昨日の「野球と言論」の関連。例の高校軟式野球について。ちょっと時間を置いて整理したかった。
8月末に起こった「高校軟式野球準決勝」に関する批評の中で、「残酷ショー」と言う言葉を使った人が二人いた。

一人は松谷創一郎氏。Yahoo!ニュース。

「残酷ショー」としての高校野球
8/31の16時のことだ。この記事はかなり批判されている。

続いて尾木直樹氏が同日21時に

軟式高校野球の準決勝。四日間に渡る延長50回は残念・残酷
と書き、その中に

残酷ショーさせた高野連に緊急見解を求めます

と書いている。

これに対し、9/2、たむらけんじがtwitterで

尾木さんが50回全力で戦った軟式野球の試合の事を残酷ショーってゆうてるのはどうなん? ショーやないやろ?一生懸命戦った高校生達の気持ちは考えてんのか?ショーって言われて喜ぶと思ってんのか? もちろん子供達の身体の事は考えなあかんけど、本人達がゆうのはわかるけど、外野は黙っとけよ!

と反論した。

尾木氏は後に「表現が強すぎた」と反省のコメント。
たむけんも

僕が反省する所は黙っとけよ!とゆう言葉。 これはいくら腹が立ってたといえど目上の人に対してゆう言葉ではなかったと思います

と大人の対応で、丸く収めてはいる。
目上の人の言うことには、たとえ間違っていても従うと言うのは、芸人ならではの習性だ。

重要なメッセージが込められていたにもかかわらず、リテラシーの低い有名人の反論によって、問題提起が中折れになった。誠に残念だ。

たむけん、そして世間の多くの人は、「残酷ショー」と言う言葉に敏感に反応した。この言葉が仲間のために一生懸命にがんばった投手の気持ちを傷つけている、と感じて反論をしたのだ。

しかしながら「残酷ショー」と言う言葉に、その投手を傷つける意図が一切含まれていなかったことは明白だ。
松谷氏にしても、尾木氏にしても言論人として責任ある立場での発言をしている。その内容はまっとうなものだ。

一人の高校生が、常識をはるかに超える投球数を投げさせられたのを、大人が手をこまねいて何ら救済しなかったことを非難している。選手の健康を管理する責任のある人たちが、何もしなかった、このことは看過して良いのか。
たとえその投手が志願して投げたにしても、彼の健康のことを考えるなら、誰かが止めるべきであった。善処すべきであったと。ましてや文部省管轄の「教育」だったのだから。

しかしそうした真っ当な批判とは別に「残酷ショー」という言葉が独り歩きし、非難を浴びるようになった。
日本人は、こういう話に弱い。
「理」よりも「情」に流されるのだ。

またか、と言われそうだが、この議論、やっぱり「特攻」の話に似ている。他に比較すべきものが思い当たらないので、この例えを使うが、

「特攻は犬死、無駄死にだ」という言葉に、多くの日本人は敏感に反応し、反発する。死んでいった若者の気持ちを踏みにじるものだ!と言う。
そういう人も、特攻が愚かな作戦であることには概ね同意する。二度とあってはならないと思っている人が大部分だ。
しかし、特攻で死んだ若者を「犬死」「無駄死に」だとする言葉に感情的に反発し、拘泥するあまり、そこから先の議論は深まらない。

「残酷ショー」も「犬死」「無駄死に」も、その当事者を貶める意図は全くない。そうさせた周囲、とりわけ指導者の責任を問うているのだ。
つまり、
「残酷ショーをさせた」、「犬死させた」、ことを問題にしているのだ。

高校野球ファンはこのスポーツを非常に愛好している。選手を心から愛している。彼らの努力や頑張りは全て肯定したい。その思いの強さが、外部からの批判や批評を受け付けないことにつながっている。

確かに高校野球を愛しているなら、高校球児のプレーを「残酷ショー」と切り捨てることなどありえないかもしれない。
しかし、この言葉を使った二人の論者は、敢えて強い言葉でこの事態の「異常さ」をアピールしようとしたのだ。そこから議論が起こるべきだと主張しているのだ。

リテラシーの低い人が、その議論を妨げていると言ったが、実際には「本質的な問題」がどこにあるかを知っていながら「選手の気持ちを踏みにじる」的な感情論を隠れ蓑にしている向きもいる。
朝日新聞などの大手メディアがそれだ。
新聞社が正直者でも真っ当でもないことは、昨日の朝日新聞社長の記者会見でも露呈したが、自らの利権を守るために「本質的な問題に触れてもらいたくない」「改革の機運が起こってほしくない」サイドが確かに存在するのだ。

「残酷ショー」と言う言葉に感情的に反応する人々は、そういう利権に固執するサイドの存続、延命に力を貸している。頼まれもしないのに、彼らの「商売」に協力している。

しかし、高校野球をめぐる問題をちゃんと考える時機は到来していると思う。

どこもはじめそうにないので、弱小アマチュアメディアながら、当サイトではそれを始めたいと思う。

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!




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