昨日、MLB機構はアレックス・ロドリゲスに、ポストシーズンを含む2014年の全試合の出場停止処分を科すと発表した。
昨年1月、マイアミのバイオジェネシス社から、A-RODをはじめとする選手が禁止薬物の提供を受けていたとされる疑惑が発覚。
8月、MLB機構は禁止薬物を使用していたとして、8月8日から2014年シーズン末までの全ての試合(211試合)の出場停止処分とすると発表した。A-RODはこれに対して異議申し立てを行い、2013年シーズンいっぱい試合に出続けた。
今回の発表は、調停人より下されたものだ。
昨日の発表に対し、A-RODは連邦裁判所に差し止め命令を求める意向だが、ヤンキースは大リーグの薬物協定と仲裁人の決定を尊重すると発表。MLB選手会も、A-RODのに気配りを示しつつもプロセスは公正だったとし、裁定を受け入れると発表。
まさに四面楚歌である。
ヤンキースはA-RODに対して支払うべき2500万ドルが浮くことになる。田中将大獲得に向けて拍車がかかるに違いない。
アレックス・ロドリゲスは、攻守のバランスが取れたMLB最高の選手だった。MLB2年目で同僚になった松井秀喜が「とてもかなわない。パワーが違う」とため息をついたのをよく覚えている。
軽くスイングしたように思えた打球が、とてつもない飛距離になった。ミート力も抜群だった。
また、ヤンキースに移るまではデレク・ジーターと並ぶ遊撃手でもあった。
さらにスラッガーとして注目されるようになってからも、シーズン20盗塁をする脚力の持ち主でもあった。
天から野球に関するあらゆる才能を与えられたと選手、というのがふさわしかった。
しかし、若いころからA-RODは神経質で、メディアとは相性が良くなかった。
また、マリナーズを移籍したときは、大ブーイングを浴びせかけられた。さらにテキサス時代は抜群の成績の割に「優勝に貢献していない」とも評された。
彼の人生を狂わせたのは「Money」だったと思われる。
年俸の推移を加えたキャリアSTATS



彼は辣腕、剛腕で知られるスコット・ボラスを代理人とし、レンジャース、ヤンキースとチームを移るたびに天文学的な年俸を手にしてきた。
特に2007年に結んだ10年総額2億7,500万ドルという契約は、今に至るも史上最高額である。
契約満了時、A-RODは42歳。まだ4年も残っている。あり得ない契約といってよいだろう。
「金の亡者」のように呼ばれてきたA-RODは、社会の批判を浴びないためにも毎年、好成績を上げる必要があった。
薬物に手を出したのは、そのプレッシャーからだったことは想像に難くない。
マーク・マグワイア、サミー・ソーサ、バリー・ボンズやロジャー・クレメンスなどが非難をされた後にも関わらず、彼は薬物にすがろうとしたのだ。
当初、MLBでは薬物の使用は「禁止」ではなかった。しかし一連の事件を経て、「薬物使用」は禁止された。A-RODの疑惑は、その後に発覚しただけに、世間の反応は一層厳しかったのだ。
彼について語るとき、全盛期の素晴らしいプレーよりも「薬物で悪あがきをした金満選手」と言う言葉が先に来ることになろう。
シーズン終了後、A-RODは再起を目指すだろうが、周囲の目はさらに厳しくなるだろう。事実上の引退を余儀なくされるのではないか。
成績だけなら優にその資格があるにもかかわらず、野球殿堂入りもほぼ絶望だろう。
薬物疑惑は、MLBにはびこる拝金主義と表裏一体の関係といってよいと思う。A-RODはその象徴となった。
しかし、この教訓は生かされていない。A-RODのチームメイトだった31歳のロビンソン・カノは、シアトル・マリナーズと10年2億4,000万ドルの契約を結んだ。この契約は、ほぼ間違いなく、残念な結末を迎えるはずである。
MLB、そして選手は、A-RODに学ぶべきだ。そうでなければ、今後、人々の尊敬を集める大選手は出てこなくなると思う。
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!
