昨日、楽天の銀次はオリックス戦で5四球。捕手が立ち上がらなかったので敬遠ではなかったが、勝負してもらえなかった。昔のプロ野球を見るようだった。

NPBの最多四球記録は1991年10月13日のヤクルト戦、中日落合博満の6。
この年の落合は、古田敦也と激しい首位打者争いをしていた。
このあたりの経緯をデータで追いかける。

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NPBの試合日程はだらだらと続くため、デッドヒートが間延びする。形が良くない。それは今も変わらない。

打率1位の落合と2位古田の差は10月6日の時点でほぼ1分あったが、古田は7、8日で3厘アップ、落合は9、10日の広島との連戦で3厘ダウン、13日の時点で3.5厘差に迫ったので、当時のヤクルト野村監督は、古田を休ませるとともに落合を6度歩かせたのだ。。
13日を終えてヤクルトは残り1試合、中日は残り3試合。
落合は翌日の大洋戦で4タコ、.334と落とし、ついに古田に抜かれたが、15日の広島とのダブルヘッダーでは合わせて6打数4安打と打ちまくり、.33957と再度古田を抜く。
古田は打率がキープできれば休むつもりだっただろうが、こうなると出場せざるを得なくなる。
そして16日の最終戦、広島の先発足立亘から2打席目に安打を放ち、.33981と落合を再逆転、初の首位打者に輝いたのだ。

この経緯には、首位打者争いの原則がすべて出ている。

① 打率1位の打者は、2位打者に抜かれる可能性が生じた場合(規定打席に達していれば)1位がキープできている限り出場しない。
② 打率1位と2位のチームが直接対決するときは、2位の打者はすべて歩かされる
③ 打率2位の打者は、1位の打者を抜けば、以後は出場しない。

その前提として「ペナントレースの大勢が決まっているときに」と入れるべきかもしれない。
NPBでもMLBでもこの原則は変わらない。①~③は、試合に出て勝負をし、数字を残すのが仕事である野球選手の本分にもとる行為だ。
ある意味で敗退行為と言っても良い。

しかしながら「首位打者」のタイトルは「打撃王」とも称されるように打者にとっては最高の栄誉だ。
落合のように何度も獲得している選手もいるが、多くの選手にとって選手生活で1度あるかないか、という絶好のチャンスだ。
この機会にタイトルを取りたいという選手の思惑を、チーム、監督が理解し、そのために①~③の策を取るのはやむを得ないかもしれない。

今年のケース。

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銀次と糸井は夏ごろから激しいデッドヒートを繰り広げてきたが、糸井はぺナントレースが過熱する中で調子を上げ、試合がない銀次を9月27日に抜く。銀次は9月30日に抜き返すが、糸井は10月2日、ソフトバンクとの最終決戦で2安打し再度逆転。
ここでペナントレースに決着がついたので、消化試合の中で首位打者争いが再燃したのだ。
銀次は3日に4タコだったために糸井との差は4.7厘に開いた。



銀次は日本ハム戦で5打数4安打以上で糸井を抜く。
そうなれば銀次は最終のオリックス戦を欠場。糸井は出場するだろうが歩かされることだろう。
銀次が糸井に及ばないまでも最終戦で逆転の可能性がある打率になっていれば、銀次は出場するだろうが、オリックスは勝負しないだろう。そして糸井は欠場する。

いずれにしても「デッドヒート」はこれ以上起こらないことが確定している。

宇佐美徹也さんが何十年も前から指摘していることだが、解決策はない。
選手、監督の良心に委ねる限り、こうした状況は続くだろう。
かといって、
「打率の差が1分以下になった1位打者と2位打者は、特別な理由がない限り試合を欠場してはいけない」
「投手は、首位打者争いの相手打者に故意四球を投げてはいけない」
とルールを決めたところで、医師の診断書など簡単に作れるし、故意四球でない四球を与えるのも容易だから、解決にはならない。さらに工作が巧妙になるだけだろう。

しかし褒められた話ではない。
2012年、巨人は選手の出場を調整して長野久義と坂本勇人に最多安打のタイトルを仲良くとらせた。
原辰徳監督は徳光和夫にこれを「美談」のように話した。徳光は涙を流さんばかりに感動していたが、勘違いも甚だしい。

多くの野球ファンは「どうしようもない」から、この手の出来レースを容認しているが、その選手、チームのファン以外、だれも喜んでいない。
みっともないことだと苦々しく思っていることを、球界の人々は知るべきだ。

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