200943日「MLBをだらだら愛す」掲載過去記事】

開幕3日間、NPBの中継をザッピングのように見ていた。WBCの話題が多かった。野球のみならず、日本人のメンタリティに今回の優勝がいかに大きな影響を与えたかが分かる。

解説者の中で、ことのほか瑞々しい言葉を吐いていたのがゲストの桑田真澄である。ついこないだまで真剣勝負をしてきた人間にしか言えない言葉や、微妙なニュアンスを巧みに表現する頭の良さには感心した。WBCのときの清原のコメントにも、印象深いものが多かったと思う。私は選手生活晩年の清原は大嫌いだったのだが、達観したようなコメントは、素晴らしいと思った。

思い返してみれば、引退直後の野球選手は、ベンチの空気や、試合の緊迫感、選手心理などを実に生々しい言葉で表現することがしばしばあった。しかし、2~3年もたつと、アナウンサーに相槌を打つような、つまらない解説者になり下がる。槙原や水野も昔はもっと値打ちのあることを言っていたように思う(ギャオス内藤のように、最初からどうしようもないのもいるが)。これは本人の資質も大きいと思うが、周囲が彼らの感性や言葉を活かしてやらないことも大きいと思う。

今日の巨人:広島3回戦でも桑田は、「良いショートとは投手が『あの選手の前に打たせてやろう』と思うようなショートだ。川相さんがそうだった」とか、クルーンの窮地で「ここで、ファーストストライクをバントしてくれれば、投手は助かる」とか、実に的確でいいコメントを吐いていた。しかし日テレの蛯原アナは、中継や解説の水野らとのやり取りに忙しくて、さして注意を払わなかった。実況を聞いていて桑田のいい言葉を「もっと掘り下げてほしい」といういらだちが残った。

毎度毎度引き合いに出して恐縮だが、島村アナなら、そういう「いい言葉」は必ず反芻する。折り合いを見て、深く掘り下げようとする。試合の流れの中で、「○○さんがおっしゃっていた××するとは、こういう場面のことだったのですね」とか、きちっと抑えてくれると思うのだ。

蛯原アナは当初はどうしようもなかったが、今では民放アナとしてはまだ聞きやすい方である。きびきびした語り口は、悪くはない。しかし、自分ですべてを伝えよう、ゲームを自分でまとめようというMC(マスターオブセレモニー)が陥りやすい錯覚にとらわれている。そして局も解説者にはほとんど期待していないから、なおさらそれを助長している。

レベルの高いアナと解説者のやり取りが、実況中継をより面白くする。MLBの与田剛と野地チーフアナの放送などは、解説者の資質をアナが十分に引き出そうとしている。放送前に互いの野球観を十分に戦わせた形跡がある。

民間放送には、そういう真面目さ、真摯さが育つ土壌がなかったのだと思わざるを得ない。野球人気の低落に、民放は大きな責任があると思う。

桑田清原の鮮度がいいうちに、それを活かすアナが出てきてほしいと思う。

■後日談:野球放送については、一家言ある人が多い、論議の花を咲かせたいと思う。