1973年生まれのイチローは今年10月には41歳になる。このシーズンは40歳で過ごすことになる。
イチローの同い年の選手。MLBは1973年1~12月生まれ、NPBは4月~12月生まれ。

打者

1973-ichiro-H


MLBではトッド・ヘルトンが引退、ジョニー・デーモンも2012年11月にWBCタイ代表でプレーしたのを最後に試合に出ていない。年長の選手はいるが、同年代ではイチローが唯一の現役。
NPBでは中村紀、小笠原、松中と球史に名を残しそうな選手が現役だが、黄昏つつあるのは否めない。

投手

1973-ichiro-P


日米ともに同年代最多勝のバートロ・コロン、三浦大輔が現役。ともに“名人芸”の域に達している。しかしもうともに1人だけだ。

どうでもいいが“倍返し”の堺雅人はイチローと誕生日が8日違いである。

その実績から見ても、年齢を見ても、イチローはもう十分にやったと言えるだろう。

MLBの野球殿堂入りも間違いないところだ。積み上げの数字でも、ピーク時の数字でも、イチローはMLB野球史に残る成績を上げている。
その上に、NPBでの実績を引っ提げてやってきたという「野球文化史的側面」。選手としての風格、人気でも申し分はない。薬物疑惑からも無縁だった。
四球を選ばないためにセイバーメトリクス的に見て評価が低いと言われるが、最盛期にはOBPは4割を超えていた。
また最強の外野手の一人でもあった。
日米で首位打者、盗塁王になったのも、MVPになったのもイチローだけだ。
ワールドシリーズへの出場は叶わなかったが、それはイチローだけの責任ではない。
やり残したことはないと言っても良い。

選手イチローにとって最大の課題は「いかに身を引くか」だと思う。

MLBでは「引退」は非常に難しい課題になっている。

理想的には「今季限りで引退する」と自ら宣言し、1年間喝采に包まれながら「さよなら興行」をするのが良い。

昨年でいえばマリアノ・リベラがそれだった。一昨年のチッパー・ジョーンズも記憶に新しい。

ただ多くの場合、これができるのはフランチャイズ・プレイヤーだ。また、周囲が「もう少しできるだろうに」と思うようなタイミングが望ましい。大型契約の最終年であれば言うことない。デレク・ジーターなどはこのケースになるのではないか。

イチローがこういう引退をするとすれば2012年だった。しかしその時点ではイチローもファンも「まだやれる」と思っていただろう。チームをかわり、年俸が下がり、実力も下降線の今は、こういう引退は難しい。

多くの大物選手は年俸を大幅に下げながらも球団を渡り歩き、レギュラーの座からも滑り落ちて、落日の姿を人々にさらす。

2001年にイチローとMVP争いをしたジェイソン・ジアンビは2014年もクリーブランド・インディアンスと契約したが、年俸は全盛期の30分の一近い75万ドルだった。

その挙句にマイナー契約でも獲得する球団がなくなって、球場から姿を消し、しばらくたって「引退声明」が発表されるパターン。

イヴァン・ロドリゲスやゲイリー・シェフィールド、ペドロ・マルチネスなどの例が耳新しい。松井秀喜もこのケースだ。

引退に踏み切れず、中途半端な状態にいる選手も多い。イチローと同い年のデーモン、ボビー・アブレイユなどがそうだ。

過去の実績と現在の評価のかい離が激しくなればなるほど、選手の落剝感は大きくなる。ファンとしては、そうならないうちに身を処してほしいとも思う。



イチローの場合、別の選択肢もある。それはNPBに凱旋帰国をし、1年だけプレーをして引退するパターンだ。
抵抗があるだろうが、あと381打数で4000打数に達し、NPBの歴代打率ランキングに名前を表すことになる。
そういうことに拘泥するとは思えないがNPBに復帰したイチローも少し見てみたい気がする。

人気も成績も年俸も、野球選手としてほぼすべてのものを手にしてきたイチローだが、「栄誉ある引退」は最も難しい課題なのかもしれない。


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