ヤンキースに決定したと言うのは、素晴らしいことではあるが、よりによって一番プレッシャーのかかるチームを選んだということでもある。
報知新聞蛭間記者
超大型契約の勝者は代理人。マー君には余計な重圧が(第759回)
田中が昨年中盤と同じ体調で投げることができれば、昨年並みとはいかないまでもエース級の活躍をするのはほぼ確実だと思う。
制球力、変化球のキレに加えて、走者が出ればギアチェンジができるポテンシャルの高さは、MLBでも通用するだろう。
ラズナーやアンドリュー・ジョーンズなどMLBで経験を積んだ選手が太鼓判を押していることでもそれがわかる。
しかし田中については大きな懸念材料がある。それは昨年の酷使だ。
楽天は昨年のポストシーズン、田中の先発救援での八面六臂の活躍で日本一を勝ち取った。しかしそれは、田中に過大な負担となった。
この負担が肩に蓄積して、翌年以降のマウンドに影響を与えることがないのか。
ここ8年間、NPBで3000球以上投げた投手のリスト。MLBに移籍した選手は移籍後の投球数も示した。また、ポストシーズンに多かれ少なかれ登板した投手にはマーキングをした。
赤字は3000球投手。

NPBのレギュラーシーズンで、3000球以上投げた投手は両リーグ併せて最大で10人、昨年はメッセンジャーと金子千尋だけだった。
田中はレギュラーシーズンは2981球だがポストシーズンで438球を投げている。
NPBで3000球以上を2年以上連続して投げた投手は、ここ8年で杉内、三浦、成瀬、前田健太、メッセンジャー、ダルビッシュの5人しかいない。
田中はルーキーだった2007年に3077球を投げたが翌年以降投球数は減った。2011年に再び3123球を投げたが、翌年は2439球に落ちている。
2013年、WBCも含めれば3500球を投げた田中が、今年、MLBで同じように投げることができるかどうかは全く分からない。
今季、MLBで3000球以上投げた投手。



ジャスティン・バーランダーの3692球を筆頭に、49人いる。例年60人前後だから今年は少ないくらいだ。
平たく言えば、200回、3000球を投げるのが、MLBの先発投手の最低ラインだといっても良いと思う。
RS(援護点)によって勝ち星は変動するだろうが、田中にとっても、MLBでの合格ラインは200回、3000球になるだろう。
田中のNPBでの数字の経緯を考えれば、2014年の田中は2000~2500球程度。投球回でいえば130~160回程度になる可能性も大きいのではないかと思う。
そうなれば、ニューヨークのファンは失望することになる。
最初の表の中と同じ表で、MLBに移籍した投手をピックアップし、田中の成績と比較した。

ダルビッシュは日本人投手で唯一、NPBからMLBに移籍しても変わらず3000球を投げ続けている。田中にも可能ではないかという見方もできる。
しかし2011年のダルビッシュは前年のオフから肉体改造に取り組んでいた。マッチョな体格に変身し3387球を投げ込んだのだ。
彼はこのシーズンの最終戦、登板を回避し、田中将大に最多勝を譲っている。これも肩の酷使を恐れたからかもしれない。
金田正一、江本孟紀などは、投手には筋力アップは不要だ。走ることと投げ込むことで肩とスタミナを作れと言っているが、ダルはMLBではそれは通用しないと考えて、MLB仕様に肉体を改造したのだ。
黒田博樹は、MLBに移籍してから2年、シーズンを通してローテを維持することができなかった。しかし2010年からは連続して3000球を投げている。MLBに移籍してから投球法、調整法を変えて適応したということだろう。
岩隈久志も同様の過程を経たのだと思う。
反対に松坂大輔は1年目こそ3479球を投げたが翌年以降投球数は減少し、期待を裏切り続けている。
NPBの先発投手は中6日で回っている。中4日が基本のMLBのスターターが毎年3000球を投げることができるのに、NPBの投手はなぜできないのか。
昨年、森繁和さんにお聞きしたところ、NPDでは多くの投手は中6日の間に投げ込みをするという。
仮に投げ込みを50球としても、NPBの投手は公式戦の登板での投球数に加えて1000球ほど多く投げていることになる。
MLBでは登板と登板の間に投げ込むことはあり得ない。「ノースロー」が基本だ。
そのために、NPBの投手はMLBより多くの球数を投げることができないのだと言う。
「これ以上先発投手の登板間隔が開くのは良くない。投げ込みをする日が2回になったりしたら、投手は余計に投げることができなくなる。登板間隔は短くする方がいいね」
とのことだった。
推測ではあるが、ダルビッシュは2010年あたりからノースロー調整を始めていたのではないか。それによってより多くの球数を永年に渡って投げることができるようになったのではないか。
対照的に松坂大輔は、日本流の調整に固執した挙句、MLBに適応できなくなったのではないか。


