ほんの2年前まで、私はまったくの部外者だったが、最近はありがたいことに球界関係者やマスメディアの人と話をさせていただくことが多くなった。
とまどうような話をされることがある。
「知っていると思うけど、元選手の〇〇のバックには、●●(暴力団の幹部)がいるんです。だから、彼の取材は難しい。彼がからんだ出版物や、キャラクター商品も作れないんです」
誰でも知っているような大物選手である。驚きを押し殺して平然とした顔で話を聞く。話してくれるのはジャーナリストや編集者であり、私に対して嘘やほら話をする必要のない人である。

そういうことが一再ならずあった。
プロ野球界には、未だに裏社会と繋がっている人間がいるのは間違いないのだろう。

私は30年ほど前、落語家の団体に勤務していた。芸人とやくざは繋がっているように言われるが、そういう人物の影を感じることは殆どなかった。しかし、他の落語家たちと交流がないアウトロー的な芸人の中には、それらしき人物がマネージャーとしてついてくることもあった。しかし、ギャラなどに口をはさむことはなかった。

やくざは、金の匂いをかぎ分けて近寄ってくると言う。当時の上方落語協会は、月10万円の私の給料さえ滞るような状態だったから、相手にされなかったのだろう。

大相撲の世界も少しだけ知っているが、出世できなかった力士がやめて暴力団に面倒を見てもらうのは当たり前の話だった。元横綱でやくざと義兄弟になっている人もいた。
そもそもパチンコや飲食業など「タニマチ」自体が裏社会の「公然企業」であることも多かった。
八百長や、様々な不正、不法行為を引き起こす土壌は、こう言う形でできていたのだ。

プロ野球界も以前は大相撲とほとんど同じだった。試合が終わればタニマチが選手を引き連れて飲み歩く。ややこしい店にも足を踏み入れる。
1970年にプロ野球界を震撼させた「黒い霧事件」は、まさにそうした中で裏社会の人間と一部プロ野球選手が結託して起した事件である。
この事件によって西鉄ライオンズは破滅し、身売りした。またパリーグ自体も信用を失墜した。さらに西鉄関係者だけでなく、セパの多くの選手が「黒い交際」によって処罰された。

以後、NPBは裏社会と選手の交際には厳しい目を注いできた。先日述べたように、私設応援団の排除も裏社会との関係を問題視してのことだ。
しかしながら、以後も「事件」や「黒いうわさ」は絶えない。

今発売中の『週刊文春』は、清原和博が薬物を乱用して緊急入院をしたと報じている。
また、最近、異常な言動が目立ったとも書いている。
清原側は、入院は「糖尿病の治療」が目的だったと反論、文春側に法的措置も考えるとコメントした。

糖尿病患者が入院して集中治療を受けることはある。HbA1c値が極端な数字になると、卒倒することもある。その反動として低血糖になれば、異常な言動をすることもある。
しかし入院した病院が内科系ではなく、精神科の病院だったと言うのは疑わしい話だ。

清原は、高校時代から桑田・清原と並び称され、プロでも2000本安打を記録したスター選手である。彼が覚せい剤などを使用していたことが事実だとすれば、プロ野球界も大きなダメージを受ける。深刻な話だと思う。



いつも思うのは、こうした野球界のスクープをするのは例外なく週刊誌だと言うことだ。
日常的に野球選手と行動を共にし、ときにはプライベートにまで関与するスポーツ紙や一般紙の運動記者などが、選手のスキャンダルを暴くことは皆無だ。
週刊誌のスクープについて、スポーツ紙の芸能記者が後追いをすることはあるが、密着しているはずの新聞記者がスクープすることはない。
そういう記事を書けば、NPBや球団から「出入り禁止」の処分になるからだ。

清原はNPBの部外者だが、その日常を知る新聞記者は多かったのではないか。彼らがそうした問題行動を記事にしなかったのは、「野球選手の不祥事は見て見ぬふりをする」習慣が沁みついているからではないか。

私は清原の事件の背景に、さらに大きな「汚染」が広がっているのではないかと思う。現役選手と裏社会も繋がっているのではないかと思う。
そういうものが温存され、力を蓄えていくこと憂慮する。

いわゆる「運動記者クラブ」のジャーナリスト諸氏は、読者のために記事を書いている。
NPBの「臭いものに蓋」に協力するためでも、野球選手のためでもない。
今回の事件の真相はどうなのか、新聞側の見解を是非聞きたい。

NPBの健全な発展のためにも、新聞記者は野球界と裏社会のつながりについて言及してほしい。
そして「悪いことも書く」本来の機能を回復してほしい。


私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!


オフチューブって何だ?

3月8日、たぶん今日、店頭に並びます。アマゾンでも販売中!





クラシックSTATS鑑賞もご覧ください。 樋笠一夫本塁打大全

Classic Stats



『「記憶」より「記録」に残る男 長嶋茂雄 』上梓しました。






広尾晃 野球記録の本、アマゾンでも販売しています。