昨日、DeNAから阪神へ鶴岡一成の移籍が発表された。また西武は巨人から脇谷亮太、ロッテから中郷大樹を獲得する模様と報じられた。いずれもFA選手の人的補償だ。
人的補償とは移籍元球団の年俸10位以上(A、Bランク選手)のFA移籍において、移籍先球団はプロテクトされた28選手(+新人、外国人選手)を除く選手から1名を指名することができる。移籍元球団は人的補償のかわりに金銭を求めることもできる。

FAに際して人的補償が発生したのは昨日時点で以下の20例。実績は移籍先の球団の在籍期間中のもの。

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少し前まで、NPBにおけるFAとは、人気選手が巨人に移籍することだった。そのために巨人の選手が多い。
とはいっても、人的補償はFAが導入された93年からあったが、ほとんど行使されることがなかった。
しかし2006年以降人的補償での移籍が少し活発になった。

20例を見て感じるのは、プロテクトされていない「残り物」の選手から使える選手を選ぶのはなかなか難しいと言うことだ。

多くの選手は移籍先でそれほど活躍しないうちに引退したり、移籍したりしている。そういう選手を獲得するより金銭を得た方がましだと言う計算も働くのだろう。

しかし中には成功例もある。
ポイントになるのは「名前で選ばない」と言うことではないか。
この顔ぶれの中には皮肉なことにFAで移籍した有名選手がいる。江藤智、工藤公康がそうだ。また藤井秀悟、馬原孝浩など有名選手もいる。
移籍元球団にしてみれば「掘り出し物だ」という感覚でこういう選手を獲得するのだろうが、藤井を除いてあまり働いていない。
プロテクトを外れると言うことは、戦力として重要視されていないと言うことだし、モチベーションも下がっている。活躍は期待できないのではないか。

むしろ、成功例は控え選手、無名選手の方が多いようだ。
小田は控え捕手として8年間谷繁をバックアップしている。赤松は走り屋、そして守備範囲の広い外野手として活躍どころを得ている。
福地は移籍早々レギュラーになって盗塁王を2回も獲得した。

球団も単に名前で選手を取るのではなく、自軍の手薄な部分を補強するという明確な考えが必要なのだろう。
また投手よりも野手の方が活躍していることも留意すべきだ。

今年は史上最多の5例が発生しそうだ。
DeNAは正捕手の鶴岡を持って行かれた。迂闊としか言いようがない。
ただ阪神は昨年日高剛を取っている。藤井、清水もいる。今成を三塁にコンバートするが、それでもややだぶついた感がある。

これまでの例でいえば、巨人から西武に移籍する脇谷は活躍しそうな気がする。

私はNPBは人的流動性がもっと高まるべきだと思っている。FA期間を短縮して有力選手がどんどん移籍すべきだと思うし、それに伴う人的補償で、控えに燻っている選手に活躍のチャンスが与えられれば良いと思う。
MLBのルール5ドラフトのような若手の移籍を促進するシステムも導入すべきだろう。

野球選手は個人事業主だ。まるで会社に就職したかのように、試合にも出られないのにチームで大人しくしているのはよいこととは思えない。
人的補償はそうした選手にとって大きなチャンスだ。移籍する選手は、ぜひチャンスを活かしてほしいと思う。


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