昨日、同志社大学で開かれた「第8回日本統計学会春季集会」に行ってきた。野球関係の発表があったからだ。
ポスターセッションという発表形式。高校の文化祭などで、模造紙に書いた発表を生徒が横に立って説明するのがあるが、あのスタイルだ。

専門的な発表であり、門外漢の私には理解が厳しかった。野球関連の4つの発表だけ説明を受けた。
■傾向スコアによる犠牲バントの効果の推定
慶應義塾大学の発表。
無死一塁という状況に限定し、送りバントは得点を得る上で効果的かどうかを検証した。NPBの実際のデータに基づいて分析した結論は「効果的ではない」とのことだった。
■投手の"見えない"能力を探る ~ノビ,キレの定量化~
大阪大学の発表
ノビは速球の空振り率、内野フライ率で求められるとし、キレは変化球のゴロアウト率で求められるとする。これもNPBの2012年のデータに基づいて、各投手のノビとキレを数値化した。
非常に面白い。こういうデータが出ていた(一部抜粋)。

キレは変化球の数値、ノビは速球の数値だから、どちらを得意とするかがくっきりと分かれる。
ベテランになるとどちらの数値もマイナスになる。球の劣化を制球力や駆け引き、配球で補うのだろう。
この年の田中将大は、5月に戦線離脱するなどやや不調だった。
藤川のノビの数値が大きいのも目立つ。
一般的なSTATSとからめることで、選手の評価や予測に役立てることが可能だろう。
■プロ野球におけるゴロに対する最適な内野手の守備位置
中央大学の発表。
最も遅れていると言われる守備記録についての発表。
ゴロの飛んだ場所を座標化し角度を割り出し、内野手の守備位置ごとのゴロの処理数(安打、失策含む)を出し、内野の適正な守備位置を割り出している。
こういうグラフ。

結論として三塁手は定位置よりも右に1度(52cm)、一塁手は左に3度(156cm)寄って守るべきだと言うことだ。
一塁手は走者がいるときにベースに着くが、投手が投球した瞬間に3度、内側に移動するべきだとも述べている。
■項目応答理論を用いた日本プロ野球における打者・投手の評価付け
東京大学の発表。
打者の「出塁する力」、投手の「出塁を防ぐ力」を算出し、ランキングしている。
2012年度セリーグの打者パラメータのランキング
1位は前田智徳、2位は阿部慎之助、3位は長野久義、4位はバレンティン
投手パラメータのランキング
1位は成瀬善久(パリーグ?)、2位は加藤康介、3位は山口鉄也、4位マシソン
打者は打席数上位150人、投手は投球回数上位100人を対象にしたとのこと。
打者は出塁率のランキング、投手は被出塁率のランキングとほぼ同じである。


面白かった。こういう分野で人材が育ってくると楽しみだ。同時に学問というのはこういうものなのだな、とも思った。
たった4つでは何とも言えないのだが、膨大な基礎データを使って出した分析結果が
「バントは効果的ではない」
「一塁手、三塁手はもう少し内側に守るべき」
学問的には意義があるかもしれないが、実戦に活用できるのかどうか。
また統計学を駆使して算出したデータが出塁率や被出塁率とほとんど変わらないのもどうなのか、と思った。
発表者はセイバーメトリクスとは距離を置いているようで、「OPSなんてデータではない」という声も聞こえた。
私も「出塁率+長打率」というデータはあまりにも大雑把すぎると思うが、MLBでは重要な指標として尊重されている。
統計学を野球にどのように生かすべきか、もう少し考えてみたい。
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!
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専門的な発表であり、門外漢の私には理解が厳しかった。野球関連の4つの発表だけ説明を受けた。
■傾向スコアによる犠牲バントの効果の推定
慶應義塾大学の発表。
無死一塁という状況に限定し、送りバントは得点を得る上で効果的かどうかを検証した。NPBの実際のデータに基づいて分析した結論は「効果的ではない」とのことだった。
■投手の"見えない"能力を探る ~ノビ,キレの定量化~
大阪大学の発表
ノビは速球の空振り率、内野フライ率で求められるとし、キレは変化球のゴロアウト率で求められるとする。これもNPBの2012年のデータに基づいて、各投手のノビとキレを数値化した。
非常に面白い。こういうデータが出ていた(一部抜粋)。

