【2009年3月28日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】
スポーツ文学の名品に「ひと夏の冒険」がある。名コラムニストであるロジャー・カーンが、ひょんなことからマイナーリーグの野球チームのオーナーとなり、ひと夏をチームとともに暮らしたドキュメントだ。小さなワゴン車が、球場に横付けされるとチケット売り場に早変わりし、グッズやホットドッグの売店になり、FM放送のステーションとなる。オーナーは、売り子になり、FMラジオの中継まで担当する。薄給でも喜々としてプレーする選手たちだが、彼らにはシビアな現実が待っている。
この本の世界は、日本人から見れば、一種のファンタジーのようなものだ。「野球で飯を食う」なんて、日本ではほんの一握りの才能にしか許されないことなのだから。
独立リーグが始まった時に、強くひかれたのは、日本にも「野球好き」がその情熱だけで、生活できる場が出来たと思ったからだ。
五年前にできた「四国アイランドリーグ」はわざわざ見に行った。たまたま遠縁の人が、チームのオーナーになったから、他人事とは思えなかった。五年たって、このリーグは九州のチームも巻き込み、悪戦苦闘しながらも存続している。
そして関西にも今年から独立リーグができることになった。早速、チケットを買いに心斎橋にある「大阪ゴールドビリケーンズ」の事務所に出かけて行った。小さな事務所では、3/27の開幕戦の打ち合わせが白熱していた。「チケットください」と言っても、そっけない対応だった。内野席のチケットを受け取って、「がんばってください!」と言っても、返事はなかった。みんな必死なのだ。
そして、今日、大阪ドームで開幕戦。橋下大阪知事が始球式。打席に立つのは赤井英和さん。知事は何と5球も投げて、赤井さんを三振に仕留めていた。39歳の知事の球は、この試合の最後に投げた吉田えりよりも明らかに速かった。
大阪ドームには1万2千人近くが入り、盛況だった。
しかし、この球場が使えるのは今日限り。これからは何十人単位で人を集める日々が始まる。日本と言う地で、「野球で飯を食う」ことの現実が始まるのだ。
私は、今日始まったこの独立リーグをじっくりと見ていきたいと思っている。

■後日談:関西独立リーグは、終幕までもたず、破綻してしまった。今思えばこれが頂点の舞台だった。都会で独立リーグをやるのは難しいのだ。
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