田中はイニングの間にベンチ前でキャッチボールをよくする投手だ。MLBではそれも禁止されている。松坂はこれにも違和感を抱き続けたが、こうしたことにも順応していかなければならない。

さらに懸念を言うなら、ヤンキースのメディカルチェックにパスするだろうか。岡島秀樹のように引っかかることはないか。
ヤンキース田中将大はもちろん楽しみではあるが、こうした懸念を払しょくできるのかどうか。今年は気をもむことが多いシーズンになりそうだ。
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制球力、変化球のキレに加えて、走者が出ればギアチェンジができるポテンシャルの高さは、MLBでも通用するだろう。
ラズナーやアンドリュー・ジョーンズなどMLBで経験を積んだ選手が太鼓判を押していることでもそれがわかる。
しかし田中については大きな懸念材料がある。それは昨年の酷使だ。
楽天は昨年のポストシーズン、田中の先発救援での八面六臂の活躍で日本一を勝ち取った。しかしそれは、田中に過大な負担となった。
この負担が肩に蓄積して、翌年以降のマウンドに影響を与えることがないのか。
ここ8年間、NPBで3000球以上投げた投手のリスト。MLBに移籍した選手は移籍後の投球数も示した。また、ポストシーズンに多かれ少なかれ登板した投手にはマーキングをした。
赤字は3000球投手。

NPBのレギュラーシーズンで、3000球以上投げた投手は両リーグ併せて最大で10人、昨年はメッセンジャーと金子千尋だけだった。
田中はレギュラーシーズンは2981球だがポストシーズンで438球を投げている。
NPBで3000球以上を2年以上連続して投げた投手は、ここ8年で杉内、三浦、成瀬、前田健太、メッセンジャー、ダルビッシュの5人しかいない。
田中はルーキーだった2007年に3077球を投げたが翌年以降投球数は減った。2011年に再び3123球を投げたが、翌年は2439球に落ちている。
2013年、WBCも含めれば3500球を投げた田中が、今年、MLBで同じように投げることができるかどうかは全く分からない。
今季、MLBで3000球以上投げた投手。

ジャスティン・バーランダーの3692球を筆頭に、49人いる。例年60人前後だから今年は少ないくらいだ。
平たく言えば、200回、3000球を投げるのが、MLBの先発投手の最低ラインだといっても良いと思う。
RS(援護点)によって勝ち星は変動するだろうが、田中にとっても、MLBでの合格ラインは200回、3000球になるだろう。
田中のNPBでの数字の経緯を考えれば、2014年の田中は2000~2500球程度。投球回でいえば130~160回程度になる可能性も大きいのではないかと思う。
そうなれば、ニューヨークのファンは失望することになる。
最初の表の中と同じ表で、MLBに移籍した投手をピックアップし、田中の成績と比較した。

