【2009年3月6日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

昼、京都の錦市場を歩いていたら、八百屋の店先で「強化試合も含めて28打数3安打やで、どないなっとんねん」という声が聞こえた、京都のおっさんがイチローの話をしてもおかしくはないが、最高視聴率40%近い盛り上がりを実感した。

イチローは、日米の単年度最多安打のレコードホルダーだ。これはまさに空前絶後。我々は凄い選手と同時代を生きているのだ。

一人の選手が打たないことが、市井の話題になるというのも王貞治の756号以来ではないかと思う。

その上、イチローは美しさでも群を抜いている。強化試合で遠目から見ただけだが、キャッチボールをして右翼に向かうそのはつらつとした姿や、守備位置でのストレッチ、そしてスローイング。打席での機能的な流れるような動作など、すべてがイチローだけのものだ。

安打は出なくても、すでにイチローを目にするだけでもう満足。そう思わせる存在だ。

「至宝」とはまさにこういう選手を言うのだろう。故デビット・ハルバースタムの「男たちの大リーグ」は、年齢による体力の衰えを感じさせつつも華麗なプレーを続けるジョー・ディマジオを描いている(そのときディマジオはわずか34歳だが)。この場面は一巻の白眉だ。名選手は、晩年に差し掛かった時に一番美しいのではないか。

我々はこの選手に異様なまでの期待をかけている。そのことを思うとき、居住まいを正したい気持ちがする。

少々打てなくても、イチローは日本のリードオフマンとして、打席に立ち続けてほしい。限りあるイチローの「現役の時間」をじっくりと楽しみたいと思う。

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■後日談:記録よりも記憶で永く残る選手だろう。2009年の活躍を見て、まだ晩年と言うには早かったのだと実感した。