ダルビッシュが、健大高崎の「機動破壊」野球を擁護している。
Twitterでのやりとり

ファンから

「今年の甲子園で「機動破壊」という盗塁を重ねて相手を崩す!とゆう戦法で健大高崎がやってたんですが、Twitterで「点差で大差で勝っているときに盗塁してはいけない」とゆう暗黙のルールを破った!と話題です!暗黙のルールは正しいんですか?」

ダルビッシュ

自分たちの時は高校野球に暗黙のルールなんかなかったです。アマチュアなんだし、正式なルールにないものは無視してやりたいことやればいい。

アンリトンルールは、MLBの長い歴史の中で固まった「不文律」のことだ。
Wikipediaには、いろいろ書かれているが、単なる「疑惑」「うわさ」レベルのものまで載っている。また「マナー」的なものも載っている。これらは区別すべきだと思う。

アンリトルルールの肝要は、
「大差がついた試合で、個人記録のためにせこいプレーをしてはならない」
と言うことではないかと思う。
そういう試合でバントをしたり、盗塁したりしてはならない。
点差がついているのに、これ以上相手に追い打ちをかけてはいけない。また興趣が無くなった試合を長引かせてはいけない。
ということだろう。

MLBでは対戦相手に敬意を払うこと、そして勝敗に固執しないこと、が美徳とされているのだ。
その背景には、アメリカでは「野球は勝ったり負けたりするものだ」という意識があることが大きいと思う。
草創期からリーグ戦が多かったし、トーナメント戦も一つではなく、いくつも存在した。
一つ負けたからと言って、すべてが終わるわけではなく、次の試合がある。チャンスはいくつもある。
だから、大差がついた試合はさっさとあきらめるべきだ、と。

アメリカの野球は「ビッグイニング」を狙うことが多いが、それは点差が開けば相手が戦意を喪失するからだ。せこく1点を狙いに行くと、ずっと真剣勝負を続けなければならない。延長戦は制限なしだから、消耗戦になってしまう。それを避けようとしているのだ。
そうした空気を読まず、せこいプレーをすると制裁を受ける。ぶつけられる。

MLBでは5点差程度が付いた試合で、負けているチームが一塁に走者が出ても、バントや走者を進める打撃をしないケースをよく見る。その程度の点差なら、ランナーを複数塁上におけば、逆転は可能だと思うが、監督が動かないことも多い。
凡退を繰り返して客席で、ウェーブが始まったりする。

アメリカの野球が大雑把だと思うのは、こういうときだ。

日本では「野球は一戦必勝するものだ」と言う意識がある。
明治初年、アメリカから伝わった野球は、エリートたちによって広められたが、彼らは負けることを極度に嫌った。
初期の日本人は、横浜の居留地の外国人との試合に血道を上げたが、負けると異様に悔しがって勝つまで再戦を求めた。
リーグ戦が始まっても、試合数が少なかったこともあり必勝の構えが求められた。
大正時代に入り「中等学校野球(のちの高校野球)」がはじまると、「一戦必勝」の意識はさらに強まった。
「この試合に負ければ、すべてが終わってしまう」という強いプレッシャーの下、各チームは必死の試合を展開する。

私はこの「一戦必勝主義」が、選手に過酷な負担をかけ、軍国主義めいたおかしな指導体制に結びついたとは思う。

しかし「絶対にあきらめない」姿勢が、多くのドラマを生んできたのは事実だ。
大差が開いていても、何とか突破口を見出そうとする。
統計的には「バントや盗塁は有効ではない」というデータがあるようだが「あきらめない」という姿勢を示すうえで、大いに有効だと思う。
今回の健大高崎への批判は、反対に「大差がついて勝っているのに走った」ことへの批判のようだが、試合を「あきらめない」「手を抜かない」姿勢において、同じだと思う。

事実、今夏の大会でも石川県大会の決勝、星稜対小松をはじめ、大差がついたところからの「大逆転劇」がいくつも見られた。

日本では、気を抜けばひっくり返されることもあるのだ。
率直に言えば、試合そのものはアメリカよりも日本の方が面白いと感じられることがしばしばある。

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甲子園で実際に見た健大高崎は本当に面白いチームだと思った。何しろ1番打者の平山以下、全選手が塁に出れば、すべての投球でスタートを切るのだ。相手のバッテリーは気が気ではない。
ベスト8で大阪桐蔭に敗退したが、日本で一番強い大阪桐蔭のナインは、中盤まで完全に浮き足立っていた。重盗が失敗するまでは、健大高崎が勝つのではないかとさえ思えた。
このチームが点差にかかわらず、常に次の塁を奪おうとする姿勢を持っていたからこそ、ここまでの健闘ができたのだろう。

ダルビッシュ有は、高校野球、NPB、MLBの野球を経験して、彼我の野球の違いを実感したのだろう。
「登板間隔」の話や、「スローカーブ」の話なども、彼の実感がこもっている(最近暇なのかな、とは思うけど)。
もちろん、舞台がアメリカになれば、健大高崎のような野球は摩擦を生むだろうが、それはまた別の話だ。

健大高崎の「大差がついた試合での盗塁」は、少なくとも日本の、高校野球のステージでは真っ当なものだ。
「アンリトンルールに違反している、いけないんだー!」という批判は、底が浅いと思う。


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