ダルビッシュは日本人投手で唯一、NPBからMLBに移籍しても変わらず3000球を投げ続けている。田中にも可能ではないかという見方もできる。
しかし2011年のダルビッシュは前年のオフから肉体改造に取り組んでいた。マッチョな体格に変身し3387球を投げ込んだのだ。
彼はこのシーズンの最終戦、登板を回避し、田中将大に最多勝を譲っている。これも肩の酷使を恐れたからかもしれない。
金田正一、江本孟紀などは、投手には筋力アップは不要だ。走ることと投げ込むことで肩とスタミナを作れと言っているが、ダルはMLBではそれは通用しないと考えて、MLB仕様に肉体を改造したのだ。
黒田博樹は、MLBに移籍してから2年、シーズンを通してローテを維持することができなかった。しかし2010年からは連続して3000球を投げている。MLBに移籍してから投球法、調整法を変えて適応したということだろう。
岩隈久志も同様の過程を経たのだと思う。
反対に松坂大輔は1年目こそ3479球を投げたが翌年以降投球数は減少し、期待を裏切り続けている。
NPBの先発投手は中6日で回っている。中4日が基本のMLBのスターターが毎年3000球を投げることができるのに、NPBの投手はなぜできないのか。
昨年、森繁和さんにお聞きしたところ、NPDでは多くの投手は中6日の間に投げ込みをするという。
仮に投げ込みを50球としても、NPBの投手は公式戦の登板での投球数に加えて1000球ほど多く投げていることになる。
MLBでは登板と登板の間に投げ込むことはあり得ない。「ノースロー」が基本だ。
そのために、NPBの投手はMLBより多くの球数を投げることができないのだと言う。
「これ以上先発投手の登板間隔が開くのは良くない。投げ込みをする日が2回になったりしたら、投手は余計に投げることができなくなる。登板間隔は短くする方がいいね」
とのことだった。
推測ではあるが、ダルビッシュは2010年あたりからノースロー調整を始めていたのではないか。それによってより多くの球数を永年に渡って投げることができるようになったのではないか。
対照的に松坂大輔は、日本流の調整に固執した挙句、MLBに適応できなくなったのではないか。
田中はイニングの間にベンチ前でキャッチボールをよくする投手だ。MLBではそれも禁止されている。松坂はこれにも違和感を抱き続けたが、こうしたことにも順応していかなければならない。

さらに懸念を言うなら、ヤンキースのメディカルチェックにパスするだろうか。岡島秀樹のように引っかかることはないか。
ヤンキース田中将大はもちろん楽しみではあるが、こうした懸念を払しょくできるのかどうか。今年は気をもむことが多いシーズンになりそうだ。
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コメント
コメント一覧
メディカルチェックした後の正式契約をしたのでしょうか?
渡米した折、メディカルチェックをしたのは事実。
これをNYYとして認めるのか?
あるいはNYYが新たに診察して、OKなら正式契約なのか?
上原の例を考えればまだ考えられなくもないでしょう。
メディカルチェックに関しては、先日の渡米の際に済ませているようです。そのデータは代理人を通じて交渉を行った各球団に配られていると思われるので、ひとまずその点は大丈夫でしょう。
懸念があるとすれば、やはり調整法等の違いを克服してMLBにアジャストできるかどうかではないでしょうか。
あと、ドラゴンズファンとしては、森繁さんの話も興味深いものがあります。昨年の「野球好きニュース」で一部拝見しましたが、それをどう実践するのか、少しだけ期待しています。
しかし、それも黒田がいますし、岩隈からも話を聞いているでしょうから、大丈夫だと信じたい。
メディカルチェックの件ですが、ロス渡米の際におこなった医師は、過去に黒田を何度も診断したことのある医師だったようですね。ヤンキースはその診断を信用、球団独自のメディカルチェックは行わないだろうという憶測も現地であるようです。
https://twitter.com/DanBarbarisi/status/426011948665561088
ちょっと心配です。
NYYでメディカルチェックに引っかかったことがあるのは岡島秀樹です。
ST前のチェックでだめになりました。
修正します。感謝。
この超大型契約はNPBにとってエポックメーキングになるでしょう。
例えマー君が活躍できなかったとしてもです。
成績が駄目⇒ NPBでも酷使に対する風当たりが強まり
故障しないような(当たり前の)使い方になる。
長期的ですが。
大活躍 ⇒ 日本人投手の需要向上
非難を恐れずに言えば、
メディカルチェックで契約破棄になったとしても
NPBに与える影響は非常に大きい。
選手を酷使せず、長期的に成長・活躍できる起用に流れが変わると思うからです。
根拠はありませんが、
スプリングトレーニング前のメディアカルチェックで
ひっかる可能性もあると思っています。
酷使というか田中のような高卒1年目から投げさせ始める育成は問題視されるようになるでしょうね。
去年の田中が酷使ならここ7年毎年3200球以上投げててここ3年はプレーオフでも20イニング以上投げてるバーランダーなんてもっと酷使でしょう。
田中の契約は失敗に終わるでしょう。7年間ここ3年の黒田くらい働かないとですが、それは日本で7年やってる早熟な田中にはさすがに無理。
そんな主観丸出しのイメージだけで選手を決めつけないでください。
自分は能力と健康かどうかと全盛期がまだ残ってるかが一番と思います。