違反とされる。MLBでもNPBでも、ほぼ同じようだが、こうしたルールや不文律によって、かつてのモーリー・ウィリスやヘルナンデス、福本豊のような100盗塁以上の大記録はうまれにくくなっている。
福本豊の全盛期、南海の広瀬叔功は福本を上回る走力、技術を持ちながら、必要な時しか走らなかったとされる。スコアブックを見ることができれば、それは実証できるのだが。
さて、今回は、イチローと2008年アリーグの盗塁王、エルズベリーの走りを比較してみた。イチロー、エルズベリーが盗塁を企図したのは計114試合(同一試合で2人が盗塁したのは1試合だけ)回を追ってつぶさに見て、非常に面白かった。
盗塁というのは、戦争の中の一騎打ちのように、捕手と走者の技の競い合いでもあるのだ。
長くなりそうなので、今回は3つのブログに分けて、じっくりと面白さを共有したい。なお「SB」は盗塁、「CS」は盗塁刺、得点は盗塁後に限った得点である。
まず、二人のデッドヒートを見ていただきたい。

エルズベリーが先行した盗塁王争いは、5月にヒートアップし、1差のままで8月へ、9月になって優勝争いという高いモチベーションの中でエルズベリーが勝利を決めた。
6月以降、エルズベリーは、敵からマークされて盗塁成功率が落ちて苦戦をする。一番バッターを外されることも多くなったのだが、おそらくイチローに、盗塁王に対する執着があまりなくて、何とか逃げ切れたのだ。
エルズベリーの盗塁成功率82%は決して悪くはないのだが、イチローの91.5%の前には遠くかすんでしまう。イチローは、走るからには必ず成功する、そんなランナーなのだ。
さらに、二人の盗塁の質を対比したのが、以下の2表である
さすがにMLBを代表するトップバッターである。二人とも得点差の開いた試合での、無駄な盗塁はほとんどない。イチローは―10差の試合で走っているが、これには訳がある(後述)。
また、二人ともいわゆる核弾頭としての機能を十分に果たしている。1回の盗塁が多いのだ。先制点も多い。興味深いのは、中盤の4、5回。イチローはほとんど走らないが、エルズベリーは積極的に走っている。これは、マクラーレン、リグルマンとフランコーナーの戦術の差ではないだろうか。終盤でのイチローの盗塁成功率の高さは見事だ。万全の体制で警戒するバッテリーを出し抜く技術の高さを表しているといえよう。
■後日談:2009年、イチローは盗塁王争いから早々と降りてしまった。後半には脚の故障もあり、30盗塁もできず。衰えの前兆と見えなくもない。2010年 最も奮起を促したいジャンルだ。
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