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8月、MLB機構は禁止薬物を使用していたとして、8月8日から2014年シーズン末までの全ての試合(211試合)の出場停止処分とすると発表した。A-RODはこれに対して異議申し立てを行い、2013年シーズンいっぱい試合に出続けた。
今回の発表は、調停人より下されたものだ。
昨日の発表に対し、A-RODは連邦裁判所に差し止め命令を求める意向だが、ヤンキースは大リーグの薬物協定と仲裁人の決定を尊重すると発表。MLB選手会も、A-RODのに気配りを示しつつもプロセスは公正だったとし、裁定を受け入れると発表。
まさに四面楚歌である。
ヤンキースはA-RODに対して支払うべき2500万ドルが浮くことになる。田中将大獲得に向けて拍車がかかるに違いない。
アレックス・ロドリゲスは、攻守のバランスが取れたMLB最高の選手だった。MLB2年目で同僚になった松井秀喜が「とてもかなわない。パワーが違う」とため息をついたのをよく覚えている。
軽くスイングしたように思えた打球が、とてつもない飛距離になった。ミート力も抜群だった。
また、ヤンキースに移るまではデレク・ジーターと並ぶ遊撃手でもあった。
さらにスラッガーとして注目されるようになってからも、シーズン20盗塁をする脚力の持ち主でもあった。
天から野球に関するあらゆる才能を与えられたと選手、というのがふさわしかった。
しかし、若いころからA-RODは神経質で、メディアとは相性が良くなかった。
また、マリナーズを移籍したときは、大ブーイングを浴びせかけられた。さらにテキサス時代は抜群の成績の割に「優勝に貢献していない」とも評された。
彼の人生を狂わせたのは「Money」だったと思われる。
年俸の推移を加えたキャリアSTATS

彼は辣腕、剛腕で知られるスコット・ボラスを代理人とし、レンジャース、ヤンキースとチームを移るたびに天文学的な年俸を手にしてきた。
特に2007年に結んだ10年総額2億7,500万ドルという契約は、今に至るも史上最高額である。
契約満了時、A-RODは42歳。まだ4年も残っている。あり得ない契約といってよいだろう。
「金の亡者」のように呼ばれてきたA-RODは、社会の批判を浴びないためにも毎年、好成績を上げる必要があった。
薬物に手を出したのは、そのプレッシャーからだったことは想像に難くない。
マーク・マグワイア、サミー・ソーサ、バリー・ボンズやロジャー・クレメンスなどが非難をされた後にも関わらず、彼は薬物にすがろうとしたのだ。
当初、MLBでは薬物の使用は「禁止」ではなかった。しかし一連の事件を経て、「薬物使用」は禁止された。A-RODの疑惑は、その後に発覚しただけに、世間の反応は一層厳しかったのだ。
彼について語るとき、全盛期の素晴らしいプレーよりも「薬物で悪あがきをした金満選手」と言う言葉が先に来ることになろう。
シーズン終了後、A-RODは再起を目指すだろうが、周囲の目はさらに厳しくなるだろう。事実上の引退を余儀なくされるのではないか。
成績だけなら優にその資格があるにもかかわらず、野球殿堂入りもほぼ絶望だろう。
薬物疑惑は、MLBにはびこる拝金主義と表裏一体の関係といってよいと思う。A-RODはその象徴となった。
しかし、この教訓は生かされていない。A-RODのチームメイトだった31歳のロビンソン・カノは、シアトル・マリナーズと10年2億4,000万ドルの契約を結んだ。この契約は、ほぼ間違いなく、残念な結末を迎えるはずである。
MLB、そして選手は、A-RODに学ぶべきだ。そうでなければ、今後、人々の尊敬を集める大選手は出てこなくなると思う。
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コメント
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日本人はスポーツの能力が高いと人間的にも優れていると勘違いしている人が多すぎます。
だとしたらその程度の選手だった、と判断されますね。世間からは。
能力と人間性は全く関係ない。
むしろ野心や下心を持っている人間の方が、自分の目的のために
仕事に対して注力する。
逆に仕事をほどほどにやってる人に、意外に人間性に
優れた人が多かったりするんだよなぁ。
人間って不思議な生き物だよ。
マグワイア、ボンズの時には「まだA-Rodがいる」というのがファンの支えになったものですが、遠い昔のような気がします。
彼の罪は、「まだ○○(若手有望株)がいる」と言いたいときに「だが○○もドーピングしていやしないだろうな・・・」という疑念を抜きに出来なくしてしまったことではないでしょうか。マグワイア>ボンズ>A-rod>Rブラウン、という系譜がこれ以上繋がらないことを期待します。
人間、言葉や顔の表情は心の窓ですが、彼のインタビューでの受け答えを見て、どうしても嘘をついてる人間の表情とは思えない。
それに加えて例のクリニックの顧客リストに名前があったという状況証拠だけでクロの判定が下ってしまうのが理解できないのです。
司法の場で彼の無実が証明されるのを祈るばかりです。
A-RODを獲得する他国の野球チームはあるだろうか?メキシコ、ベネズエラ、日本、韓国、台湾…。
それ以前に各国野球機構は薬物使用した選手を受け入れるだろうか?
