この間の軟式野球の5日間で1000球を投げた件、一番のポイントは、「大丈夫か?」「大丈夫ではないのか?」ということだ。
5日間で1000球と言うのは凄い数字のようだが、実は断トツではないかもしれない。
軟式、中京の松井大河の投球数と今季の甲子園の投球数10傑を比較する。

確かに松井の投球数は大きいが、今夏準優勝の三重、今井重太朗も814球投げている。
甲子園最多は斎藤祐樹の962球。今井の球数は、過去の投手に比べて「少し多い」程度。
硬式と軟式の違い。そして予選からの疲労度なども加味すると、松井大河の投球数は「多い」とは言えるが、破天荒とまでは言えないような気もする。
甲子園に勝ち抜く高校では、一人のエースが予選、甲子園を通して1000球を投げ抜くケースはざらにあるのだ。
もちろん、5連投と言うのは過酷ではあるが、高校野球の指導者は「それくらいは投げることができる」と考えているのかもしれない。
愛媛済美の故上甲監督のように「高校野球に球数制限はふさわしくない」と、美学で語る指導者もいるようだが、そうではなくて、「甲子園に出るクラスの高校のエースなら、これくらい投げても平気だ」と確信する指導者もいると思う。
そうしたデータを客観的に出す人は出てこないのか?
海外メディアや、週刊誌、私みたいな外野が「投手の酷使」を批判するのは、主としてMLBの基準に照らせば、高校野球の投手の球数は「狂気の沙汰」にしか見えないからだ。
PAP(Pitcher Abuse Point)で甲子園のベスト4投手の酷使度を見るとこうなる。

PAPは(投球数―100)の3乗、MLBではシーズン10万ポイントを超すと黄信号、20万ポイントを超すと赤信号と言われる。
MLBで20万ポイントを超す選手は2005年のリヴァン・ヘルナンデスを最後に出ていない(このとき、ヘルナンデスは4000球を投げ50万ポイントに達したが)。
夏の甲子園では、今井、飯塚、福島が20万ポイントを越している。
軟式だが松井は400万ポイントを越している。江夏豊が401奪三振を奪ったシーズンのPAPが430万ポイントだった。
アメリカの野球関係者が驚き慌てるのも無理はないと思えてくる。
PAPには球種や登板間隔などの要素は一切入っていない。その信憑性は高くはないかもしれないが、それにしても甲子園の球数は多いと言わざるを得ない。
しかし、実際のところ、毎年こういう投手が甲子園に現れ、その後も大学やプロで活躍しているのだ。
指導者は「高校球児は半月で1000球くらい投げても潰れない。そんなヤワなものではない」
と思っているのではないか。
昨年春、愛媛済美の安楽智大が選抜で772球を投げて、ESPNが来るなど大騒ぎになったが、投手の健康を懸念する海外メディアに対し、江本孟紀は
「鍛え方が違う、上から目線でものを言うな」
と反論。
そして
「こうして投げられているのが何よりの証拠だ」と胸を張った。
しかし安楽はその年秋に故障して長く投げることができなかった。また今夏の予選でも最高速は10km/h近く落ちて敗退した。
球数の問題は個人差が大きいが、高校野球指導者には確たる自信があるのではないか。
そうであれば、今、はっきりとその根拠を出すべきだ。
軟式野球の松井大河のケースも「軟式はこれくらいなら大丈夫」という根拠があってしかるべき。
指導者たる者「潰れるかもしれない」「でも潰れてもこの子には悔いはないだろう」という気持ちで投手をマウンドに送ったとは思えないのだが。
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コメント
コメント一覧
日本は登板過多や球数過多で投手が故障する、アメリカは故障しやすいフォームでも矯正しないアバウトな指導で投手が故障する、そこを包括的に考えないと解決策は出てこないでしょう。
>アメリカは故障しやすいフォームでも矯正しないアバウトな指導で投手が故障する
これ不思議に思っています。アメリカは投手だけでなく、野手でもトミージョン手術を受ける人がいますよね。知り合いの野球指導者によれば、スピードの上がった投球腕を腕力で減速するのが要因ではとのこと。
でも、見てみると、古くは柴田・王もそうですし、横浜の愛甲、報徳の金村、池田の畠山など、優勝投手がプロ入り後打者に転向することは珍しくなく、そういうものかと自分なりに思っていました(愛甲は決勝戦では投げていないので、厳密には優勝投手ではありませんけど)。
また、打者転向はしていないものの、高校時代に大活躍しながらプロではパっとしなかった選手というと、酒井圭一とか荒木大輔とかが思い浮かびます。アマとプロは違うので、いろいろな要因があるでしょうが、投手の場合は投げ過ぎという要因が大きいのではと愚考しています。ここに斎藤佑樹も加わるでしょうね。
江本氏がプロ入り後、一度も故障することなく投げ続けられたのは、高校時代はチームメートの不祥事で出場停止処分、大学では監督に嫌われて試合で投げさせてもらえなかったと、「温存」されたことが、結果的に良かったのではないでしょうか。
ただ、その後、桑田や松坂、田中マー君など、甲子園で相当に投げ込んでいながら、プロ入り後大活躍する投手が続出したために、投げ過ぎはよくない派の声が静まった感があります。桑田や松坂が特別なのか? トレーニング方法やケアの手法が進化したため、心配しなくてもよくなったのか?
プロの投手について、プロ入り後の成績と高校時代の投球数・登板数と見比べてみると、何か見えてくるかも知れませんね。
日米の多数の野球関係者にインタビューしており、様々な意見を読むことができます。故障の原因などについてそれぞれの見解はバラバラで、いまだこの問題には明確な答えは出ていません。
しかしながら、
1)アマチュア〜若手時代の未完成な投げ方での過投球
2)ここ数年における急激な球速アップ
3)手術の普及・成功率向上
という3つの理由が手術増加の背景にあることは、複数の関係者が認めています。
思っていたよりも、ダルビッシュが提唱した投球間隔の問題について同調する識者は少なかったですね。
この見解は初耳でした。ありがとうございます。
これはバランス悪いフォームで、なおかつ日本人よりも相対的にフィジカル強いアメリカ人には故障しやすい理由になりえますね。
向こうは「肩は消耗品でぶっ壊れる時が来るのを如何に先のばすか」という考え方なんじゃないでしょうか(以前そのようなコメントをされている方を見た気もします)。
フォームや本人の身体など個人差があるのは確実だと思いますが、最大公約数的な答えが出る時は来るのでしょうか・・・。
山本昌が「痛いところがあるのは当然でそれでも投げられるフォームを探る」とかなり前に言ってた記憶があるのですが、そうなるとフォームで何とかなるんじゃという期待もあります。
>2)ここ数年における急激な球速アップ
田中投手がDL入りときに、広尾さんが言うその投手の「巡航速度」オーバーの投球を続け過ぎたときに故障発生するのでは、とコメントしたことがありました。
全力投球ではなく数%でも抑え気味に投げ続ける必要があるのではないでしょうか。
ストラスバーグやチェンバレンなどは故障前、イニング制限も行っていましたが結果はトミージョン。
160Kオーバーの投球連発が故障を招いたと考えています。
チャップマンも心配です。