よく情報番組の芸能コーナーに「○○スポーツ芸能デスク」なる人物が登場して、芸能人のゴシップを語ることがある。私はそのたびに「月給をもらって芸能人の尻を追いかけまわす仕事があるんだ」と思う。
ダルビッシュは2月11日付のスポーツニッポンに、カトパンことフジテレビの加藤綾子アナウンサーと都内高級割烹などでデートを重ねていると報じられた。
これに対しダルはtwitterで「確認しにこないで断言ですからね」とスポニチから直接取材を受けていないとし、「キャンプでスポニチの質問には答えないつもりでいます」と返した。

日刊サイゾーによれば、
スポーツ紙関係者は
「何言ってんだか、って感じですよ。ダルはスポニチに記事が掲載されることを知っていたどころか、どうすれば火消しできるか協議していたそうですよ」と話した。そして“上から目線”に、マスコミ関係者は「何様だ!」
と不快感を示したという。

「何様だ!」と言われれば「選手様だ」と返すしかない。選手はスポーツの「主役」であり、最も尊重されるべき存在である。記者などとは比べようもない。

私はダルビッシュのようなアスリートは、グランド内で最高のパフォーマンスを見せてくれれば、それでいいと思う。
あとは一切気にならない。どこで何を食べようと、何人の女性と付き合おうと、全く興味がない。榎本喜八じゃあるまいし、修行僧のような生活をしろと言う気はさらさらない。

法に触れるようなことは論外だが、独身で大金持ちで、見上げるような鉄躯で、ハンサムな27歳が、浮いた話の一つや二つない方がおかしい。
そして、それが「ニュース」だとも「スキャンダル」だとも思わない。ごく当たり前の、よくある話である。

ダルビッシュは早くアメリカに「帰りたい」と思ったことだろう。あちらではMLB選手のプライベートは守られるのだ。



この手のスポーツ紙芸能記者は、選手のプライベートは追いかけるが、球団幹部や上層部を追いかけることはしない。
2004年、ダイエーホークスの高塚猛社長は女性社員への強制わいせつ罪で逮捕された。
高塚は工藤公康に対し年俸査定の席で「君が投げる日は客の入りが悪い」と言った人物だ。また小久保裕紀を巨人にトレードした人物だ。
彼は、日常的に女性社員の体を障ったり、卑猥な言葉を投げかけたりしていた。裏金めいた金の操作もしていた。
スポーツ紙記者はそれをずっと目にしてきたはずだが、報道することは無かった。事件が発覚してからそれを報じただけだ。

彼らは「権力」周辺の人物の本当の「スキャンダル」は取り上げない。「告発」はしない。人気や金はあっても立場の弱い選手の、取るに足らないプライベートをさもさも大ごとのように取り上げるのである。
“ジャーナリストごっこ“をしているというべきか。

「週刊大衆」は、ソチ五輪でのスケート選手の不振の原因として、日本の報道陣の姿勢に言及した。

「注目選手になるほど、門外漢の記者にレベルの低い質問を何度も繰り返されるケースが増え、相当なストレスになると思います。また、取材陣が空港やホテルで"出待ち"するのは日本だけ。海外メディアからは笑われていますよ」

レベルの低い記者の中に「大衆」は含まれていないのか、と突っ込みたくなるが、要するにプロアマ問わず日本の有名選手の周辺には、絶えずこの手の「取材陣」がたむろしているのである。
猪瀬直樹が気鋭のジャーナリストだった時に、故梨元勝が取材の苦労を話し出した途端、「あんたのやってることなんて、どうでもいいんだよ」と吐き捨てるように言ったのを思い出す。「どうでもいいこと」だけを追いかけるのが、芸能記者だといっても良いかもしれない。

しかしながら、私は「芸能記者はけしからん」と言いたいわけではない。「芸能記者」は、ニーズがなければ存在しない。

日本人の多くが、有名人のプライベート、とりわけ下半身事情を知りたいと熱心に思っているから、こんな職業が生まれたわけだ。

スポーツ紙に「芸能記者になりたい」と思って入社する若者はほとんどいないだろう。

大部分はアスリートの高度なプレーを記事にしたいと思って入社するはずだ。
芸能記者の多くは、心ならずもこの仕事に就いたのではないだろうか(その後やりがいを見出す人はいるだろうけど)。

日本の芸能記者の跳梁跋扈は、「プレイヤーズファースト」の欠如の端的な表れだ。
日本には、スポーツ選手も芸能人と同じようにプライベートをさらけ出し、媚を売るべきだという人がたくさんいるのである。

それは仕方がないと思うが、芸能記者はえらそうに「取材の権利」を主張できる立場ではないことは弁えてほしい。スポーツ選手の本業だけは邪魔しないでいただきたい。

スポーツのことには関心がない「お邪魔虫」であることを重々認識して、遠慮がちに動いてほしいと思うまでだ。


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