NPBの場合、6月になって自チームの外国人選手が不振に陥った球団が「出戻り外国人もダメだ、2軍の若手を我慢して使うのもダメだ」と背に腹は代えられない、と思うと獲るかもしれない…。登録名は「A-ROD」(エーロッド)で。
守備では三塁、一塁、DHだから意外とありそうだ。
Cキラ、Tゴメス、Bsペーニャ…、このあたりがコケるとありそうだ。
勿論我がイーグルスもユーキリスがコケたらひょっとすると…。
但し年俸は日本円で基本給3000万円プラス出来高5000万円払いで合計8000万円の1年契約で十分だ。間違っても億単位で契約すべきでない。
最も本人はAJやユーキリスが3~4億の年俸だからそれ位要求するだろうが、NPBの球団は突っぱねてほしい。「薬物を使ってなければ払ったんだがね…」と強気の態度で。
いかんいかん、日本に来るとつい妄想してしまった。
来たら来たで見てみたいが。
ステロイド始め精神に異常をきたすものは多いですからね
ベースボールジャーナルの記事を読むと日本・韓国・台湾でプレイできないそうです。独立リーグしかないそうで。
広尾さんが不適切と判断したら削除してください。
大変失礼しました。
ちょっと話は逸れますが、マダックスの殿堂入りに関してステロイド期の選手には投票しないと言った記者がいましたが、あの頃の体制では誰がやって誰がやっていなかったかは判らないという点で、一つの見識だとは思いますね。
>日本人はスポーツの能力が高いと人間的にも優れていると勘違いしている人が多すぎます。
こういう勘違いは、スポーツではなく、「体育」の視点なんですよね。日本のスポーツが学校において、教育に組み込まれて発展してきたことの弊害なのでしょう。
それは余談として、A-RODのドーピングは、昨今では高校時代にまでさかのぼるという話まで出てきています。他の選手にも同様の噂がいくつもあります。もはや、成績へのプレッシャーとか、そういう次元を超えてしまうほどに深刻な問題です。
そして、この話を聞いた時に、MLBは野球賭博ではあのピート・ローズでさえ永久追放にしたのに、なぜドーピングで永久追放者を出せないのだろうということを思わずにはいられませんでした。
薬物なんかに頼らなくても十分立派な成績を残せたはずの選手が安易に薬物に手を出してほしくなかった。
Kさんのご意見にも同意します。日本はどうも武道の延長というか、健全なる精神は健全なる肉体に宿るという神話が幅を利かせていますから(^_^;)
まあ、薬物に手を染めた瞬間に健全なる肉体ではなくなってしまったように思いますが。
ただ、アメリカにもロールモデルという、スポーツ選手には青少年のお手本になるべし的な考え方はあるみたいですが。
裁判が絡んでくれば、OJシンプソンの事件のようにならないでしょうか。A・ロッドならいくらでも有能な弁護団を雇えるような気がします。いつの間にかシーズン中に復帰していたりして。
話は変わりますが、NYY時代徒党を組んでいたカブレラは薬物使用違反がありました。カノーにもA・ロッドの手が伸びていなければよいのですが。この点が気がかりです。
そんな信頼性の低い検査ってどうかと思いますので、検査の信頼性を高める努力が必要ですよね。
たまたま見つかった顧客リストの該当者だけ処罰してますが、こんな様子では他に明るみに出てない連中が数限りなくいるのではと思わせます。
規律の公平性の面を考えると、検査を実施している以上、顧客リストとか暴露証言とかイレギュラーな理由ではなくあくまで検査だけで処罰対象を決めるのが公正だろうとも思いますが、悪者を放置してしまう感じになってしまうので難しいのでしょうか。
Aロッドの薬物使用と、その結果としても転落も残念ですが、MLBの決定にも残念な思いがします。
あまり好きな選手ではありませんでしたが、メジャーに復帰できることを願っています。
A・RODには実害なしってことになったりするんでしょうか?
それはともかく、拝金主義云々というのは少々見方が違うような気がします。
北米プロスポーツ以外の競技でドーピングが発覚するのはスポーツ自体の死活問題となります。
ドーピングの結果アンタッチャブルなレコードができてしまえば記録更新に対する興味は失われますし、圧倒的な勝者の結果がドーピングによるものであれば他の選手に対しても疑惑の目が向けられる上スポンサーを失うことになるからです。
対して北米プロスポーツにおいては、コンテンツに価値を作ることができているため 記録の正当性に対してあまり頓着しない傾向があるように思えます。
最近はそうでもありませんが、プロレスラーがドーピングをしてもあまり咎められないのと同様だというとわかりやすいでしょう。つまり拝金主義というよりも、あくまでエンターテイメントという意識の強さが原因ではないのでしょうか?
正直、A・ロッドが居る事で巻き起こる喧騒がチームに与える悪影響は計り知れないし、チームの規律を立て直す為には違約金払ってでも出て行ってもらう方が賢明な気がしますが
一筋縄ではいかない問題の根深さが事態をここまで長期化させたのでしょう。
何しろA・ロッド側の主張の根拠は「検査でシロ」である訳で
今回の様に状況証拠だけではいつ第二・第三のA・ロッドが現れるか分からない。
オリンピックの脱ドーピング体制に一定の信頼性があるのは四年後八年後など経年後の検査・発覚にあると思われますからMLBも脱ドーピング宣言を担保する為にはもっと高い証拠収集能力を実現させるべきだと考えます。
①毎年全メジャー選手の血液サンプル強制徴収して「球団」と「MLB機構」で保管する。
②シーズン終了時タイトル獲得選手及び無作為選手を検査対象にする。
③引退後殿堂候補入りした際に対象選手の全シーズンサンプルを検査する。
A・ロッド騒動後にはこれぐらいの検査体制を構築して欲しいです。