キレは変化球の数値、ノビは速球の数値だから、どちらを得意とするかがくっきりと分かれる。
ベテランになるとどちらの数値もマイナスになる。球の劣化を制球力や駆け引き、配球で補うのだろう。
この年の田中将大は、5月に戦線離脱するなどやや不調だった。
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■プロ野球におけるゴロに対する最適な内野手の守備位置
中央大学の発表。
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こういうグラフ。

結論として三塁手は定位置よりも右に1度(52cm)、一塁手は左に3度(156cm)寄って守るべきだと言うことだ。
一塁手は走者がいるときにベースに着くが、投手が投球した瞬間に3度、内側に移動するべきだとも述べている。
■項目応答理論を用いた日本プロ野球における打者・投手の評価付け
東京大学の発表。
打者の「出塁する力」、投手の「出塁を防ぐ力」を算出し、ランキングしている。
2012年度セリーグの打者パラメータのランキング
1位は前田智徳、2位は阿部慎之助、3位は長野久義、4位はバレンティン
投手パラメータのランキング
1位は成瀬善久(パリーグ?)、2位は加藤康介、3位は山口鉄也、4位マシソン
打者は打席数上位150人、投手は投球回数上位100人を対象にしたとのこと。
打者は出塁率のランキング、投手は被出塁率のランキングとほぼ同じである。
面白かった。こういう分野で人材が育ってくると楽しみだ。同時に学問というのはこういうものなのだな、とも思った。
たった4つでは何とも言えないのだが、膨大な基礎データを使って出した分析結果が
「バントは効果的ではない」
「一塁手、三塁手はもう少し内側に守るべき」
学問的には意義があるかもしれないが、実戦に活用できるのかどうか。
また統計学を駆使して算出したデータが出塁率や被出塁率とほとんど変わらないのもどうなのか、と思った。
発表者はセイバーメトリクスとは距離を置いているようで、「OPSなんてデータではない」という声も聞こえた。
私も「出塁率+長打率」というデータはあまりにも大雑把すぎると思うが、MLBでは重要な指標として尊重されている。
統計学を野球にどのように生かすべきか、もう少し考えてみたい。
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!
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コメント
コメント一覧
セイバーメトリクスとの関係性についても、試合をしてお金が動く現場と、学的探究と厳密性の間の揺らぎは興味深い話題です。
初めて聞く研究が多いだけに、学会の現地にいればこれを肴にいくらでも時間が潰せそうですね。
そういうイベントがまたあれば、みんなでぜひ出かけたいものです。
春季があるということは秋季もあるんでしょうね。
今度はぜひチェックして足を運んでみたいと思います。
頭ごなしに否定するのではなくその分野の考えにしっかり触れてから批評してほしいですね・・・
セイバーではむしろ根拠を持って作られた指標のほうが多いように思えます。例えば現在有用とされてるwOBAという打撃指標においても過去の数年間全ての試合という莫大な実際のプレーの蓄積から係数を導き出しているのです。
自分もまだまだ詳しくないので細かいことを突っ込まれても厳しいのですが、広尾さんにも機会あればぜひ触れていただきたいと思います。
たぶんそういうことではないですよ。
彼らも十分にセイバーは勉強していると思います。話した限りでは、かなりのレベルまで精通していると思いました(私自身詳しくないのでどこまで聞けたかは疑問ですが)。
その上で統計学の見地とは違うと言っていたのだと思います。
統計学を学んでデータスタジアムに入社された方と最近話すようになったのですが、統計学と記録は思想が違うと思います。
それにしても、正面切って「詳しくない」といわれるとぐっときますね。かなり勉強してきたつもりですけど。また教えてください。